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35、ADHの話

ADHって何?

ADHは抗利尿ホルモンと呼ばれます。ADHとは Antidiuretic Hormone(抗利尿ホルモン)という言葉を略したもので、バソプレシンとも呼ばれることがあります。抗利尿ホルモンというのは「尿量を少なくする作用を有するホルモン」という意味です。ADHの血中濃度が多い(増加する)と尿量が減少し、反対にADHの血中濃度が下がる(減少する)と尿量が増えます。

ADHは視床下部で作られて、脳下垂体の後葉から分泌されます。脳下垂体というと前葉から分泌されるホルモンが多いのですが、ADHは後葉、つまり別の場所からの分泌になります。

尿の働きは「水溶性の老廃物を体外に排出する」ことですから、「利尿とは尿を利用する」、つまり老廃物をどんどん体外に出す働きを大いに利用するということです。したがって、結果として尿量が増える作用があるということになります。その働きを「抗う」わけですからその反対、尿量が少なくなるというのが「抗利尿」ということになります。「利」という漢字を同じ音読みの「離」に置き換えてみると分かりやすいかもしれません。

例えば、現在は5月の中頃ですから、これからの季節は夏に向かってどんどん暑くなっていきます。それにつれて気温が高いのでよく汗をかくようになりますね。しかも梅雨に入ると湿度も上がりますから、汗の量が増えていきます。そのだけ体の水分が体外に出ていってしまいます。そうすると尿量が減ってきますよね。そして、同時にのどが渇くようになります。

これは体内の水分が不足している状態を示しているんです。軽い脱水状態を起こしていますので、ADHの血中濃度が増加して体内の水分を補おうとします。汗は体温を下げる働きですから、減らすわけにはいきません。そこで、尿量を減らして体外に出る水分量を調節したり、のどが渇くことで外から水分を補給しようとしたり、そんな水分保持の機能が働くわけです。反対に水分補給が多かった場合、水をがぶ飲みしてお腹がタポタポになった時などはADHの血中濃度が下がって、余分な水分を減らすために尿量が増えることになります。

水分補給をしたり尿量を減らしたりすると体内の水分が増えるのですが、その水分が溜まる場所は閉鎖された空間である血管内になります。ということは循環血液量(循環水分量)が増えることになりますから、血管に対する抵抗が強くなります。これは結果として血圧を上げる働きを持つことになります。こんな働きもあるんですね。


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