橋本幹夫

橋本幹夫建築設計事務所 主宰 橋本幹夫

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橋本幹夫建築設計事務所 主宰 橋本幹夫

最近の記事

洞窟と樹上

 「人間は木の上か、洞窟で暮らしていた。いろんな建築家と話し合っても、みんなそこに行き当たります。」(現代的なプリミティヴさの実験 伊東豊雄)を読みながら、ふと以前書いたことを思いだし、それらに関連することを調べていたら、藤森照信の「自然を生かした建築のつくり方」(2018 東西アスファルト事業協同組合講演会)と「穴」(Window Research Institute 窓研究所)に出会ったので併記して再録することにした。 乾久美子との邂逅  20年くらい前だっただろうか

    • 演劇と建築

       二十歳頃だと思うが建築ついて演劇や文学などを参考に思考を繰り返していたことがあります。なぜ演劇などであったのか根拠があってのことではなく、ほとんど直感的に近いものでありました。思考を繰り返し、たどり着いたのは、簡単にいってしまえば、「空間は人間がその場に関与(関係)することで生成し、人間がその場から立ち去ると同時に消滅する」ということであり、読者や観客がいなければ文学も演劇も建築も成立せず、先験的に空間が存在しているのではないということでした。  なんか、当たり前で大騒ぎす

      • 建築ノート5

        伊東豊雄 「最後の講義」 それまで僕は、大学では「建築は論理的にものを考えること」と思っていた 菊竹清訓について 身体的にものを考えること 頭ではなく身体で考える。頭で考えたものは三日で変わってしまう。 子ども塾にこの前来た子に「身体で考えることだよ」といったら 後で「身体的にものを考えるということは。どういうことですか?」と聞かれたんです 僕もわからない、どうゆうふうに説明したらわかってくれるかなと思っていたら 女の子のほうから「感じることですよね」 その通りだなと

        • 建築ノート4

          伊東 コンペティションの審査員には藤森さんもいました。先日事務所のスタッフに「もし『せんだいメディアテーク』と同じ審査員、同じ条件で今もう1度コンペティションをやったら、うちの事務所が勝てると思うか」と聞いたところ、みんなモジモジしていたので「私は絶対負けると思う」と言いました。今の私たちはこんなに大胆なことはできない。1階にある300人収容できるギャラリーホールには真ん中に柱が2本立っているのですが、今だったら絶対に怒られるでしょうし、むしろ自粛してしまってこんなことはでき

        洞窟と樹上

          建築ノート3

          現代建築を語る 伊東豊雄・藤森照信 東西アスファルト事業協同組合講演録「私の建築手法」より ※太字は引用者 藤森 伊東さんのおじいさんは下諏訪町の町長をしておられて、地域のためにたいへん尽くされた名高い人でした。諏訪地域では御神渡りと言って氷結した諏訪湖の一部がせり上がり筋ができる現象が有名ですが、その筋は私がいた茅野市と、伊東さんがいた下諏訪町を結ぶようにできます。諏訪地域の伝承では、茅野側にある諏訪大社の上社から下諏訪側にある下社へ、神様が渡った跡だと言われています。以前

          建築ノート3

          建築ノート2 伊東豊雄

           久しぶりに「裏返しの<中野本町の家>」を読み返し思い出したことがある。  大学に通うため、田舎から東京に上京ししばらくしてからの頃のことで、当時のノートに「東京の二重性」という短い文が残されてある。要約すれば「地方から見た東京」と「東京から見た東京」という二重の東京が「東京」という都市であるというものであった。そのきっかけは、東京に住みはじめ、近隣と接するようになり地方にいたときには一度として思いもしなった、もうひとつの東京があることを知るようになったのである。当時の言葉で

          建築ノート2 伊東豊雄

          伊東豊雄 「最後の講義」

           結構、親しくおつきあいさせていただいている建築関係の方といつものお寿司屋さんで歓談しているとき、どういう経緯だったのか、伊東豊雄さんの「せんだいメディアテーク」のお話になった。お話をするのにも簡単なラフスケッチを描くにも用紙もなく、話せば際限がなさそうな気がして、後日建築家という人たちは、どんなことを考えているか、ノートから引きずり出してお送りした。  それから一か月もたたない頃、伊東豊雄「最後の講義」がNHKeテレで放送されるのを知り、先日の方に、興味があればご覧になって

          伊東豊雄 「最後の講義」

          代理戦争

           以前聞いた話だが、世界では大国同士による戦争は勃発せず、世界各地域での代理戦争や紛争は止むことはないだろう、ということであった。その時は、あまり考えもせず、鵜吞みにしたままであったが世界各地で代理戦争や紛争がいまだ止むことがなく、なぜか激化し、非人道的なことが日常的に横行している。  なぜ大国による代理戦争や紛争が拡大し止むことがないのだろうか。素人目には、国際連合の常任理事国が5か国で占められているからであり、彼らの思惑や自国への利益誘導などによる代理戦争や紛争が、その調

          明治神宮外苑開発

           資本主義の「囲い込み」の問題です。  水平の開発(団地開発・ショッピングモールなど)と垂直の開発(マンション開発・テナントビルなど)がありますが、「明治神宮外苑開発」は垂直の開発という「囲い込み」の問題です。  日常的に違和も感じなくなった感覚をちょっと視点をずらすと、超高層建築は、「外部がない建築―地上100mなどに果たして外部という代物はありますか」・「地面がない建築―土地の区分所有という幽霊みたいな概念」・「床の捏造の産物」であり、災害に遭遇すると元の姿に帰り、その正

          明治神宮外苑開発

          最近気になったこと

           グローバルサウス。外国に進出する企業に1400億円の供出。子どもたちの教育の無償化。高齢者は、介護保険料の増額。朝のニュースである。  あまりにもわかりやすい政策で、思惑が透けて見える。老後だから、これから安泰に生活を送りたいと思っている人たちに、社会的な問題になっている「いじめ」をしているようで、人格を疑ってしまう。ビジネス的には、価値のない人は無用であり廃棄処分ということになる。  今も変わらず、踏襲的に右習いで税金の配分は、検討もされずに既得のまま決定され、「家計のや

          最近気になったこと

          ニューヨークの水害

           近年のニューヨークの水害について、異常気象によるものと地下水の汲み上げによる地盤沈下が原因ではといわれていたが、ある大学の先生が調査した結果、ニューヨークの超高層建築群の荷重による地盤沈下であると判明したという。場所にもよるが、年間2㎜~5㎜くらい沈下しており、それに異常気象が追い打ちをかけているようである。  果たして東京や大阪など大都市圏は大丈夫なのだろうか。大地震の心配もあるが、以前電力不足に関することでお書きしたことがあると思うが、何の手立てもなく放置されている

          ニューヨークの水害

          後払い決済サーブストラブル

           朝のニュースで、後払い決済サービストラブルが取り上げられていた。身近な出来事ではないので聞き流していたが、年配者の理解不足によるものか、以前から大袈裟だが世界中、ある方向に舵を切っているような気がして、違和感がつきまとっている。個人的なものなのか、社会の変化なのかいまだに、判別できず保留したままである。  金融のポイントカードや市場に出回っているポイントカードなどについて、消費者のためのシステムではなく、企業が未来の不確実な商品の購買の先取り(共産主義・資本主義の計画経

          後払い決済サーブストラブル

          AIによるスポーツ中継

           アジア大会・ラクビー・バレーボールと連日のようにスポーツ中継が続き、ようやく落ち着きを取り戻している。結構スポーツ観戦するのは若い時からで、妻にはそれぞれのスポーツのルールをよく知っているね、と感心されたこともある。  あまり直接的にスポーツに関わりあることではないかもしれないが、以前から気になっていたのは、なぜかスポーツの実況中継を観戦していると、スポーツを観戦するというより、日頃の番組の延長よろしく大騒ぎと馬鹿笑いが入り混じり騒がしく、違和感をおぼえて委縮しているように

          AIによるスポーツ中継

          ラスコーの壁画

           ラスコーの壁画が「コズミック フロント 記号(BS NHK)」で放送されていた。ラスコーの壁画については、学校で学んだ程度には知っているが、番組ではバイソンなどの動物の壁画のほかに、謎の記号が描かれてあるという。カナダの女性研究者が発見し、他の洞窟でも同じように発見されたという。その謎の記号の数は32種類で、どうも洞窟周辺の風景や地図らしきものも描かれてあるらしい。  ラスコーの壁画は、現在わたくしたちが見ても感心するほどの描写であり、どのような人々が描いたのか想像を掻

          ラスコーの壁画

          空 2023

           あまりに暑さに、以前もお書きしたものを再録することにしました。同時に夏にまつわる出来事を、備忘のためお書きします。  まだまだ暑さは続きそうなので、ご自愛ください。 空 何ひとつない空 それは、なぎ 雲さえ見当たらず 鳥さえどこかに消えうせた まして人間は… 直喩でも隠喩でもなく 絶対の空位 絶対の零度 視ることも、触れることも できない 言葉を失い、視覚を奪われ 突然の死 幼年期の真夏が 訪れた 空は、なぜ わたしに その夏を思い出させるのだろうか  その夏は

          草いきれとねぶた

           とにかく暑い、「真空の真夏の太陽」である。  昔も日本海側ではフェーン現象があり4~5歳の頃、あまりの暑さに、それこそ死にそうで身動きできないくらいであったのを今でも憶えており、。冷暖房機器なんかなかった時代のことである。  大人になり、子どもの時の記憶なのか、青森の「ねぶた」の時期になると、『「ねぶた」「ねぷた」の語源には諸説あるが、「眠(ねぶ)たし」「合歓木(ねむのき、ねぶたのき、ねぶた)」「七夕(たなばた)」「荷札(にふだ)」などに由来する説がある。』と書かれてあるが

          草いきれとねぶた