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ドアノブ、近い。

トイレのドアノブが近すぎる。

この一文で笑えるのが、私と私の兄とカレだけだという事実が勿体無いので、ここに写真を残しておきたい。

近〜〜〜

この写真は現在、私とカレが借り暮らしをしている祖母宅2階にあるトイレのドアノブである。

祖母宅は築四十年以上の古家で、七年ほど前までは兄が今の私たちのようにこの2階を使っていたが、上京のため引越した。
祖母はここ数年で足を痛め、二階へと続く急な階段の登り降りに不安を覚えている。よって、このまま空き家と化すかと思われていたが、そこにハイエナのように目をつけたのが私たちだ。

父と母が住む実家の部屋では得られない静かなプライベート空間を、感謝の気持ちを持ってお借りすることにした。

新しい住処に暮らし始めて数日、私とカレはこのトイレのドアノブに、自分たちの忍耐を試されることなった。

写真左側のタイルの部分、これは壁だ。
この壁とドアノブの隙間は1センチもない。近い。

近すぎて、わざわざタイル側の壁がドアノブ型にくり抜かれている。
無駄な手間がかかっている。

このドアノブは、通常のドアノブ通りにギュッと握ろうとすると壁に指が挟まって回すことができない。だから私は親指と人差し指でつまむ。

2本の指だけでドアノブをくるっと回して、あとは急いで脱出する。
指の力だけで長時間ドアノブを回し切った状態にするのは、かなりの指力(ゆびりょく)が必要だから、急ぐ。すごく緊張感がある。
脱出する時の気分は、さながら昔テレビでやっていた謎解きバトルTORE!のゲームだ。あの、壁が両端から迫ってくるやつ。
わかる人どれくらいいるんだろうか。

ともかく、この部屋に住んで初めて、”ドアノブは壁に近すぎると回しにくい”ということを知った。これも学びか。

こういう、やや不便という設備は絶妙に面白い。
ドアノブがやや不便というだけで、毎回のトイレがちょっとしたスリルアトラクションになっている。
”今日こそこのドアノブが回せなくて、トイレから脱出できなくなったらどうしよう"という結構どうでもいスリルが日常の中で味わえる。
まさにTORE!

しかし、私の経験上、この面白さは人に伝わらないことが多い。
私がヘラヘラ、この話を誰かにしても大抵の人が心配そうな顔をして「そんな不便なの、嫌だわ。」と言うだけだ。
一緒になって笑って欲しかっただけなのに。

でも、それってちょっと勿体無いと思う。
部屋の中に一つくらいは不便なものがあったほうが、ちょっと面白い毎日が過ごせるのに。毎日アトラクションに参加できるよ。

よかったら皆さんのご家庭にある使いづらいものがあったら、見せてみて欲しい。
じわっと内側から笑える身内ネタっぽい不便話を、内輪のネガティブな要素としてだけ考えるより、笑い話に消化しよう。
そうすれば、家の中の嫌な部分もそのまま、ちょっと好きになれるかも。


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