透明な日々

 カーテンに光が揺れる
 机の上には自販機で買った炭酸飲料
 炭酸の音は雑談の中に消えていった
 喉に衝撃が駆け抜けてゆく
 私だけが鉛筆を持てないままだった
 あまりにも澄んだ日々
 見通しのない将来が不安で

 窓の向こうには必ず運動部がいた
 私に縁はないとカーテンを閉めた
 陽に照らされた声が風に消えて
 ボールが空に飛んでゆく
 あまりにも澄んだ彼ら
 不透明な絵の具で塗り潰した

 ペットボトルの中を自由に
 空気の粒は宇宙に登ってゆく
 星になるのかもしれないし
 ならないかもしれない
 後ろも前も透明な炭酸飲料の中に
 溺れるように泳ぐ私
 何かを模索して
 分からなくなって
 苦しくなって
 馬鹿にされたとしても
 
 透明で綺麗な作品をつくろう
 些細な思い付きは厄介だと知った
 ローファーから伸びる影が悪魔みたいで
 何かに押しつぶされそうだった
 もう限界だったのかもしれない
 あまりにも透けて見え過ぎて
 結局は、善意も悪意も影は一緒だった

 もう聞こえない運動部の声
 いつの間にか消えてしまった鉛筆
 駆け抜けた痛みは、まだ残っている
 私は確かにそこにいた
 夢じゃない
 幻のような日々だった

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