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もう会うことのない人の幸せを願うことは容易い

一人暮らし1日目が間も無く終わろうとしている。
失恋の勢いでここまできてしまった。
失恋をしなければ、一人暮らしを始めることはなかった。
新しい地点に立ったはずなのに、まだ忘れることができない思い出を抱えている。
それどころか、忘れようとする努力など微塵もしていない。
それでいいと思っている。
飽き性な自分のことだから、またそのうちマッチングアプリでも始めて、かっこいい人を見つけるのかもしれない。その人と、お付き合いできるかはさておき。

今の時点で、彼以上の人とは出会えないと言い張れる。なぜここまで忘れられないかはわからない。
ただ、思い出が色褪せないように、何度も脳内再生するのだ。

初めて出会った日。駅のホームで見送ってくれたこと。初めて電話をかけてくれたときの言葉。特に何か話すってわけじゃないんだけど。その言葉が嬉しい。初めて手を繋いだこと。信号が赤になる前に、一緒に走って横断歩道を渡ったこと。電話をした時先に寝てしまって、聞こえてきたいびき。(寝息ではない、いびき。しっかり轟くタイプの)雨の中歩いた公園。

急にラインしたのに電話をかけてくれたこと。2年ぶりに会った時の瞬間。さらにかっこよくなってドキっとしたと同時に、やっと会えた、とホッとした。お土産を渡した時の喜んだ表情。世界一幸せなデートコース。大人になったね、俺たち。と話していたこと。電車の中、一緒に聴いた曲。(こういう時のために、私はあえて有線のイヤホンを愛用している。バブルの生き残りである)こんな幸せな日がまた訪れたら、何があっても生きていける、と心底思ったこと。

もっともっとあって、どれもがいまだに愛しい。

もう会うことのない人の幸せを願えるのか、とback numberの歌詞であったな。海岸通りって歌だった。

イエスだ。即答する。
今すぐ、他の人と結婚する、となると、そりゃー悲しいけれど。

幸せになってほしい。
人生のうちの一瞬を共に過ごし、それは幸せで満ちていた。こんな幸せな気持ちにさせてくれたのだ、元気でいてほしい。ずっとかっこよくあってほしい。でも優しさと素直さはそのままでいてほしい。
幸せでいてほしい。
私も、どうにか幸せになるよ。


一人暮らし1日目で、なぜか人生初のレバニラ炒めを作り(レバーの値引きにつられた。ちなみにレバニラは大好物だ)レバーの下処理の面倒さを思い知らされ、まだまだ買い足すものがある、理想のインテリアなど夢のまた夢、な現実を目の当たりにし、家事の多さを改めて感じ、母の偉大さを痛感した。

失恋を引きずりながら、一ミリほど、前に進んでいる。レバーの下処理に牛乳が必要なことを覚えた私は、昨日より成長している。

まあ、しばらくは、レバーは買わないかな。


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