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  • 常盤台通信

    • 7本

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2023年ベストアルバム

今年はいつもより各レビューを短めにして、レコードでよく聴いた音楽や、過去作も含めて今年出会った音楽について書くことにしました。 コロナも少しずつ落ち着いてきて、ライヴにもたくさん足を運んだ一年になったと思います。なかなかたくさんの新譜を聴くことが出来なかった気もしますが、まだまだこんなに新しい音-楽の可能性が開かれているのだということに、強い希望を感じる作品がたくさん生まれた年だったように感じています。拙筆ですが、今回もどうぞお付き合いください。 1. e o /cero

    • 2022年ベストアルバム

      1. BADモード/宇多田ヒカル リード曲である「BADモード」(M-1)を初めて聴いたとき、「ネトフリ」と「ウーバーイーツ」という単語が耳に飛び込んできて、誰もがたちまち度肝を抜かれたことでしょう。あぁ、こんなに軽やかに時代性を象徴するワードをさらりと入れてくる・・・痺れました。そして冒頭の力のないため息が、この曲が持っている揺蕩うような空気感、リバーブの効いたギターと、エレピの響きが湛える懐の深さに満たされた気怠げなダンスミュージックへと、一瞬で聴者を引き込んでいきます

      • 憑き物が落ちる場所

        noteを開いてなにか書こうと思って書き始めると、言葉選びを気にしたり、構成を気にしたりととにかく色んなことを逐一気にしすぎて、結局中途半端な書きかけの下書きだけがどんどん溜まってしまう。だから、とにかく最近あったことや考えたことを短くてもいいから残しておこうとおもう。気楽にやっていくことにしよう。そうして続けていくことで、書くことに慣れていく方が無理もかからなくてよいかもしれない。 最近は寝起きに胃腸の心地がなんとなく悪いことが多く、胃もたれみたいな感じを抱えながら起きて

        • 2021年ベストアルバム

          1. An Evening With Silk Sonic/Silk Sonic 今年の3月に「Leave The Door Open」(M-2)がリリースされた時、やられた、と同時に、こりゃずるいよ…と言う感慨とともに浮かんでくるにやけ顔を禁じ得ませんでした。 1枚目は、現代アメリカのポップス界を代表する二人のスターによるタッグ、Silk Sonicのデビューアルバムに決定です。2016年にリリースされた『Malibu』の衝撃以来、Anderson .Paakは敬愛する

        2023年ベストアルバム

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        • 常盤台通信
          7本

        記事

          新宿駅のバーキンが消えた

          バイト終わり。たまの贅沢に寄っていた新宿駅のバーガーキングが閉店してしまった。 あの日のことはよく覚えている。いつも通りバイトを終えて駅へ向かった私はテリヤキワッパーの口になっており、京王モールへと足早に向かった。献血の協力を求める声を左に、いつも申し訳ない、と思いつつ店へと急ぐ。 テリヤキワッパーのパティは、硬質でドライな口当たりが特徴だ。あの、粗めにひいて固めた肉感の強い塊は、噛みごたえがあるがゆえに強く「食べている感」を味わえる。これはマックを始め他店のパティにはな

          新宿駅のバーキンが消えた

          孤独について・序

          しばらく更新していませんでした。いつまでたっても面倒くさがりは治りません。まいにち欠かさず日記つけられる人はほんとに尊敬します。 予定していた大きいイベントがなくなってしまったり、知り合いと気軽に会えなくなってしまったり、気になる場所にふらっと行けなくなってしまったり、とにかく一人で過ごす時間が週のほとんどを占めるようになってしまいました(もともと一人でいる時間は多かったのですが)。大学院の同期たちと、近くの公園へ花見に行ったのが遠い昔のようです。池が輝いてました。 どう

          孤独について・序

          2019年ベストアルバム

          1. IGOR/Tyler, the Creator  前作の『Flower Boy』(2017)に引き続き、今回も遊び心満載の一枚をリリースしてきました。一曲目の「IGOR’S THEME」(M-1)、一発目に鳴るシンセの音から壮大な叙事詩の幕開け感がすごいです。この音色、「EARFQUAKE」(M-2)ほかアルバム内のいろんな楽曲で多用されているので、タイラーの今作お気に入りサウンドなのでしょうか。食べたことなかったけど美味しいわ!って食材とか料理、しばらく飽きるま

          2019年ベストアルバム

          対象化と笑い、喜劇と悲劇のねじれについて —単一の社会的弱者という権威的強者—

           “I used to think that my life was a tragedy, but now I realize, it's a comedy.”(俺の人生は悲劇だ。いや違う、喜劇だ。)  これは映画『ジョーカー』(2019)の終盤において、主人公のアーサー・フレックが残す台詞である。このフレーズは作中でも映像が引用されている喜劇王、チャーリー・チャップリンによる言葉(=“Life is a tragedy when seen in close-up, but

          対象化と笑い、喜劇と悲劇のねじれについて —単一の社会的弱者という権威的強者—

          立場と言語の綾

          インドの映画監督、ロヘナ・ゲラの長編作品『Sir』(邦題:あなたの名前を呼べたなら)を観た。 ゲラ監督自身、ムンバイ出身である一方アメリカで大学教育を受けた経歴を持っている。 インドにおいて未だ根強く残っている階級制度や村社会の因習に対して、批判的に切り込む力作となっている。 建設会社の御曹司であるアシュヴィン(ヴィヴェーク・ゴーンバル)は、とある女性と結婚する予定だった。だがその女性の浮気が発覚し、新婚生活を送る予定だったマンションの一室に一人で住むことになったアシュ

          立場と言語の綾

          なんでそうなるんだろう

          なんでそうなるんだろう と、他人の考えていることについて思うことが 誰しもあるだろう。 〇〇だから〜〜だ。という論理では、 一見上手く理解できないようなことを感じるときだ。 なんで機嫌悪そうなのかな、とか どうして話そうとしないのかな、とか 考えても思い当たることがなかったり よく原因がわからなかったりする。 そんな時には、その人固有の合理性があるのだと、 思考過程があるのだと、 少し思い留まって考えてみる必要がある。 今日で、いぬのせなか座:山本浩貴

          なんでそうなるんだろう

          「浴びる」という比喩

          「浴びる」という比喩 何かを身体全体が 覆われるようにして経験するときに よく使う。 昨日、大学院の同志たちと 箱根の美術館へドライブがてら行ってきた。 朝から曇り空ではあったが、 現地に近づくにつれて だんだん雨風が強まる。 車中ではDJをすることになり、 アピチャッポンのサントラを流す。 箱根湯本についた頃には もう別の音楽に変えていた。 山を登っていくにつれて霧が深まり、 窓を開けると強い雨風を 身体中に浴びる。 これまさに今流すべきだっ

          「浴びる」という比喩

          書の海に入る

          書の海に入る という感覚が、 教授たちの研究室に入った瞬間に湧き上がる。 何というか、まだ整理されていないものも含む 混沌とした思考自体に直面しているようで ざわざわする。 昨日、研究の中間発表を終えたとき 作ったレジュメに書き込みを加えて 返してくれた教授がいた。 今日はその教授の授業があり、 終了後、さらに研究について少し話したあと 一冊の本を貸してもらうため、 一瞬だけ研究室にお邪魔したのだった。 ピエール・クロソウスキー『ルサンブランス』

          書の海に入る

          はじめました

          はじめました 冷やし中華の季節。 夏だと思ったら、だれでも始めていい 冷やし中華はじめました。 先週だったか、学校のスタジオ棟に入った途端 蚊取り線香の匂いが ふぉわーーーんと身体を覆ったのだった。 毎年、線香の匂いがすると 夏が来たのだな、と感じる。 ある匂いで時間の変化に気づくとき 写真を見返すとき以上に 一瞬で、ある抽象的な記憶に飛ぶような 時間経験が立ち上がる。 立ち上がって、すぐ去る。 海に行った時の写真を見ると、 砂が熱かったな、とか

          はじめました

          嵐のあとに花は咲く

          嵐のあとに花は咲く 'Cause after the storm's when the flowers bloom これは、Kali Uchisの"After The Storm" という曲の一節だ。 昨晩はずっと雨が降り続け 大きな雷が何度も鳴り響いていた。 今朝、外を見ると強風が吹きつつも 昨晩からは想像しがたい快晴だった。 午前中のうちに野毛にある 図書館へと向かう。 本当に気持ちのよい日和で、 たくさんの人が出歩いている。 閉館まで、研究発表の

          嵐のあとに花は咲く

          たまに近くの公園に置いてある

          たまに近くの公園に置いてある ベンチに座っているおじさんがいる。 雨の日はいつもいなかったはずが 昨日の夜は合羽を 被ってベンチに座っていた。 私がいつもバイトを終えて 帰宅する時間帯なので0:00ごろ だろうか、昨日もただそこで座っている ように見えたが、缶の お酒を手にしている時もあった気がする。 考え事をしているのか、寝ているのか、 たまに見かけるおじさん。 今朝テレビをつけたらやっていた 王様のブランチで丁度 雨ソングといえば、みたいな特集

          たまに近くの公園に置いてある