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徒歩とバスによる大阪市営渡船8か所巡り

かつて「水の都」と呼ばれた大阪にはたくさんの運河が作られ、橋がない場所では渡船が利用されてきました。今ではその多くは架橋されたり、運河が埋め立てられたりして姿を消しましたが、依然として8か所の渡船が大阪市によって運営されています。運賃は無料で、徒歩または自転車にて利用が可能です。

ネット上には、自転車で大阪市の渡船巡りをしてみたというような記事がいくつかみつかります。しかし、私は自転車よりも徒歩のほうが好きなので、

  1. 徒歩と公共交通機関だけを使う

  2. 1日で8か所の渡船全部に乗船する

  3. 同じ渡船には二回乗船しない

  4. 休日昼間にめぐることを前提とする

  5. できるだけ短時間で巡る

というルールでルートを作ってみました。

8つの渡船に全部乗ることのできるルート

以下、作成したルートに従って渡船巡りをしてみた記録です。


JR桜島駅から天保山渡船場へ

まずは大阪環状線西九条駅からゆめ咲線に乗りかえ。USJに向かう浮かれ気分のカップルや親子連れの波に流されるまま、電車に揺られること数分で桜島駅に到着(註)。桜島駅の前にはUSJ客目当てのホテルがあるものの、少し歩けばいきなり静かな埋め立て地の工業地帯。10分も歩けば天保山渡船場に到着します。
(註)「浮かれ」「波」「流され」「揺られ」はすべて船の縁語

休日昼間は毎時0分と30分の時間当たり2本の運行なので、時間を合わせて訪れるとよいでしょう。なお、8か所の中でこの天保山航路が、最も長い距離の航路となります。

渡船場からは天保山の観覧車がよく見えます(今回写真撮り忘れたので2016年の写真です)

天保山渡船場から甚兵衛渡船場まで

かつての日本一低い山「天保山」を見学したのち、ハーバービレッジバス停を目指します。

仙台にある日和山に日本一低い山の座を明け渡したという説もありますが

休日昼間なら、88番大阪駅前行バスが1時間に5本程度運航していて便利でしょう。天保山ハーバービレッジバス停から夕凪バス停に移動したのち、徒歩15分ほどで甚兵衛渡船場に到着します。

こんな感じの看板と、奥に見える船の絵を目印に進みます

なお、使えない豆知識ですが、googleマップによると、ちょっと前(少なくとも2019年8月)にはこの看板は「甚兵衛衛渡船場」という誤植があったようです。

もっと前は味わい深いひらがな表記。

2014年3月の甚兵衛渡船場

渡船の発着は毎時0分、15分、30分、45分。あまり時間を気にせずに訪れても、それほど待つ必要がありません。

福島区から大正区にわたります

甚兵衛渡船場から千歳渡船場まで

次の千歳渡船場までには、20分くらい歩きます。一区間だけバスに乗ることも可能ですが、あまり所要時間が変わらないのでメリットは感じられません。

千歳渡船場マーク

千歳渡船場は、すぐそばに千歳橋があるために船に乗らずとも対岸に渡ることは可能です。しかし、この千歳橋は海面から高さ28mもあって徒歩や自転車では不便なため、渡船が廃止されずに残っています。ただ、千歳橋は高いだけあって橋上からの景色は良いので、渡船で対岸に渡って橋を渡って帰ってくるというウォーキングを行う方もいるようです。

渡船から見る千歳橋

なお、この千歳渡船場は、毎時0分、20分、40分の20分間隔の運行です。

渡船場桟橋周辺

千歳渡船場から船町渡船場まで

千歳渡船場から歩いて10分ほどの鶴町4丁目バス停から、バスで鶴町1丁目に向かいます。72番、87番以外のバスはすべて鶴町1丁目を経由し、バスの本数も多いのでそれほど待つ必要はないでしょう。鶴町1丁目バス停から歩いてすぐに船町渡船場に到着します。

船町渡船場入り口

船町渡船場は木津川運河を横断するのですが、このあたりに来ると住宅街というよりも工業地帯といった雰囲気が色濃くなります。船町渡船場も千歳渡船場と同じく毎時0分、20分、40分の20分間隔の運行。

船町渡船場桟橋。対岸がすぐそこに見えます

船町渡船場から木津川渡船場まで

船町渡船場から木津川渡船場までは歩いても15分くらいの距離なのですが、今回はバスを利用しました。木津川運河と木津川に挟まれた船町地域は完全に工業地帯となっています。とくに、中山製鋼所の茶色く錆びた配管が間近に見られて迫力があります。

中船町バス停からぐるぐると渦を巻く新木津川大橋のふもとを南に進むと、すぐに木津川渡船場に到着します。

新木津川大橋への登り口
木津川渡船場入り口

新木津川大橋も千歳橋と同じく、徒歩でも渡れる橋なのですが、徒歩で渡るにはこのぐるぐるを高さ46mまで登る必要があります。これは徒歩や自転車には大変なので、この渡船は廃止されずに運航されているそうです。
しかし、この木津川渡船ですが、昼間には本数が極めて少なく45分に一本しか運航されず、大阪市渡船の中では最も過疎ダイヤとなっています。おそらくは、上記の工業地帯への通勤客が主な利用者なのでしょう。周りには何もないので、ちゃんと時刻表を事前に確認してから訪れることをお勧めします。

木津川渡船場の時刻表
木津川渡船場からの眺め。木津川を渡り、大正区から住之江区に移動します。

木津川渡船場から千本松渡船場

今回の渡船巡りにおいて、この区間が一番の難所です。バスを使っても2km以上歩く必要があります。しかも最寄りのバス停である柴谷橋西詰からは、休日昼間は毎時59分の1時間に一本しか運航されていません。
バスを利用しない場合は3km以上歩くこととなるため、いずれにせよそろそろ疲れてきた足にとっては結構厳しい道のりです。
とにかく、バスに乗っても乗らなくてもそこそこの距離をひたすら歩き、ぐるぐると回る千本橋のふもとにある千本橋渡船場を目指します。例によって、この千本橋も徒歩で渡ろうと思えば渡れますが、やはりすごく高くて徒歩や自転車では不便です。

渡船上から見る千本松大橋。ぐるぐるです。

なお、ここから先はすべて毎時0分、15分、30分、45分の15分に一本の発着となります。待ち時間を気にしなくていいのはよいことです。

大正区側渡船場からの眺め。再び木津川を渡り、今度は西成区から大正区へ。
千本松渡船場の大正区側入り口は、野球のグラウンドの横を通っていきます

千本松渡船場から落合下渡船場

千本松渡船場から、木津川沿いに立ち並ぶ工場や倉庫を横目に北に向かって歩きます。バスに乗ってもあまり時間が変わらないので、我慢して歩いたほうがよいでしょう。
なぜか、落合下渡船場では、台船上からの撮影を控えるように注意する看板が立っていました。ここまでの渡船ではそんな看板なかったのですが…。だれか船から落ちたり、スマホを落としたりしたのでしょうか。

撮影禁止看板

再び木津川を横断して、大正区から西成区に渡ります。前述のとおり、15分に一本の発着。

落合下渡船場からの眺め。そろそろ日が傾き始めています

落合下渡船場から落合上渡船場

木津川沿いの工業地帯を北上すること10分で、今度は落合上渡船場に到着します。大正区側は工業地帯と言っても民家が近くにありましたが、西成区側は、生コン工場や残土置き場などしかなく、本気の工業地帯です。
なお、近くには大阪市内にありながらも乗客が極端に少ないことで有名な南海電鉄木津川駅があるので、興味のある方は寄り道してもよいでしょう。

木津川駅ホーム(2014年撮影)

このあたりまで来ると疲れて来てあまり写真を撮っていなかったりしますが、ついに最後の渡船です。

落合上渡船場入り口

落合上渡船場からは、木津川水門がよく見えます。木津川水門は台風などの際に大阪湾からの高潮を防ぐ役割を持っていて、防御時にはバイザーゲート方式といってアーチが横に倒れることで水流を閉鎖する仕組みになっています。この木津川水門、老朽化のために更新工事がなされていて、しかも次に作られる水門はバイザーゲート方式ではないそうなので、このきれいなアーチ形状はあとしばらくで見られなくなるようです。
なお、ここも15分に一本の発着。待ち時間はほとんどないでしょう。

渡船場から見る木津川水門

落合上渡船場から大正駅へ

これで全8か所の渡船にすべて乗船しました。おつかれさまでした。
帰りは、大正駅が便利だと思います。渡船場に隣接するちょっと大きめの千鳥公園を横切り、大正区役所前バス停からバス大正橋バス停まで移動、歩いてすぐにJR環状線または地下鉄長堀鶴見緑地線の大正駅に到着します。
大正区役所からは、ほとんどのバスが大正橋を経由するのであまり待つ必要はなさそうです。(ドーム前千代崎行きバスは、すべて大正橋を経由します。)

総歩行距離はおおよそ10km、順調にいけば5時間くらいで周遊できると思います。どなたかの参考になれば幸いです。

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