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「浴びる」という比喩

「浴びる」という比喩

何かを身体全体が

覆われるようにして経験するときに

よく使う。

昨日、大学院の同志たちと

箱根の美術館へドライブがてら行ってきた。

朝から曇り空ではあったが、

現地に近づくにつれて

だんだん雨風が強まる。

車中ではDJをすることになり、

アピチャッポンのサントラを流す。

箱根湯本についた頃には

もう別の音楽に変えていた。

山を登っていくにつれて霧が深まり、

窓を開けると強い雨風を

身体中に浴びる。

これまさに今流すべきだったのでは、

と思った。

晴れていても、嵐の中でも

いる場所は変わらないはずなのだが

もっと中にいる、奥にいるという感覚が

霧や風雨によって巻き起こる。

山のなか、雨のなか、雲のなか

木々のなか、風のなか、

ごおおおおっさわざわさわざざざ

美術館に着くと、霧雨が森も建物も覆っている。

太陽の光が霧に溶けて影と混じり合い

視界と同期した世界がぼんやりとしている。

今回の展覧会にはなかったが

宛らロスコの絵の中に入ったようでもあった。

視線が色面の、滲み出すような境界で立ち往生し、

気付いた時には地の上に塗られた色の中に没入している。

帰り道には、二つの虹が並んでいた。




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