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ウィシュマさん名古屋入管施設での死亡報道、入管で何が行われているのか?

2021年5月17日にウィシュマさんのご家族が名古屋入管に説明を求めて訪れたニュースを観て、3月にスリランカ人のウィシュマさんが名古屋入管で収容中に亡くなったことを知った。ウィシュマさんに何が起こったのか、入管施設で何が行われているのか。収容者をめぐる最近の動向をまとめる。

1. ウィシュマさん 名古屋入管施設での死亡報道

2021年3月スリランカ人のウィシュマさんが名古屋入管で収容中に亡くなり、5月17日にウィシュマさんのご家族がなぜ死亡に至ったのか、名古屋入管へ説明を求めて訪れた。

ウィシュマさんは、2017年6月に留学生として来日し、日本語学校へ入学している。入管へ収容されていたのは、2020年8月20日から、亡くなる3月6日までの半年弱の期間。1月中旬から体調が悪化し、吐いたり、足の痛み、呼吸困難などを訴えていたという。2月の病院の受診では、点滴と入院の必要性がある、との診断を受けていたが、入院はしていない。薬も、吐いてしまうため飲めなかったが、入管は薬を拒否していると認識していたという。2月9日の時点で、体重は15.5キロも減っており、支援者たちは1月と2月に仮放免の申請を2回行っていたが、許可は下りていない。
入管は、死亡する2日前の3月4日に、総合病院の精神科を受診させている。その際の診断書類には「仮釈放してあげれば、よくなることが期待できる。患者のためを思えば、それが一番いいのだろうが、どうしたものであろうか?」という記載があるが、翌日の仮釈放を検討する面談の際に、ウィシュマさんは「抗精神病薬の影響」か、途中で寝てしまい面談が終了している。そして、3月6日、職員の呼びかけに応じなくなり緊急措置が取られたが、その後搬送先の病院で死亡が確認されている。

2. 入管で何が行われているのか?―『ある日の入管』織田朝日著より

私も、タイのバンコクで暮らす身であり、タイの国にお世話になっている。日本へ希望を胸にやってきた外国人にも、楽しい日本生活を送ってもらいたいと真摯に思う。
一体、入管では何が行われているのだろうか?
まず、入管について少し整理してみよう。

入管とは
「出入国在留管理庁」(法務省外局)は、「出入国管理及び難民認定法」に関連する行政全般を担当している。外国人の監視・調査・取締りの機関としての性格が強い。8つの地用入管局、7つの支局、61か所の出張所、2つの入国管理センターで外国人を収容している。
詳細は出入国在留管理庁 Wikipediaを参照のこと
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%BA%E5%85%A5%E5%9B%BD%E5%9C%A8%E7%95%99%E7%AE%A1%E7%90%86%E5%BA%81
入管収容施設
全国で17箇所。在留資格のない外国人(超過滞在者、非正規の入国者、その他の事情で在留失格を更新されなかった、または取り消された人)は、違反調査・審査の間には「収容令書」により最長60日間、そして、「退去強制令書」発布後には、無期限に、入管収容施設に拘束される。収容停止(仮放免許可)の可否は、当局の広範な裁量に委ねられている
仮放免制度
仮放免許可とは、在留資格のない人が、収容を免除されている状態を表す。しかし、就業は許可されず、社会保障や行政サービスも受けられない。仮放免期間は1ヶ月程度で、更新の都度、突然の収容の恐怖がつきまとう
難民認定について
日本の2019年難民申請者数は10,375人。認定されたのは44人。認定率は0.4%
2018年 入管法違反者16,269人中「不法残留」10,140人、「不法入国」409人、「不法上陸」140人。殆どが、観光ビザで入国し、オーバーステイとなった人たち。

『ある日の入管』の筆者は、実際に収容者の支援を行っている人で、実際に入管で見聞きした内容を、漫画にしてまとめている。その本によると、中では非人道的なことが日常化している現実があるようだ。

・期限のない収容
・日々の様々な苦痛による精神疾患
・反抗的な態度に対する大人数での制圧
・制圧時のケガ(骨折など)
・病気を訴えてもみてもらえない
・苦しみからの自殺
・お弁当に鉄くず、髪の毛、虫などが混入している(職員のいたずらか?)
・担当医師が高圧的
・収容者によるハンガーストライキでの抗議運動
・職員が挑発してきて反抗的な態度を取ると独居房に入れられる
・ハンストした人にはシャワーを2週間使わせない
・外部からの差し入れを認めない
・着替え、トイレも職員から見えるところに設置されている部屋がある。
・女性ブロックに、男性職員が入ってくるときもある(着替え、トイレを見られる)
・懲罰房では、トイレで排泄したものを職員に頼んで流してもらわないと行けない部屋があり、監視カメラもついている。

あまりにもひどすぎる。
本を読む限り、職員も、ひどいことをしていることに麻痺してしまっているように思える。そして、これを職員にやらせているという、構造的な問題があるのだと思う。

現段階で疑問なのは、
・なぜ難民申請が通らないのか。
・トルコから、来日ビザが下りやすいらしいが難民申請は受け入れないというのは、なぜなのか?
・ビザ失効は、収容に値する罪なのか
・在留資格は、どのようにしたらもらえるものなのか。
あたりである。ここは、引き続き調べて行きたいと思う。

昨年、2020年8月 国連人権理事会の「恣意的拘禁作業部会」は、日本の入管の外国人長期収容について、「法的根拠を欠く恣意的な収容で、国際人権規約などの国際法に違反する」との判断を示した。
日本はその国連の判断に答える必要がある。

3. 映画『牛久』

2021年5月末、映画『牛久』が公開された。
この映画は、Thomas Ash監督により作成された、外国人収容者との面談を隠し撮りして構成された映画だ。隠し撮りをした背景としては、まず、入管は撮影を認めないということ、そして、撮影していると収容者に伝えることで、真実が語られることがなくなってしまうのではという懸念があったためだと話している。
実は、公開を巡って、作成側と、収容者支援者との間で対立が起こっている。理由は、出演している収容者の一人から公開許可を取っていなかったということ。Thomas Ash監督は、「全員の承諾を得て公開に踏み切った」と、映画公開の記者会見で述べている。そして「もし、現在、その収容者が公開に反対しているという意見に変わってしまったのなら、悲しいことです。」とも。
真相はともかく、作成側の倫理の問題(承諾なく公開する)と、映画の内容が世の中で語られるべき内容であるという事実は、全く別物ではないか。
少なくとも、一人を除く他の収容者たちは、身の危険があるにも関わらず、出演を承諾し、真実が語られることを望んでいる。そもそも、語ることで身の危険が及ぶという事自体が悲劇であり、阻止されるべきことなのでは。
支援者も、Thomas Ash監督も、最終的に両者が目指しているのは、外国人労働者が非人道的な方法で収容され続けている現状を改善したいという点にあるのだろう。
今まで支援者が見てきた現実があまりにもひどかったので、出演した収容者たちに危害が及ぶことが予見できてしまって、居ても立っても居られなかったのかもしれない。それもそれで、悲劇である。
とにかく、私は『牛久』を観てみたい。

最後に、『牛久』の記者会見でとても悲しく心に残った一言があった。
記者会見には、映画に登場する2名の収容者が監督とともに参加されていた。そのうちの1人の方が、「働けないことは、恥ずかしいこと。自分で働いて、奥さんに誕生日のプレゼントを買ってあげたい。」とおっしゃっていた。そんな些細な願いも、この日本は、受け入れることができないくらい、不寛容な国なのか、という現実に泣けてきた。
その収容者はクルド人。難民として日本へ希望を持ってやってきて、働くこともできず、いつまた収容されるかわからない不安に苛まれて今も暮らしている。
なぜ、日本は、そんな難民の方々に、希望していた未来を提供することをせず、更なるひどい仕打ちをしているか。何が問題なのか。

この件については、引き続き調べていきたいと思う。

#入管 #難民 #ウィシュマさん #映画牛久

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