なぜ質問会議は適応的課題の解決に向いているのか

来年2月1日に早稲田大学を会場として,初心者のための質問会議体験講座(兼学生コーチ認定試験)があります.質問会議ほど体験しないと真価がわからない(その価値を言葉で伝えるのが難しい)ものも珍しいと言えるくらいですが,きょうはそれをハイフェッツのリーダーシップ論との関係で説明してみます. ハイフェッツの「適応的課題と技術的課題」とリーダーシップ最小3要素の関係については既に昨日書きました..そのとき質問会議は(コーチングや免疫マップとともに)もっぱら適応的課題の解決に向いているとも書きましたが,なぜ質問会議がなぜそうなのかです. マーコード教授の著書『実践アクションラーニング入門』には,質問会議に向く問題が満たすべき8つの条件が書かれています(第3章).このリストは,質問会議が初めての人にこういう問題を持ってきてくださいと依頼するときには長すぎるので,われわれは「関係者が複数居て,あなたにとって重要で緊急な問題を持ってきてください」と言います.典型的には,関係者が複数居て,自分で解決したくてしばらくの間いろいろ試みたけれど解決できず,もうそろそろ何とかしないとまずくなってきた問題です.これはハイフェッツの言う適応的課題そのものではないでしょうか.自分に何か知識や技術が足りなかっただけであれば,専門家に相談するなどしてもう解決できているはずで,そうならないのは自分の見方や考えがどこか間違っていて,そこを転換する,つまり適応・学習して初めて解決に向かうからです. 質問会議に初めて来る人は,自分のかかえている問題が適応的課題であるという自覚がないことが多いようです.どちらかというと誰かから新しい知識や技術をもらえば解決できるかもしれないと淡い期待をなさっているか,あるいは学生に相談したって解決できないのじゃないかと半信半疑でいらっしゃることが多く,つまり自分の問題が技術的問題寄りである(より正確には技術的問題の要素が高い)と暗黙に前提していることが多いのです.そのようなスタンスの人には,学習とか適応とか言っても自分のこととは普通予想しませんから,「関係者が複数居て,自分で解決したくてしばらくの間いろいろ試みたけれど解決できず,もうそろそろ何とかしないとまずくなってきた問題」のような,いわば症状から見て適切な問題の選択をお願いするしかないわけです. 質問会議で何が得られるかを事前に説明するときに,第一に問題解決,第二に学習,とよく言われるのですが,実は学習のほうがより大きなウリです.というのは,学習(適応)がなければ問題解決には向かいませんし,問題解決に向かったなと思うときには必ず学習が起きています.また,しっかりしたコーチがついていれば,もし問題解決に至らないときでも,質問の力や関係性についての学習は起きることが多いのです.つまり問題解決は保証できないけれども学習はほぼ保証できるということです.

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