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空 2023

 あまりに暑さに、以前もお書きしたものを再録することにしました。同時に夏にまつわる出来事を、備忘のためお書きします。
 まだまだ暑さは続きそうなので、ご自愛ください。
 

何ひとつない空
それは、なぎ
雲さえ見当たらず
鳥さえどこかに消えうせた
まして人間は…
直喩でも隠喩でもなく
絶対の空位
絶対の零度
視ることも、触れることも
できない
言葉を失い、視覚を奪われ
突然の死
幼年期の真夏が
訪れた
 
空は、なぜ
わたしに
その夏を思い出させるのだろうか
 
 その夏は、子供には耐えきれないほどの猛暑で、それこそ動く気力もなく、昼寝もできないくらい辛かった。
 母は少し温めのスイカを子供らに与えてくれた。
 冷蔵庫や空調などない時代であり、日本海のフェーン現象が容赦なく襲った。
 裏日本の人々が、夕陽に惹きつけられるのは、わかるような気がする。
今でも、その時の写真が残っている。
 父が撮ったものである。
 
真夏の太陽
その場にいたわけではない。
敗戦の8月15日に見上げた真夏の太陽。
 
三島由紀夫の「太陽と鉄」。
ギリシャの真夏の太陽。
 
戦争で亡くなった芸大生の遺作展。
真空の真夏の太陽。
永遠の時間が止まったまま。
 
川底から見た真夏の太陽。
川底から浮き上がり、水面にでた瞬間に見た真夏の太陽。
 
火渡り行者のように熱せられた河原の石ころの上を、ぴょんぴょん起用に飛び跳ねながら渡っていく子どもたち。
―井上陽水「少年時代」・吉田拓郎「夏休み」
 
夏用のサンダルに小さな石ころが入り取り出そうとして、近くにあったコンクリート製の電柱に片手で寄りかかろうとしたら、「あち」電柱が燃えていた。
 
土場にある秋田杉の大きな丸太の間に、干からびたカエルの死骸。
真夏の太陽と遊びまわる子どもたち。
―松尾芭蕉「夏草や兵どもが夢の跡」
 
道路を渡り切らない前に、干乾しになったミミズ。
―中島みゆき「「時代」
 
トウモロコシ畑で見上げた真夏の太陽。
真っ青な空に一筋の白いひこうき雲。
―松任谷由実「ひこうき雲」
 
車のボンネットで目玉焼ができそうな
アリゾナの真夏の太陽。
―フランク・ロイド・ライトの弟子が設計したホテルのプールサイドでジンライム
 
すでに飛び立った抜け殻。脱皮し飛びたとうとしているあぶら蝉。
早朝五時ごろ、祖父と一緒の夏の朝。
―ブレークスル

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