大怪獣の「本当の」あとしまつ―大倉崇裕『殲滅特区の静寂 警察庁怪獣捜査官』感想

怪獣が一体出現することでどれだけ社会が動くのか、『シン・ゴジラ』で見せつけられた。

では、ウルトラシリーズのように毎週(ではなくても不定期に頻繁に)怪獣が出現するようになったら世界は、日本はどう変化するのか。

経済状況、政治体制、文化、生活スタイル……さまざまなものが変化するだろうが、それでも人はやがてその現象を日常の一部として受け入れ、利用するようになっていくだろう。政治に、ビジネスに、そして犯罪にも。

本作『殲滅特区の静寂 警察庁怪獣捜査官』はそんな、怪獣の存在がある意味日常と化した日本が舞台のミステリー。

怪獣そのものの謎を解き明かすのではなく、怪獣が当たり前に存在する世界が現実の世界とどう違うのかを丁寧に描き、その異なった世界で起こりうる犯罪の捜査を主軸とする。

荒唐無稽な設定を核に据えつつ、雰囲気は往年の刑事ミステリー小説のようなドライさ。その妙なリアルに、没入すれば、自分が「怪獣が当たり前に存在する日本」に暮らしているような気分に浸れるだろう。


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