緑川 悟

食べたおいしいものをエッセイ風の日記として書いたりしてます。めっっっちゃ不定期に更新。…

緑川 悟

食べたおいしいものをエッセイ風の日記として書いたりしてます。めっっっちゃ不定期に更新。よろしく。

マガジン

  • ごはんエッセイ、おいしい毎日

    日々食べたおいしいものをエッセイとしてまとめてます。 たかいものからやすいものまで美味けりゃなんでも食べる。

最近の記事

想像と違った、ドクターペッパー

 地下の空間で汗だくの中年男性がひとり、自動販売機の前で立ち止まっていた。ここは大須のとあるゲームセンター。いつものように音楽ゲームを何度もプレイした僕は頭から湯気を立ち上らせ、その息は軽く上がっていた。  現代の音ゲーはリズムに乗ってたのしくミュージック!みたいなノリではない。複雑怪奇な譜面を見切り、二分間に二千近い打鍵と共に皿状のデバイスを回したりする行為を強いられるのだ。音楽を楽しむ余裕などない。  それを楽しいと言い張る毎日。今日も僕は圧倒的な分量のノーツに押しつ

    • 運ちゃんの隣で、朝からのラーチャーセット

       夜通し働き仕事仲間に別れを告げたあと、疲れた体もなんのそのという気概でもって僕は高速道路をひた走る。目的地の温泉街を目指して。  連勤が続いていた。澱んだ空気の事務所に降り注ぐ朝日に瞼をしょぼしょぼと震わせ、ボケ切った頭を叩いて気合を入れ直す。隣を見たら同じ顔。そんな仕事仲間との他愛もない会話の中 「緑川さん疲れてますね〜。温泉とかどうっすか」  と言われたので疲れた僕はそれを真に受け、仕事中なのにスマホで速攻で温泉宿を予約したのが二日前。そして今に至る、というわけな

      • 卵とトマトと中国と

         なんか行きたくなる店、ってのがある。特別近くもなく、大絶品というわけでもない。なんなら世間様の評価も別にそんな高くもない。それでも気付くと足を運んでしまう店、というのが自分の中にいくつもあって今日もそこへ自然に体が吸い込まれていった。 「明和酒家 大須301店」  大須のとあるビルの三階にある中国料理店だ。同じフロアにはサイゼリヤと、本格カレー屋と、そして大量のコンカフェが混在するカオスなものとなっている。  お気に入りの嬢の出勤時間、いや出勤って言い方しないか。なん

        • 勝利の町中華と夜鳴きそば

           秋葉原という街はいつでも誘惑に満ちている。とりわけ最近では二郎系のラーメンとコンカフェ。そのふたつで構成されていると言っても過言では無い。  おたくたちは二郎系を食べた後にコンカフェに行くのだろうか。にんにくの匂いが充満する店内というのは大丈夫なのだろうか。そんなことを思いながら僕は夕闇に包まれた秋葉原を歩いていた。空腹だった。  東京旅行に来ると毎度のようにここに来てしまうため、いっそのこと秋葉原のホテルに泊まろうと思ったのが先週。実際に赴いてみるとそこは秋葉原のイメ

        想像と違った、ドクターペッパー

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        • ごはんエッセイ、おいしい毎日
          11本

        記事

          百円のかってえほっせえ焼き芋、いいよね。

           焼き芋。子供の頃はとてつもないご馳走に感じた。何せ作る手間がとんでもない。というか焚き火自体がめんどくさい。  僕の少年時代、焼き芋を食べるためにはまず近所の農家による焚き火に遭遇する必要があった。遠目に橙の輝きを発見すると、大急ぎでさつまいもとアルミホイルを両手いっぱいに抱えて走り 「おじさん、これ焼いてよ!」  とおねだりせねばならなかったのだ。燻るわらを見つめてようやく辿り着いた焼き芋は、たとえ焦げてしまったとしても他に代え難いごちそうであった。  それが今で

          百円のかってえほっせえ焼き芋、いいよね。

          凍てつく夜にはかまたまうどんを

           氷雨が降り注ぐ午前一時。暖房を切った凍てつく部屋で、ひとり中年男性が腕を組んで白い息を吐きながら立ち尽くしていた。僕だ。明日は休みだから夜更かしでもしようと思っていたが、どうにも仕事の疲れからか早々に寝入ってしまった。  寒さと空腹が身を絞っていくが、今から外出するのも億劫だし、この時間にカップ麺というのはたるんだ体を見るに我慢したいところではある。  そうだ、かまたまうどんだ。昔イシヤマアズサさんが出した「真夜中ごはん」というマンガに載っている、冷凍うどんで作るレシピ

          凍てつく夜にはかまたまうどんを

          松屋の豚汁と、おまけの牛めし

           さんむい。今年は暖冬かもしれないですね、と言った気象予報士のほっぺに冷え切った手を当ててやろうかと恨み節と共に僕はひとり街を歩く。  夜ふけの街並み。するどく冷えた冬風が我が物顔で踊る時、僕はいつも牛丼チェーン店の松屋へ避難する。丼ものはなんだっていい、大事なのはそう「豚汁」だ。  松屋の豚汁はうまい。というかデカい。どんぶりと同じサイズの腕になみなみと注がれている。到着したらいそいそとたっぷり七味を振りかけ、まず初めに大ぶりにカットされた豆腐にかじり付く。    熱々

          松屋の豚汁と、おまけの牛めし

          湿ったカツ丼がいちばんうまい

          「かつ丼」  どうやら僕は最近のかつ丼とは相性が悪いらしい。そう思ったのはかつ丼の名店を紹介するテレビを見ている時のことだった。どうも最近は玉子の上に「乾いた」カツが乗っていることが主流で、サクサクの食感も味わえるようになっている。  だが違う。僕が求めるかつ丼はあくまで玉子と一緒にとじてあって、カツの衣はむしろじゅくじゅくのしみしみになっていないと困るのだ。  ちょっと濃すぎるんじゃないの?と疑問が湧くような甘辛いつゆに浸ったふにゃふにゃの衣を少し剥がしてぱくり。ああ

          湿ったカツ丼がいちばんうまい

          まるごと苺、ぜいたくな一本

           幼い頃、風邪をひいた特別な日にしか食べられない甘味があった。桜桃のかんづめに、原液濃い目の瓶のカルピス。そして「まるごとバナナ」だった。 上手く持たないと破れてしまうようなふわふわなオムレット生地にたっぷり注入されたホイップクリーム。そしてその名を恥じない、まさしく「まるごと」バナナ一本。  高熱でもうろうとする意識の中、母親が「まるごとバナナ買ってきたよ。食べられる?」とやさしく僕に呼びかけると、仮病だったんじゃないかと思うほどに僕は飛び起きて、おでこの冷えピタが落ち

          まるごと苺、ぜいたくな一本

          手ちぎりキャベツと豚バラ肉のお鍋

          「手ちぎりキャベツと豚バラ肉のお鍋」  寒くなると鍋が食べたくなる、とはよく言うが僕の場合は作るのがめんどくさくなると我こそが、と鍋が台所から飛び出してくる。なのでつまりは年がら年中寒かろうが暑かろうが鍋は出現する。  なかでも一番頻度の高い鍋料理はタイトルにある通り、ふたつの材料がメインのあまりに簡素なものだ。これが非常にうまいので紹介しよう。  材料はキャベツと豚バラ肉。おおかたこれだけ。ああ、大事な調味料忘れてた。粗挽きのこしょう。これもあるといい。僕はこれに加え

          手ちぎりキャベツと豚バラ肉のお鍋

          ごはん全滅、しょうが焼き定食

          「しょうが焼き定食」  男の子というのは未来永劫しょうが焼き定食から逃れられない運命にある。渋いたべものを少量頂く、大人になったら自然にできるものかと思っていたが、僕は今日も定食屋で元気よく「じゃあ、しょうが焼き定食で」と宣言してしまう。  じゃあ、とか仕方なしに選んでいるふうを装っているが、そんなことはない。初めからこれが食べたかったのだ。  名古屋市大須。ここに創業百年超えの老舗大衆食堂、互楽亭(ごらくてい)という店がある。ちなみに同名店舗が大須にもう一つあり、そち

          ごはん全滅、しょうが焼き定食