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生きて捌かれる心よ / 矯正手術記

・矯正に関わる、ちょっと特殊な手術を受けてきた。
説明するなら、まず歯茎の肉を切って剥ぎ、その下の骨に金属プレートをネジ止め(左右合計6本)で固定して、肉を被せて埋入する。そんな手術。正確には矯正用インプラント(SMAP)で調べて頂きたい。
つい昨日の話だ。8針も縫ったので、頬がパンパンに腫れててかわいい。
古いビスクドールみたい。


・意識があるタイプの手術、生きたまま捌かれる魚の気持ちを想ってしまう。
いやこの身体、使ってる!!私の体なんだけど!!骨からビリビリ肉が剥がれる音してるけど!?大丈夫、これ!?私!?未来!?
みたいな…。

・手術、冷静に考えて、人間を生きたまま切り継ぎするってものすごいことだ。そうまでして治してくれる医者に感謝…。

・そういえば、今でも会う中学のクラスメイトに外科医をやっている子が居たな。
手術ができるなんて!すごすぎない!?と尋ねたことがあったのだが(良くも悪くも無邪気…)、「学んだ通りにやるだけだから難しくはないよ」というニュアンスのことを答えてくれた。
手術されるなら、こんな先生にぜひ手術されたいものだ…。


・ところで、手術。貴重なこの体験。
100%味わおうと考えた。

きちんと、切られてる時は切られてる想像を、
剥がされてる時は剥がされてる想像を、
縫われてる時は縫われてる想像をしていた。

今、めちゃくちゃ気分が悪い…。

・ふと、思い出す。
昔目にした、「指をドアに挟まないように注意しましょう」と伝えるための映像。
割り箸を刺したソーセージが、ドアに挟まれた衝撃で、ぶちんと折れる。

そうだよな。
隅々まで感覚の行き渡ったこの身体を私たちは何か特別視しているけど、割り箸を刺したソーセージだよな…。


・素直に、手術体験記を書きましょうか。

・埋入手術は、それはもう恐ろしかった。
何の小説だったか、そもそも手術のシーンであったかも忘れたけれど、「生きながらして死体いじりをされているようで、こんなことは死んでしまうよりひどい」というような描写があって、正直、そんな感じだった。
数名の学徒(?)が私を見守る中、医者が歯茎の肉をザクザク切っている感覚がはっきり伝わって、顎の骨を押さえられて電動ドライバーでギューンと…まあ、そこまでは規定のルートであるのだろうから、良いのだが。
突然何やら骨にパキッと感覚があって、お医者さんが「やべっ」と漏らしたのをはっきり覚えている。
いや、何がやばいんだ!?私の肉体だが!?
麻酔が効いているので痛みは無いのだが、なにぶん意識と感覚があるので、ほとんど意識の無いうちに終わっていた整形手術よりも怖かった、と思う。人生で1番の恐怖は何であったか…と問われれば、私はSMAP埋入手術のことを挙げるだろう。
何より、手術医当人から見てヤバいらしいし…何かが…。

・逆に、除去手術のほうは、それほどの恐怖ではなかった。
恋人が私を勇気づけようと色々検索してくれたらしく、「SMAP除去手術は全然大したことないらしい!」と伝え聞いてはいた。が、正直、それはそう書いた人たちの優しさなんじゃないかと今は思う。それくらいには、まあやっぱり怖かった、けど、埋入手術よりは全然耐えられた。15分くらいで終わったし。
何よりありがたいことに、今回は医者がとても頼もしかった。相変わらず見守る学徒(?)に対して、「ほら、こうすれば出血も少なく済むでしょう」と蘊蓄を述べながら手術をしてくれて、それは私本人にも聞こえるので大変安心できたのであった。「ほら、これが骨膜、」と部位の解説をするのは気が気ではなかったが…おお、解剖されつつある私の身体よ…。
除去の際は電動ドライバーではなく手回しドライバーだったのもよかったと思う。私は電動ドライバーでネジを打ち込むとき、隅の方に打ったために、木材ごと割ってしまうというのをそれこそやったことがあるから。
顎の骨で…想像したくない。

・それにしても、顎の骨を押さえてドライバーをグイグイ回されている感覚は実に感慨深かった…私はついに人形になったのか!?と。ドールカスタムではままよくあることなのだ。
それにしても、こんな形でドールの気持ちが実感されるとは…。

・埋まってたプレートはおみやげにもらいました。血とか骨とかついててグロいので、載せませんけど…。
恋人に「レジン封入したら?」って言われた。せんわ!!

おわり。

生きてる いのちって最高♪