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【文字迷宮】<読書感想文>

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読書感想文。心に残った言葉を手書きで集めてみました。
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記事一覧

【文字迷宮】「旅涯ての地」坂東眞砂子

【文字迷宮】「旅涯ての地」坂東眞砂子

「人生は旅である」とはよく言われることですが、その舵を切ることはなんと難しいことでしょうか。
船を操縦しているつもりが、気づけば木の葉のように流され、大きなうねりを前に呆然と佇む。
そういうことが度々起こり得るように感じます。

東から西の果てへ、さらに彼方へ<あらすじと感想>

時は13世紀。
主人公、夏桂は東の果てで裕福な商人の子として生まれました。けれど父親が罪を犯し、彼を除く家族は処刑され

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【文字迷宮】「猫を抱いて象と泳ぐ」小川洋子(読書記録)

【文字迷宮】「猫を抱いて象と泳ぐ」小川洋子(読書記録)

「猫を抱いて象と泳ぐ」小川洋子 読了

少年の繊細さ、包み込む回りの人々、美しい童話のような世界に浸って読んでいましたが、唐突に社会の闇を突き付けられた時は呆然としました。
いや、闇というか、現実なのかな。
美しいその「海底世界」は何によって支えられているのか。

ー決して綺麗事だけではない世界。

静かな海底世界を失ったリトル・アリョーヒンは、海面に浮きあがり、自分にチェスを教えてくれた場所、動

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【文字迷宮】貫井徳郎「神のふたつの貌」(読書感想文)

【文字迷宮】貫井徳郎「神のふたつの貌」(読書感想文)

少年は蛙の四肢を石で叩き潰した。死にゆく蛙は、痛みを感じているのか? きっと死の恐怖など感じてはいないだろう。
痛みのないものに、神の救いを見ることは出来るのか?

牧師の息子、そしてそのまた息子が主人公のお話です。
父の教えに従い、神の存在を疑ってはいない。神はいる。しかし姿は見えず、声は聞こえない。
神の救いを信じえない自分の心が悪なのか。

神の救いを求める心、自分自身の信念・正義が周囲の人

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