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記録ではなく記憶に残る、家族の撮影。

先週末、満開の桜と共に撮影をした。まだ東京では開花していない桜が満開のスタジオ。淡いピンクとうっすらピンクがかった白の桜が見事に咲いていた。

今年、息子が卒園し、小学生になる。七五三の撮影はなんとなく気にしていたけれど、卒園・入学写真は考えたことがなかった。仕事をきっかけに知ることになったこの撮影は、すぐに予約が埋まってしまうという。12月の予約開始早々に無事予約を完了し、約3ヶ月待っての撮影だった。

クッポグラフィーの撮影がどんな撮影なのかはある程度把握していた。ただ、情報としてわかっていたつもりだったんだと、終わってから気がついた。フォトグラファーに撮ってもらうこと、家族写真を撮ること、家族写真がどんなものなのかを、心と身体の全部で感じ、今は少しわかったような気がしている。

かくれんぼから始まった撮影。

撮影中、フォトグラファーのこまちさんは、私たち家族全員にたくさんの質問をしてくれた。答えに窮して固まったりする様子にもツッコミあいながら、楽しくてずっとずっと笑っていた。

すると、撮影の途中で、私たち夫婦に「パパにとって(ママにとって)子どもたちはどんな存在ですか?」と質問を投げかけてきた。パパは即答で「天使」と、私はなんだろうと考えながら、やっぱり「宝物」と答えた。

しばらくして、こまちさんが撮影データを取り出すために席を外す。すると、息子がぴょんぴょん飛び跳ねながら私に近づいてきた。「さっきこまちさんに話してた、パパは天使で、ママは宝物っていうの、嬉しかったな」ちょっぴり照れながら、ニコニコ顔で言っている。「ああ、今日ここに来て本当によかった」と思った瞬間だった。

パパに甘えている娘の手。

毎晩寝る前にギュッと抱きしめたり、大好きと伝えたり、愛情表現はしていたつもりだった。でも、5歳、6歳という年齢になって、いろいろなことが分かるようになってきた子どもたち。期せずして、好きという気持ちの先にある、大切な存在であることを初めて伝えることになった。こまちさんのおかげで、私たちが伝えたかったこと、伝えなくてはいけなかったことを伝えることができた。

翌日には、いつもどおりの日常が過ぎていく。相変わらず叱られていても「パパは天使、ママは宝物」と、合言葉のように話しているふたり。ついつい笑ってしまう。私たちにとってこの撮影は、子どもたちにお守りを手渡すことができた日。この日撮ってもらった写真は、これからずっと、この出来事を思い出させてくれるのだろう。

そう、私たち家族の記録ではなく、記憶に残る写真を持つことができた日でもある。

息子がランドセルを持つ手。

ランドセルを持つ手、ランドセルを背負う後ろ姿、息子の襟元を直しているパパの手、全員で桜の花びらを拾っている様子。

メインではない余白のような写真に、この撮影の空気感や、景色、会話、気持ちが詰まっている。きっと私たちにしかわからないけれど、写真を見れば、ああ、この時こんな感じだったよね、って思い出せる。余白が余韻を残している。家族撮影は何度かしてきたけれど、これは初めて感じたことだった。

ランドセル試着の時から、随分背が伸びたんだね。

ランドセルを持つ手がぎこちなかったり、襟元を直すパパの手がとても優しかったり、ランドセルが意外とぴったりサイズだと気づいたり。花びら拾いもみんなで一緒に頑張ったよね。

すべて、余白の写真が教えてくれて、残してくれていた。撮影中には気づかなかったことが、データにはたくさん溢れていた。

みんなで桜の花びら集め。全員一生懸命。

写真を見ながら、ふと、こまちさんって和食の料理人みたいだな、と思う。素材を見て、素材に合わせて下ごしらえをしているようだ。私たち(素材)をコントロールして合わせさせるのではなく、私たちが美味しく食べられるように、いいところを見つけてきれいに整えてくれる。フレンチや中華のように、足したり掛けたりするのとは違う。どちらかというと和食のようにシンプルに。

いつも、彼女の写真には透明感があると感じていた。透き通っていて真っ直ぐで。そして、まろやかで優しい。

息子の襟元を直すパパの手。

家族写真ってなんだろう。そんなことを考えたこともなかった。とりあえず、撮っておこうか。今までだったら、そんな風に、なんとなくだった気がする。

クッポグラフィーに出会ってから、それが変わった。でも、正直、まだよくわかっていなかったと思う。この日、ようやくみんなが私に伝えようとしていた、真ん中にあるものを受け取ったように思う。

家族写真は、その時の記憶を呼び覚ましてくれて、なんだかほっとして、安心する。自分の中にあるものではなくて、外側から自分たちを捉えることができるもの。

今朝、少し早めに目覚めた息子が、私のベッドに潜り込んできた。「あー、気持ちいい」と言って、ぬくぬくしている。私の体温も少しは残っていたのかもしれない。でも、よく見ると、なんだかクンクンしている。匂いを確かめながら、布団にくるまっている。

そうか。母親の匂いに似ているのかもしれない。

嗅覚だけが、すべての五感の中で、記憶を司る海馬という脳の部位に働きかけると言われている。匂いから記憶が蘇ってくることは、経験したことがある。

赤ちゃんは、母親の匂いを嗅ぎ分けて、母親を認識する。出産した直後に素肌にそのまま赤ちゃんを抱き抱えるのも、赤ちゃんが安心するからだ。

家族が心安らかに、毎日を過ごせるように。
家族写真はきっと、その道標になる。

撮影場所 : クッポグラフィー駒沢公園






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