おじさんの佇まいを感じるブランドMiiro

割と小さい頃から、一人で過ごしているおじさんを見ているのが好きだった。
父方の祖父母の家は小売の酒店で、徒歩数分で行けた。隣には祖母がやっているホルモンやちゃんぽん、皿うどんを出す食堂、さらに隣には叔母がやっているスナック。
この三店舗が横断できる謎の店に私は虜になった。
酒店だけど角打ちも兼ねていたので、本当にいろんなおじさんがやって来た。

当然、酔っ払いを多く見る機会が他の子供よりは断然多いわけだ。
毎日トラクターで乗りつけて朝25度の焼酎を水のように飲み、働き、また帰りに寄ってコップ一杯のむおじさん、機嫌良さそうに喋る人、暴れる人、一人で黙って飲む人、嫌な人、

悲哀のある、それでいて少しユーモアのある佇まいが好きだった。おじさんの孤独で楽しげで独りよがりなら持つ佇まいをぼーっと見ている子供だった。

40も半ばを過ぎた。おばさんという年齢だが、しっくりこないのは自分のこのおじさん感にあると思う。

三つ揃いのスーツ、アームトップ、ヒゲ、伊丹十三、柳原良平のアンクルトリス、クラーク・ゲーブル、石坂浩二、鬼平犯科帳、大竹まこと、小林薫、ライカ、万年筆で書いた文字、活版印刷、幼少の頃から今も好きなもの。

どこかしら懐かしげな風情に、チャーミングなヒゲなんか見た日には心踊る。ウィスキーを飲んだり、葉巻を吸ったり、おじさんは様式美にいとまがない。
それでいて無駄な時間をやり過ごす。
そういう大人に憧れていた。
自分の時間を無駄にかまける人に魅力を感じた。
なんて贅沢な行為かと思う。

Miiroというブランドを昨年作った。
やはり私が何か作るとどこか男性的な感じが出ている気がしてならない。
例えば紐。
お茶の道具や陶器を木の箱で包む時などに使う真田紐。この紐に昔からダンディズムを感じていた。
さっぱりしていて主張しすぎず、紐としても丈夫で色取りもある。控えめなのに真田紐にしかだせないらしさもある。
これで何か作りたいなと思いブローチを作った。
簡単なものなのだけど、折り方によって様々な表情が出てくるのが面白くなった。

男性からこのブローチについて声をかけていただく事もあり、そんな方にはシンパシーを感じてしまう。

もちろん女性らしい華やいだ色味のものも素敵だと感じることもあるけど、芯の部分はこの真田紐みたいでありたいなと思っている。
私がこうありたいと思う、おじさんの佇まいをMiiroでもっとこの先、形として表現できたらなと思うこの頃。



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