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溜め込んだ諸々 そして純文学

年末の気忙しさ極まれり。
世間様の大掃除ムードに乗ろうと必死であるが、膨れ上がったファイルボックスにはなかなか着手する気が起きずにいる。

トーベ・ヤンソン『誠実な詐欺師』では、老女が、溜め込んだ膨大な書類・手紙類を下宿人に整理してもらう場面が出てくる。
また、思い入れがあって捨てられない物たちを、凍った湖の上に盛っておく場面がある。
春になって氷が解けたら、盛られた物たちは湖の底へ。目からウロコである。
しかし、物がきれいに片付いていく一方で、老女の心は波立ちっぱなしなのだ。

老いた女のざわつく気持ちにも、サクサク仕分けをしていく若い女の気持ちにも、少なからぬ感情移入をしつつ、この本との時間は冬の日の至福。
ここ数週間、ちびちび読み進めて実はまだ読了していない。もったいなくて読み進められない。舐めるように読んでいる。
「純文学ってどういうものなのか」と、ずーっともやもやしていたのだが、この作品を読んで純文学のなんたるかをはっきりと確信できた。
トーベ・ヤンソンの大人文学は質が高い。どれも繰り返し読むが、これも一生の宝物。
#コラム #書評 #北欧文学 #読書