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「未来よこんにちは」おすすめ映画

先日、おすすめの映画の話になって思いつくままタイトルをあげたのだけど、この映画のことをその後思い出した。

少し前からこの映画のことをnoteに書こうかなと思っていたことも思い出した。この映画はとてもよかったのでいろいろな人におすすめしたい。夫も私も息子もそれぞれ「観てよかったね」という感想だったのだけど、たぶん私が一番「観てよかった」と思ったと思う。

主人公は高校の哲学の先生で2人の子どもの母で年老いた母親を抱える娘でもある。とても魅力的な人。子どもたちも独立して孫も生まれるぐらいの年頃。いろいろなことを抱えながら暮らしているけど充実しているように見える。

この映画を観てすごくすごく感じたのは「私は妻であり母であるけどもしそれがなくなったら何になれるのだろうか?」ということだった。

結婚してからすぐ夫が胃がんで手術をして、それからは「長生きしてもらう」のを目的に夫と私と2人でがんばってできる仕事をしようと会社勤めを辞め、花屋に修行に行き、田舎暮らしをしたいという希望もかなえながら花屋を開業してその頃息子が生まれてきてくれて、本当に嬉しかったけどやっぱり大変で元々何もできない私が田舎で育児をしながら畑をしながらmidori-yaというお店というか場所を夫と共にやってきた。

息子が生まれて1か月で田舎に引っ越して知り合いも誰もいないところでずっと空家になっていた民家を片付け、改装しながら1年後に開業した。半年ぐらい経った頃、勤めていた花屋の友達が遊びに来てくれて「だいぶ慣れた?」と聞きながら写真を撮ってくれた。
「この景色にすごく似合ってるよ。」と友達は言ってくれた。
「そっか。ありがと。でもこの半年、なんか大変すぎてあんまり覚えてない。」と私は答えた。本当にあんまり覚えてなかった。

それからも息子はすくすく育ってくれて、midori-yaは田舎の花屋として訪れてくれるお客さんやお花のレッスンに来てくれる人が増えてきて想像以上に忙しくなった。その後、熊野に移住してまた高島に戻って来てもう一度、midori-yaを開業すると昔のお客さんや新しいお客さんがいらして日々、忙しくいろいろな出会いを楽しみながら続けることができている。

夫はその後、再発することもなく20年経ち元気にどんどん自分のやりたいことをやっている。息子は17歳になり、どんどん大きくなり最近は私の方が教えてもらうことが多い。自分のやりたい道へと進んでいくだろう。

私は?夫に長生きしてもらうという目標は今のところ上手くいっている。2人でがんばってできる仕事を続けている。でも私1人だったら何をしていけばいいのだろうか?今更何かできることがあるのだろうか?

何も夫がいなくなったらとか離れて暮らすようになったらとかいうことではなくて、妻とか母ではなくて私という人間はどんな人だったのだろうかとふと考えてしまったのだ。妻としても母としても何もできていなくて最近ではマスコット化してきている私だけれど、気持ちは妻だからサポートしよう!とか母だから!と思っているところがあった。夫と息子にしてみたら何をサポートしてくれてたんやろ?という感じだと思うが私の気持ち的には常にそういう思いがあったと思う。

それがもしすべてなくなった場合、私という人間はからっぽなのではないかと思ったのだ。会社勤めを辞めずに何らかのパートなどを続けていれば、細々とでもどこかで勤めていたかもしれない。「2人でがんばってできる仕事を、花屋をしよう!」という勢いで花屋に勤め出したのもまだ若かったし雇ってくれたが今更雇ってもらうところもなさそうだ。花屋にしろ会社にしろ勤めるためにはもう少し町っぽいところに住んでそこから勤めないといけない、とか具体的なことを考えたら無理そうだと思った。

そもそももし私がひとりで生きて行くことになったとしてどこかに勤めることがしたいことではなくなってしまっている。町の中の小さな家に住んでいるならそこでブーケだけつくる花屋さんをするとかいらなくなった本を集めて貸し出し文庫とかするとかたまにはお腹すいている人みんなでご飯を食べる会をするとか・・いろいろ考えられるかなとも思った。でもそのためには私一人で動けるぐらいの場所に小さな家がまずいる。なかなか難しい。

でも小さな花屋とか小さな文庫とか小さな食事スペースとか考えだしたら一応ひとりでもその時にその場所でできることを考えればいいんだなと思い暗たんたる虚無感から救われた。

結婚した時に会社に勤めるしか能がなかった私が、大好きだった雑貨屋さんのような花屋+雑貨+お花のアトリエ+自然食品のお店っぽいmidoir-yaを始められることになってひとりでではできない世界が広がってよかったと思っていたのを思い出した。世界が広がってよかったとすごく思った分、その世界を維持するために全力でがんばっていた。特に息子が小さいうちはほとんど座る暇もないぐらいうろうろとがんばったと思う。役に立っていたかどうかは別として自分としてはがんばっていた。だからこそ全力を注いでサポートしていたつもりの夫や息子があまり私のサポートを必要としなくなってきた現在、この映画を観て「私って一体何なんだろう?」と感じたのだと思う。

主人公は自分の未来へ向かって行く。フランス語の原題は「L'Avenir(未来)」仕事も夫も子どもも親も抱えている女性の「未来」どんな状況になっても「未来」は自分が創り出していくもの。現在のただの延長だ。

もし何もかもなくなって私ひとりで生きて行くことになっても「私は私」で私の意志で進んで行けばいいのだと思えた。大層なことを考えなくてもその時に私ができることだけしていけばいいのだと。

私よりもっと仕事に妻業に子育てにまた親を抱える立場に日々がんばっている人がたくさんいると思う。男性女性関係なくとは思うが、今の日本ではやはり女性の方が「私」というものを考える時間を失いがちなんじゃないかなと思う。なのでこの映画は将来結婚して仕事もして子育てもするのかなと漠然と想像している方や子育て真っ最中、自分の時間なんて1分もないという方や子育ては落ち着いてきたからこれから自分の時間を持ってと考えている方やまだまだ仕事をがんばるぞという方・・・いろいろな方におすすめしたい映画。

特に自分が自分としてがんばるぞ!というのではなく、母としてがんばるぞ!とか自分の立場に重点を置いている方におすすめ。暗い映画ではなく映像も楽しめる。

ぜひご覧ください!








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