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【ユーザーテストレポート】『脱初心者感』を得るためには…

現在、株式会社マンハッタンコードでは自社製の学習教材を開発しています。この学習教材の開発に付随してユーザーテストを実施したので、その結果をまとめます。

前回の内容

実施概要

実施日時 : 12月5日(土)15:00-22:00
場所   : 株式会社マンハッタンコード オフィス

ユーザーテスト内容

弊社ではGoogle Design Sprintを導入し、開発を進めています。
今回のテストでもDesign Sprintの形式に則り、以下のように実施しました。

形式   : プロトタイプを用いた一対一でのインタビュー
時間   : 1人あたり1時間
人数   : 5名
準備期間 : 12月1日(火)〜12月4日(金)の4日間

「長期目標」とそれに対しての課題「スプリントクエスチョン(以下SQ)」は以下のように設定しました。

長期目標 : コンテンツを作っている会社だと認知される
SQ      : 販売プラットフォームで、ユーザーが購入する前に”脱初心者感”が得られるか?

この長期目標とSQについての補足ですが、マンハッタンコードはこれまでSESの企業としての業績を積んでおり、セミナー・Webinar・交流勉強会などの学習機会の提供も行ってきましたが、『教材』といったコンテンツは新たな挑戦となります。そのため「コンテンツを作っている会社だと認知される事」が長期目標として設定されました。
SQについては、現在開発しているコンテンツの共通したコンセプトが”脱初心者”であること、そしてそのコンテンツと並行して開発している販売PFにおいて「コンテンツで提供したい価値をユーザーに認知される事」がSuccess Factorであると捉え、設定したものとなります。

テスト結果と分析

ユーザーテストを実施してみての結果:
今回検証したアイデアでは、「脱初心者感」を得ることはできない

今回のユーザーテストでは、惜しくも私たちの提案がユーザーに受け入れられないことが分かりました。
ユーザーからの意見はおよそ60%が否定的な意見肯定的な意見は40%に分かれました。

Design Sprintではその結果が「可」「否」のどちらであっても、前に進むことが出来ます。「否」の場合は、何故この結果となったのかを振り返り原因を特定する必要があります。
全ユーザーへのインタビューが終わった後、Sprintチームで振り返り、今回受け入れられなかった原因を2点に絞りました。

今回ソリューションとして考案したアイデアでは、ユーザーが脱初心者感を得るための「明確なビジョン」を提示できない
何がソリューションとして有効かよりも、アイデアをどのようにユーザーに体験させるかに注力したプロトタイプを作ってしまった


ユーザーに提案したソリューション

私たちの作っているコンテンツは「脱初心者」というコンセプトを挙げています。このコンセプトをコンテンツ購入前に得る為には、どのようなことが必要なのか。Sprintチームは以下のように考察しました。

1. 「初心者の状態」と「中級者の状態」が存在する
2. 中級者がどのような状態であるかを知らないと、そのレベルに達したかどうかを判断できない=脱初心者をした実感には繋がらない
3. 購入前にコンセプトへの共感を得る為には、ユーザーに得られる未来(結果)を想起して貰う必要がある
4. 初心者の状態と中級者の状態とのギャップを知り、その過程と得られる結果を提示することで「脱初心者ができる」感覚を得て貰うことができる

例えば、スキーやボルダリングなどのスポーツでは「初心者コース」と「中級者コース」があることはご存知の通りです。
それぞれのコースの違い、どうすればそのコースに臨めるようになるのか、そもそも、そのコースがどのレベル向けなのかということを知らなければレベルアップを感じることができないだろう…という考えです。

この考察をもとに、ソリューションのアイデアを考案しました。

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・初心者、中級者がどのようなものなのかを定義し、レベル基準を設定する
・現時点での「ユーザー自身のレベル感」を把握してもらう
・次のレベルに上がるためにどうすれば良いのかをユーザーに提示する

簡潔に言ってしまえば「ロードマップの提示」によってユーザーは購入前に「脱初心者ができるだろう」という感覚を得られると仮定したものです。

実際にこのアイデア自体は概ね好反応でした。私たちのSprintが「受け入れられない」という結果となったのは、このアイデアの注力すべき箇所の誤りと、プロトタイプの設計ミスにあります。

注力すべき箇所の誤り

考察の3番で、私たちはユーザーに得られる未来を想起して貰う必要があると挙げました。

3. 購入前にコンセプトへの共感を得る為には、ユーザーに得られる未来(結果)を想起して貰う必要がある

この『得られる未来』を私たちは「コンテンツによって」だと考えていました。しかし、ユーザーにとっては「中級者になることによって」得られる未来(=ビジョン)を示すことがより重要なことでした。
このビジョンが明確でなければ、いくら「この○○を使えば脱初心者できる!」とそこまでの過程を示しても「ゴールの姿」自体をイメージできない。イメージができないので当然、「脱初心者感」を得ることはできなかったのです。

プロトタイプの誤り

プロトタイプの作成にあたり、Sprintチームはプロトタイプのユーザーストーリーを作成しました。

プロトタイプのユーザーストーリー
① ユーザーが、「初心者」と「中級者」の基準を知ることができる
② ユーザーが、自分のレベル感を計測することができる
③ ユーザーが、自分のレベルを引き上げる(脱初心者)ための方法を知ることができる

前述の通り、本来最も注力すべき点は中級者になることで得られる未来(結果)を想起して貰う点です。
しかし、この着眼点を見落としてしまっていたことに加え、プロトタイプではソリューションの検証よりもプロセスの検証に偏り、ユーザーに未来のイメージを持って貰う部分ではなく「レベル基準の提示」や「ユーザーレベルの計測」部分に注力し、「どのようにすれば脱初心者ができるのか」という道筋やビジョンの提示ができていなかったのです。
何がソリューションとして有効かではなく、アイデアをユーザーに体験させるかに注力したプロトタイプを作ってしまったことが、受け入れられなかった要因でした。

まとめ

・今回のテストでは望む結果を得られなかった
・ユーザーには「明確なビジョン」を提示する必要がある
・プロトタイプが「ソリューションの検証」「プロセスの検証」のどちらになっているかに注意を払う
・ユーザーには受け入れられなかったが、前に進むことができた

総括

今回のテストでは自分たちの期待した結果は得られなかったものの、コンテンツの制作と販売PFの開発を進めるための情報としてビジョン提示の重要性や、自分たちのチームが今後注意しなければならないこととしてソリューション検証とプロセス検証を混同しないこと、いかにしてソリューションの検証するかなどを学びました。
次回はこの学びを活かして、再び同じSQに臨む想定です。

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