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E型肝炎の話

E型肝炎ウイルス

E型肝炎なんて聞いたことがない、そんな声が聞こえてきそうですね。でも、あるんです。馴染みが無いという人も多いでしょうが、どんな奴かというと、経口感染で広がるタイプの肝炎ウイルスによる感染症といったものです。

昔、C型肝炎ウイルスが発見されるまでの間、一番有名だったのがB型肝炎でした。しかし、どうもB型肝炎ウイルスと違うウイルスによる肝炎が、それも一定数存在しているという事が分かって、非A非B型ウイルス性肝炎といった名称で呼ばれていたことがありました。そしてC型肝炎ウイルスが発見されて、世間の風潮は「よかった、よかった」といった感じだったと記憶しています。当時既知だったA型、B型に次ぐものということで、C型という名前になったもと記憶しています。

その後、D型、E型など、どんどん新たな肝炎ウイルスが発見されてきています。いろいろなタイプのウイルスが発見されていくので、当時のある専門家の方が冗談交じりで「せめてHまでで止まってほしい。そうでないとH〇Vの表現がややこしくなる。Hの次はIだから」、そんな事を仰っていました。HHVの次はHIV、違う病気のウイルスになってしまうから、そんな意味だったようですね。

どんな病気か

ウイルスによる感染症です。ただし、同じ経口感染を起こすA型肝炎に比べると致死率がA型の10倍と言われている要注意のウイルスです。もっとも、A型肝炎ウイルス自体は致死率の話題が出て来ないようなタイプですが。

日本を含めて欧米諸国では、かつて非A非Bと言われた肝炎ウイルスはC型を指していましたが、発展途上国で非A非Bと言うとこのE型を指すそうです。タイプとしては経口感染ですから、A型と同じく衛生環境が大きな影響を及ぼすと考えられますが、日本ではあまり見られるタイプではありませんでした。欧米の先進国と同じく、時折散発的に見つかるという程度で、海外への渡航歴がある人が持ち込んだりする程度だったようです。このことからも、日本には存在しないと考えられていました。

ところが最近になって、海外渡航歴がない人でE型肝炎を発症した人が見つかったことがあったようです。もしかしたら日本国内でも、流行しているわけではない場所でも、土着的にこのウイルスが存在している可能性があるのではないか、そんな事が分かってきたともいわれております。さらに、動物(ブタ、イノシシ、鹿など)にもE型肝炎ウイルスと酷似したものが見つかっていたり、これらの動物から人への感染が確認できた例があったりもするらしく、最近では人獣共通の感染症というように考えられ始めているようです。

症状については他の肝炎ウイルスによるものと変わりはなく、A型肝炎と似ているとのことです。悪心や食欲不振、腹痛などの一般的な消化器症状が見られるので、急性肝炎の扱いとなります。褐色の尿を伴う強い黄疸が突然出現し、2週間ほど続くという症状が出るようですね。発症からおよそ1か月ほどで完治するとのことです。潜伏期間はざっと6週間前後、A型肝炎に比べると長めです。

A型と同じく、ウイルスは便にも排出されますので、この辺りが衛生環境の影響という事になるのでしょう。特に水系の感染が多いようです。また、慢性化はしない傾向が強いようですね。日本でランダムに選んだ900人を対象に調査したところでは、IgGの抗体を持っている人の出現率は、地域差はあるようですが平均して5パーセントほどだったとか。

E型肝炎ウイルスは、最初に致死率がA型肝炎ウイルスの10倍ほどと書きました。これはどうやら、劇症肝炎を引き起こす事があるという点が関係しているようです。特に妊婦では劇症肝炎を起こす割合が高く、致死率も20パーセント近くになる可能性があるとされていました。ただ、治癒した妊婦の場合、胎児への影響は見られないとの報告があるのだとか。

E型肝炎ウイルスの致死率はA型の10倍という記事が気になります。どういう事かというと、E型肝炎ウイルスの場合の致死率が 1~2パーセントなのだそうです。これがA型の10倍ほどになるという事でした。したがって、劇症肝炎を起こす確率はごくわずかですが、A型でも、それ以外のB型やC型でも、致死率が完全にゼロというわけではないという事ですね。

予防するには

経口感染、特に水系感染のため、衛生面での注意が必要です。特に動物の肉の扱いが重要になってきますので、これらを生で食べることは絶対に避けたいところです。実際、厚生労働省のホームページにもE型肝炎ウイルスについての資料がありました。

それによると、これらの動物の肉を食べる場合、しっかりと加熱処理をすることが必要だと書かれていました。家畜でなくても、ジビエと呼ばれるような動物も、調理をする時は注意しましょう。


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