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独:Alles gute!or 英:Evening fine!しか言わない先生

ドイツの婦人科のはなし。

私の経験上日本で掛かった婦人科とは違う印象で、この点はいいなと思うことも、お、おお・・と思うこともあり、その驚きも含めて面白いなと思うので、書き留めておく。

ドイツの妊娠検診は、町の小さな婦人科に通っていて、出産は別に産科のある病院を予約する必要がある(助産院や自宅出産を選ぶ人もいる模様)。周辺の病院をいくつかピックアップし、月に1~2度、平日夕方に開催されている見学説明会(医師や助産師が、病院の設備や体制について話をしてくれる&実際の病棟を見学できる)に行き、選択肢の中から選んで分娩予約を行う。

25週あたりに予約しようとすると、予約は30週以降ねと言われ驚いた。それまでに何かあったら、地域の指定病院のようなところに行くらしい。

定期検診は、32週までは4週間に一度、それ以降は2週間に一度の流れ。尿検査、体重測定、血圧測定と、問診。エコー(超音波)検査と採血は行ったり行わなかったり。23週あたりに糖負荷試験を行ったかな。31週からは、胎児の心拍を確認するNST(ノンストレステスト)を行っている。

先生はいつも白シャツに白デニム

私が通っている婦人科の先生は50代くらいの落ち着いた方で、常に清潔感のある襟付きの白シャツに白デニム。白衣を着ている姿は見たことがない。

予約時間に行くと、採尿、血圧測定までは受付兼看護師のおばちゃんが対応、その後少し待つこともあるけれど、だいたい20分以内には呼ばれる。待合室まで先生が来てくれて、まずは笑顔で握手。「調子どう?」みたいな感じで。私のドイツ語はとても未熟であまり会話にならないのと、先生がその後は英語で話してくれるのでとても助かっている。

体重測定:小数点以下は切り捨て

診察室に入ると、簡単に問診。とはいえ、「順調?」くらい(もちろん気になる点があればこの時に伝えている)。部屋には先生しかいない。衣服を脱ぐところは気休めの衝立がある程度で、簡単に会話をしたあと体重を測るのだけど、これが自己申告。

私が小数点以下を読み上げても、先生が母子手帳に記載するのは1の位までのみ。なので、母子手帳の体重記載欄は同じ数字が2つ並んでいたりする。増加は確かにあるはずなのに(笑)。日本は体重管理が厳しいときくので、このおおらかさはドイツだな~と思ったりする。

そのあと下半身裸のまま診察台に移動。カーテンのようなものはない。つまり先生が何してるかこちらから丸見え。その後エコーがある時はエコーに移り、胎児の心拍と頭囲を確認すると「Ok,that's it. Everything fine!」で終わり。検査時に体に塗るゼリーのようなものは、紙を渡され自分で拭く。

たいてい診察室に入って賞味10分ほど。いや、もっと少ないかも。

着替え中に去っていく

その後、いそいそと私が衣服を身に着けているときに「Any questions?」と訊かれるのだけど、夫がいるときは必要に応じて夫が聞いてくれ、私の方からは特に無いと伝えると、「Ok,じゃあまた2週間後ね!」と衝立の奥でまだ下着姿の私を残して診察室を出ていく。ここまでで15分ほど。

初診と2回目までは問診がもう少しあったのだけど、3,4回目あたりの検診からこのスピード感になってきて、最初にこのスピードに乗った時は思わず、着替えの最中に笑ってしまった。

採血しているそばで「Ciao!」(チャオ!またね!)

採血があるときは、問診のあとに看護師のおばちゃんが対応してくれる。

夕方の予約だったときのこと。問診が終わり、採血が始まったのが17時45分くらい。採血の準備をしているおばちゃんといくつか会話をしながら、上着を羽織り、何やら帰り支度を始める先生。そして、腕を出したままで待つ私の方にやってきて、「Ciao!」と笑顔で言い残し、帰っていった。すばやい。確かにもうすぐ18時だ。

このスピード感、もちろんドイツの医師皆がそうではないと思うけれど、ベテラン開業医の余裕なのかリズムなのかなんなのか、純粋に感心してしまった。

「大丈夫」の言葉の安心感

最初の頃は、質問はと訊かれても「何がわからないのかわからない」状態で、帰り道に「日本だったらどうなのかな」とか「もっと確認しておけばよかったのかな」と悶々とすることもあった。

けれど、回数を重ねるたびに、先生がそういうのならば大丈夫なんだろうと思うようになってきた。結局、あれこれ細かな情報を気にして左右されるよりも、専門家がそういうのならばそうなのだろうと。実際、ここまで問題なくお腹の命は育ってくれている。

番外編:Wunderbar!(ぶんだばー)=Wonderful!

31週での検診からはノンストレステストが始まり、受付兼看護師のおばちゃんが別室で機器を装着してくれる。いつも笑顔のおばちゃんはドイツ語のみで、私がよく分かっていないと知ると、身振り手振りで伝えてくれて、とても助かっている。

もちろんドイツに居る限りドイツ語でのコミュニケーションが基盤であり、そのレベルに達していないことを申し訳ないなと思うのだけど、おばちゃんは嫌な顔をひとつせず接してくれる。ありがたいなぁと思うし、その姿勢に救われて(甘えて)いるのも事実。

ノンストレステストが始まってから、よく耳にするのがドイツ語のの”Wunderbar!”(私には「ぶんだばー!」に聞こえる)

どうやら、赤ちゃんがよく動いており、検査結果が「いいね!」ということらしい。記録用紙についての説明はないし、いつもおばちゃんが検査後に用紙をとっていくだけなのだけど、検査室の経過を覗きに来ては、先生も看護師のおばちゃんもよく笑顔で”Wunderbar!”と言ってくれる。

なんだかその響きだけで「あ、大丈夫なんだな」と思えるふしぎな言葉。

良い点に目を向けるしかない

はじめての妊娠、出産。日本にいてもドイツでも、結局すべて未知数でしかない。不安でしかなかった妊娠初期、臨月が近づき産む怖さが迫ってきた今も、どうなるかわからないことだらけ。

正直、この採血方法の違いはなんだろう?と思うこともあって、検診内容の把握度は低いと思う。でも、異国での出産で不安な中、細かなことを逐一気にしてもさらに不安は増すばかり。

そんなとき、定期検診がストレスにならず、待ち時間も少なく、「大丈夫だよ」と専門家に言ってもらえる安心感は、思いのほか大きいのかもしれない。今は意識して良い点に目を向けていないと、心がしんどくなってしまうから。

検診もあと残りわずか。受付においてある苦めのコーヒーチョコレートが美味しくて、次回予約を済ませ、私がチョコをとると、受付兼看護師のおばちゃんはいつも笑顔で「Tschüss!(またね)」と言ってくれる。

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