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「あの時こうしていれば」にならないために

大学3年生。就職活動が始まりだした頃、「履歴書の写真はどこで撮るか問題」について、私たちはざわついていた。街中にあるようなスピード写真はNG。じゃぁ、街の写真屋さん…?どこで写真を撮るかについて、みんなで情報交換をしていた時期があったのだ。

私の時代は、「伊勢丹で撮った個人写真は写りが良くて、就活に有利らしい」という噂が有力だった。

けれど、大学生にとって伊勢丹の写真館なんて超高級。それって就活にどのくらい有利なんだろう。「ディズニーランドにカップルで行くと別れる」並みに根拠のないジンクスを、信じるべきか、どうするべきか、あの頃は本気で悩んでいた。

今日、厄除けで有名なお寺へ厄払いに行ってきた。今年は本厄の中でも一番悪い、大厄の年だ。19歳の頃は厄年なんて考える暇もないくらいに過ぎ去っていたのに。今年は1月からあまりいい状態が続いていないので、仏にすがる思いで厄除けに訪れた。

お札の受け取り書を書いていると、お札に合わせた金額欄が書いてある。あれ、と首をかしげる。

ネットで読んだ時は「お布施代」として気持ちを包むと書いてあったぞ。「相場は5,000円」とあったから、きちんと封筒に入れて5,000円持ってきたけど、どうやらそれは違うみたいだ。

金額欄には3,000円のお札もあった。どっちにしよう。3,000円のお札か、5,000円のお札か……。ペンを持ったまま固まっていたところでふと、冒頭の就活時代の写真の話を思い出したのだった。

あの時、結局私は伊勢丹の写真館で撮影をした。伸ばし途中の前髪を無理やりワンレンにし、少し緊張して撮影したらなんだかイモっぽい表情になった。けれどさすが伊勢丹。雰囲気はほわんとやわやかく、けれどどこか凛々しさもある写真に仕上げてくれた。

伊勢丹を選んだ理由は、友達のこんな一言だった。

「正直、どこで写真撮ろうが違いってあんまりないと思うんだよね。大事なのは心のもちようで、履歴書が通らなかった時に『もしかして安い写真を使っちゃったから、イメージがあんまり良くなかったかも…?』ってならなければどこで撮ってもいいんだと思う。 ダメだった時に、『やりきったけどダメだった』って言えるように準備をするのが一番大事なんだと思うよ

厄払いの護摩炊きを終えて、お札を受け取った。周りにいた人たちより一回り大きい、5,000円のお札だ。

何か嫌なことがあった時に「あのとき2,000円ケチったから、ちゃんと厄払いできてなかったのかも…」なんて悩むのは嫌だよなぁと思い、用意していた5,000円をしっかり使って厄除けしてきたのだ。

就活時代に友達から言われた通り、要は心の持ちようなだけかもしれない。伊勢丹の写真を使っても落ちる企業は落ちたし、5,000円払ったからと言って嫌なことが全く起こらなくなるかと言われると、そんなことはないだろう。だからこそ、「ここまでやって、ダメだったらしょうがない」と思える状況を作ることが、その時自分が出来る最善の策なのだろうな、と思う。


同じお寺で引いたおみくじは大吉だったし、出来ることは全部やった。あとは日々を楽しく生きていくだけ。

両手でしっかりお札を持ちながら、そんなことを思って静かに意気込んだ。

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