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【昨日の敵は今日の友】野党はどうして共闘するのか?

はじめに


 6月6日の新聞各紙は、安倍首相の首相在任日数が、戦前に首相を務めた伊藤博文と並び、歴代3位になったと報じました(1)。2012年末から現在まで安倍自民党は政権を維持し続け、国政選挙にも5連勝。また次の首相候補として語られるのは、石破茂元幹事長・岸田文雄政調会長など、自民党の議員ばかり…。
 このように政権の話題になると野党の話題がほとんど出てきませんよね。それもそのはず、かつて野党最大勢力であった民進党は立憲民主党と国民民主党に分裂し、自民党に所属議員数では大きく負けています。

 しかし野党も何もしないわけではありません。立憲や国民と、共産・社民も含めた野党4党は、国会や選挙において「共闘」をしているのです。
 といっても、「共闘」とは具体的に何をしているのでしょうか?実はこの「共闘」、3年前の2016年から行われています。この記事では、野党共闘の実態とその始まりを見ていきましょう。

1.野党共闘は何をしているの?


 野党共闘とは実際には何をしているのか。
 具体的には、安倍政権に反対する野党が協力して参院選の候補者を調整し、強力な与党相手に野党候補が共倒れにならないようにしています。現在この枠組に参加しているのは、立憲民主党・国民民主党・共産党・社民党の4つの政党です。

 今回の参院選で、共闘する4党は32ある一人区(当選する人が一人だけ)で候補者を一人に絞ることにしました。自民党の支持率が約30%以上である一方、野党第一党の立憲民主党ですら10%を切ることも多い現状では、一人区で野党がむやみに候補者を立てていたら、票は分散してしまい、与党には確実に勝てません。野党の候補者を一人にして政権を批判する人々の票を集中させることで、初めて勝てる可能性が出てくるのです。
 産経新聞(2)によると、2017年衆院選で投じられた比例票を元に試算すれば、今回の参院選は前回より1多い12の一人区で勝てるそうです。衆院選での比例票がそのまま参院選の票になるわけではありませんから、実際にはより多くの選挙区で勝つことができるかもしれません。野党側も政党外から立候補者を擁立したり、政党の候補を無所属にして野党統一候補として擁立したりと、一本化された候補者を各党が応援しやすくなる体制を整えています。
 それだけでなく、彼らは政策においてもある程度の合意をして選挙に臨みます。「市民連合」という市民団体の申し入れにより、各党は13項目にわたる共通政策を掲げることに合意しました(3)。
 一方で、現状では4党による新政権構想を練るまでには至っていません。今回の選挙があくまで参院選であり、政権選択選挙(=衆院選)ではないうえ、未だに立憲・国民両党と共産党の間には隙間があるようで、これをどう埋めていくかが、来る衆院選を勝ち抜く鍵となってきそうです。

 ところで、このような選挙での連携は世界的には珍しくない現象です。そもそも自民・公明両党も、選挙前に協定を結び、選挙戦に臨んでいます。日本維新の会も今回、地域政党と連携し、各地で地域政党関係者を擁立していますが、これも共闘ということができるでしょう(4)。実は政党の共闘は、日本でもありふれていることなのです。

2.なぜ野党は共闘しているの?


 ではそもそもなぜ野党は共闘を始めたのか。発端は2015年にさかのぼります。
 2015年夏、テレビや新聞は、安倍政権が何としてでも成立させようとする安保法制の話題で一色でした。何とかしてこの憲法違反の法律を廃止しないといけない。こう考えた野党各党は、法案審議の中で協力体制をとることを考え始めました。そして遂に翌年2月、共産党が一部の参院選候補者を取り下げ、野党統一候補を作ることを提案(5)し、5月中には全32選挙区で野党候補の一本化に成功したのです(6)。これらの動きは、安保法制に反対する学者やデモに参加した市民により結成された「市民連合」にも支援されました。しかし2016年7月の参院選の結果は11勝21敗。2013年参院選での与党29勝という「惨事」を防ぐことはできたものの、中々思う通りにはなりませんでした。

 2017年の衆院選でも共闘は実施される予定でした。しかし民進党が突然、小池都知事の希望の党に合流する方針を示すと、共闘体制は激変します。共産党はこれまで進めてきた民進系候補者との選挙協力の白紙化を表明(7)。その後結党された立憲民主党とは協力することになりました(8)が、自公vs希望vs立憲・共産・社民という構図に変化し野党は分裂、政権交代どころの話ではありませんでした。新聞各社の試算によると、もし全選挙区で野党が候補者を一本化できていたならば、野党はさらに238選挙区中60選挙区以上で勝利をおさめることが出来たそうです(9)(10)。

まとめ


 2016年のように今回の参院選も、野党は一人区での一本化を完了し、複数区でも候補者調整が一部進んでいます。こういった野党の戦略によって、これまで楽勝だった自民党が、もしかしたら苦戦をするかもしれません。どちらを支持するにしても、これまで以上に皆さんの一票が結果を左右する選挙になります。自分の一票で情勢なんて変わりっこないと思わず、JAPAN CHOICEを使って是非投票へ!


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【参考記事】
(1)朝日新聞「安倍首相、在任日数歴代3位 伊藤博文に並ぶ2720日」(https://www.asahi.com/articles/ASM6633ZMM66ULFA00H.html)2019年6月6日
(2)産経新聞「野党統一候補なら1人区17勝 次期参院選で試算 自民単独過半数割に」(https://www.sankei.com/politics/news/180109/plt1801090009-n1.html)2018年1月9日
(3)市民連合「政策合意書」(http://shiminrengo.com/archives/2565)2019年6月6日
(4)朝日新聞「維新・松井氏『地方が望む政治を』 地方の連携アピール」(https://www.asahi.com/articles/ASM6C4VTTM6CPTIL00V.htm)2019年6月11日
(5)日本経済新聞「野党共闘へ半歩前進 参院選、5党協力合意」(https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H55_Z10C16A2PP8000/)2016年2月20日
(6)日本経済新聞「参院選1人区、野党が一本化完了 佐賀で共産取り下げ」(https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS31H4O_R30C16A5PP8000/)2016年6月1日
(7)毎日新聞「4野党共闘白紙、共産と社民は協力」(https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170929/k00/00m/010/084000c)2017年9月28日
(8)産経新聞「共産など野党3党 241選挙区で候補一本化」(https://www.sankei.com/politics/news/171007/plt1710070006-n1.html)2017年10月7日
(9)産経新聞「衆院選試算 野党一本化なら64選挙区で逆転勝利 自民、薄氷の勝利」(https://www.sankei.com/politics/news/171030/plt1710300006-n1.html)2017年10月30日
(10)毎日新聞「衆院選試算 立憲・希望一本化なら…自民東京8現職落選」(https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171104/k00/00m/010/134000c)2017年11月3日


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