通勤途中にある小さなお地蔵様

通る度に『今日も一日よろしくお願いします』

と願掛け

帰る度に『今日も一日ありがとうございました』

とお礼

毎日、通勤途中で見るお地蔵様

ある朝、年配の男性がお地蔵様のお賽銭箱から

お賽銭をとっているところを目撃してしまった

お賽銭箱といってもお賽銭と書いてある普通の箱なので

誰でも取ろうと思えばとれるのだが

取らないのが普通だろう

でも、その年配の男性は違った素早くとって小銭入れに入れた

一瞬、『えっ！』と思ったものの

注意出来なかった自分

その日は、お地蔵様に朝の願掛けしよう思ったが

お顔は見れなかった

注意出来なかった自分に後ろめたくて

お賽銭を取った年配の男性は

何もなかった様に前を歩いていく

ちっとも悪いとも思っていない様に

でも、その背中はとても寂しそうで

強がっている様にも感じた

お地蔵様はそういう事を全て見ている

毎朝、お婆さんが手を合わせているところも

帰りの時もサラリーマンの人が拝んでいた事もある

お地蔵様は喋れない

そして言葉も出せないが

お地蔵様は毎日前を通るみんなを見ているのだ