移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)

日本に暮らす移民・移民ルーツをもつ人びとの権利と尊厳の保障を追求し、誰もが安心して自分…

移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)

日本に暮らす移民・移民ルーツをもつ人びとの権利と尊厳の保障を追求し、誰もが安心して自分らしく生きられると同時に、多様性を豊かさと捉える社会を目指して活動するNGOです。情報誌(Mネット)の記事を中心に紹介・販売をしていきます。HP: https://migrants.jp/

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近年における「ヘイトクライム」の現状とその課題ーー求められる反差別法の整備ーー

近年における「ヘイトクライム」の現状とその課題——求められる反差別法の整備 外国人人権法連絡会/市民セクター政策機構・客員研究員瀧大知 昨今、国内でも外国人/民族的マイノリティに対する「ヘイトクライム」(差別的動機に基づく犯罪)が頻発している。特に直近の事件は様々な面で今日的な社会状況を表象している。本稿では主に2020年以降におけるヘイトクライムの実態と特徴、そして筆者が所属する「外国人人権法連絡会」(以下、「連絡会」)の取り組みを中心に紹介しつつ現状と課題

    • 特集 教育行政の在日外国人教育「方針・指針」を継承する

      総論:忘れられた20世紀の「反差別」移住連子ども若者プロジェクト・元高校教員高橋徹 教室の中の排外主義を嗅ぎ取る力はありますか? あるベトナムルーツの女性から電話があった。「先生、日本国籍に変更したいのだけれど、やり方を教えて」。彼女は出産をひかえていた。小学校時代は、カタカナの名前ですごしていて、執拗ないじめに遭った。中学時代にその体験を、さらにベトナム人としての自分を確認するように、生きている自分を語ってくれた。高校時代に日本風の通称名を名のるようになる。出産をひかえ

      • 特集「移民・難民とアート」について

        倉敷芸術科学大学 川上幸之介 移民、難民とアートという組み合わせを聞くと、一般的には繋がりが想像しづらいかもしれません。この接点を振り返ると、絶対王政に対して新興の産業資本家を中心とする市民階級が政治的・経済的な権利を獲得し、近代資本主義社会への道を開いた市民革命と、植民地拡張と紡績工場を基盤とした経済の中で胎動し、商品の大量生産を可能にした産業革命へと遡ります。それは、この二重革命によってもたらされた階級、性差といった問題、それ以前に資本主義の勃興と共に始まった奴隷制に

        • 【オンライン参加者用】シンポジウム「技能実習制度・特定技能制度の見直しから共に生活する移民社会を考える」

           技能実習制度と特定技能制度で働く外国人労働者の数は45万人を超え(2022年12月末現在)、多くがこの社会を支える産業で働いています。しかし、技能実習制度は「奴隷労働」であるとして国際社会からの批判を受け続けてきたように、この制度下では労働問題や人権侵害が多く発生しています。  これらの問題は、生活者(人間)としてではなく「労働力」としてのみ受け入れようとする制度構造の歪みが顕在化したものです。しかし、2022年11月に設置された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関す

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        • 【無料公開】入管長期収容問題を考える(2020.4)
          8本

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          鳥井一平(移住連共同代表理事)インタビュー「外国人労働者が働く現場でいま起きている問題とその背景——その場しのぎの在留資格設計がもたらした混乱・差別」

          政府有識者会議での議論に欠如している重要な観点 いま外国籍の労働者を社会は求めているが、それは労働力としてだけでなく、地域社会の一員としての参加の求めでもある。しかし、政府の検討会や研究者の議論ではその観点が欠落している。 この社会では一般的に企業の社長は社会的地位が高いが、それは人を雇用することで地域社会に貢献しているということだろう。企業が地域を支配しているという企業城下町さえある。しかし、実際は、企業だけが地域をつくり出しているのではなく、その企業で働いている一人

          鳥井一平(移住連共同代表理事)インタビュー「外国人労働者が働く現場でいま起きている問題とその背景——その場しのぎの在留資格設計がもたらした混乱・差別」

          【無料公開】「ハーフ」になる日

          「ハーフ」になる日 とよなか国際交流協会 三木 幸美  私の名前は、名前からだけでは外国にルーツがあると一目でわかりにくい。人前で話をすると、ごくたまに「ハーフなのに日本の名前ですね」「名前にフィリピン名を入れた方がどちらも大切にできると思う」と言われることがある。逆に母の姓のPanggayan (パンガヤン)を名乗ると「こんな名前なのにすごく日本人ぽいですね!」「どうしてわざわざ入れるんですか?」と言われたりもする。私の正しい名前は何なんだろう、私は自分を何と名乗るべき

          「難民・移民フェス」座談会

          M-net 2023年6月号の特集は「地域社会で暮らす難民」です。特集のなかから、「難民・移民フェス」座談会を公開します。特集の残りの記事の詳細は記事の末尾を参照してください。(本記事は、難民・移民フェスのnote、渡邊さゆりさんのnoteでも同時公開されています) 「難民・移民フェス」は、2022年の初頭にイラストレーターで文筆家の金井真紀さんと金井さんの友人、筆者が、仮放免者のCさんが作っているチリ料理のエンパナダを食べながら話した会話をきっかけとして始まった。周知のよ

          定年退職できない人々

          移住連運営委員 稲葉奈々子 高齢者福祉の対象外の移民たち  高齢者福祉を担うのは誰か。社会保障制度は、しばしば、成熟した福祉国家の「北欧型」と、企業と家族が福祉を担う「中欧・南欧型」、市場原理に福祉サービスを委ねる「アングロサクソン型」に分類されてきた。日本はといえば、「中欧・南欧型」と「アングロサクソン型」の中間あたりに位置すると考えられる。  いずれの場合も、福祉の担い手として、政府、家族、企業が想定されているわけだが、どの「型」であっても、移民労働者が福祉の現場で大

          「食」の視点から何が考えられるか

          移住連編集部(和光大学) 挽地康彦 本特集のねらい 本号の第2特集では、「食と移民」をテーマに据えました。本誌で「食」の特集を設けるのは初めての試みになるかと思います。すでに食のグローバル化や多様化が進行して久しい時代にあるとはいえ、考察の切り口そのものは新しく、手探りする中で企画したというのが正直なところです。したがって、先の話になりますが、このテーマは本号で完結するものでなく、今後も幾度か設定されていくのではないかと想定しています。 さて、そうした前提を踏まえながら

          「食」の視点から何が考えられるか

          コミュニティ通訳から考える移民社会—日本は住みたいと思える国なのか

          武庫川女子大学/ NPO 法人多言語センター FACIL 吉富 志津代 はじめに―コミュニティ通訳―  コミュニティ通訳とは、日本に暮らす日本語の理解の不十分な住民が直面する言葉やコミュニケーションの壁をなくすための通訳で、主に「生活上の対話」の場面で「必要な情報」を伝える役割とされ、具体的には、市町村などの役所、学校、医療機関、支援団体などで必要とされる。そして、その役割のほとんどを、草の根レベルの市民の善意に依存しているという現状がある。この特集であげられている事例

          コミュニティ通訳から考える移民社会—日本は住みたいと思える国なのか

          「避難民」という言葉の意味するもの — 戦争と難民をめぐる法と政治

          明治学院大学 阿部浩己 人道の発露? 2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略は、半年余りを経ていまだ終息せず、市民の惨禍は増す一方である。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、8月15日時点で、国外に避難した者の数は1千万を越える。この大規模な緊急事態に対する国際社会の取り組みは、これまでになく手厚い。日本もその例外でなく、たくわえられていた人道主義のエネルギーが一気に解きはなたれたかのような情景が広がっている。 保護を必要とする人々に庇護の

          「避難民」という言葉の意味するもの — 戦争と難民をめぐる法と政治

          コロナ禍の移民・難民の生きる権利を保障するために —私たちの処方箋

          外国人医療・生活ネットワーク 大川昭博 今回の特集では、コロナ禍で深刻化した移民・難民の医療問題をとりあげた。私(大川)自身も移民・難民の医療問題にかかわって30年以上になるが、現下の状況は、過去にもなかった最も深刻な状況下にあると認識している。本特集を通して、コロナ禍で移民・難民の医療問題が深刻化した背景を考察し、解決のための処方箋を提示してみたい。 〔編注:本特集の個別記事で〕沢田が指摘する通り、日本では、医療費の支払い能力を理由とした診療忌避を行ってはいけないと医師

          コロナ禍の移民・難民の生きる権利を保障するために —私たちの処方箋

          外国人労働者政策の転換期を迎えて

          自由人権協会 旗手 明 2022年は技能実習法が施行されて5年目にあたり、制度見直しの時期となっている。すでに古川法務大臣が、年頭所感で技能実習&特定技能の制度見直しに向けて決意表明し、法務大臣勉強会も開催されている。2月15日には、経団連が「2030年に向けた外国人政策のあり方」という提言を発表し、日弁連も外国人労働者受入れ制度に関する意見書を4月27日に公表した。このほか、出入国在留管理庁と厚生労働省が、この1月から全国の実習生計約2千人を対象に、来日時の費用負担等に関

          外国人労働者政策の転換期を迎えて

          鳥井一平 移住連代表理事インタビュー: 「法務大臣勉強会」所感と技能実習廃止全国キャラバンに向けて

          全国キャラバンの詳細・日程 → https://www.end-slavery.org  移民政策は地球的規模の課題古川禎久法務大臣には、現在の外国人技能実習制度そのものが法の正義に反している、受入制度を検討するのであればまず廃止をしてからだ、と伝えました。実際には、技能実習生と留学生がそれぞれ日本の産業の現場を労働者として担ってきています。政府が「受入れ」と言うのであれば、どういう労働者なのか、労働者は生活者でもある、ということも大臣に伝えました。そもそも移民政策は地球的

          鳥井一平 移住連代表理事インタビュー: 「法務大臣勉強会」所感と技能実習廃止全国キャラバンに向けて

          入管法をめぐる最近の動向と真の法改正に向けて

          全国難民弁護団連絡会議・弁護士 難波 満 はじめに2021年に政府から通常国会に提出された入管法改定案(以下「政府案」という。)は、3月に発生した名古屋入管でのウィシュマさん死亡事件を受け、メディアやSNSを通じた多方面からの反対の声の高まりにより、廃案となった(注1)。 しかし、現行の入管法をめぐっては、入管収容施設における長期かつ恣意的な収容、審査の独立性・専門性を欠く難民認定制度をはじめとして、直ちに改善されなければならない問題点が山積している。これに対し、法務省は

          入管法をめぐる最近の動向と真の法改正に向けて

          石橋みちひろ議員(超党派難民議員懇談会会長)インタビュー:あるべき難民等保護法と入管法改正を求めて

          昨年は、ウィシュマさんの事件などに象徴的に表れた入管収容問題が社会的にも大きな注目を集め、政府が提出した入管法改定案は廃案になった。現行の入管制度と、昨年の政府による改定法案の問題点について伺いたい。現行の入管法の問題点は、ごくシンプルにいうと外国人の方々を「入れない、居させない、追い返す」という建て付けであることだ。昨年政府が国会に出した改正法案の背景には、2年前の大村でのナイジェリアの方の餓死事件、それ以前からの被収容者の方々の大規模なハンガーストライキなどに象徴される長

          石橋みちひろ議員(超党派難民議員懇談会会長)インタビュー:あるべき難民等保護法と入管法改正を求めて