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【不定期連載エッセイ①】天空剣士42歳は誰が推すのか

先日、初めて『参上! 天空剣士』(’90年)を観た。超能力で変身できるようになった桔梗月太郎(目黒祐樹)を主人公とした勧善懲悪時代劇だが、なんともトンチキな作品に出会った。これって一体どこの層に向けて作られたものなんだろう?

 

先ほど“観た”と書いたが、正確には普通の時代劇かと思って観ていたら目黒祐樹さんが急に変身して驚いた、というのが正しいところである。私の中で、変身しそうな人のリストに入っていなかったからだ。なぜそう思っていたかって? 言わずもがな「年齢」である。

調べてみたところ、桔梗月太郎の年齢設定は34歳。演じる目黒祐樹さんは放送当時の1990年で42歳。時代劇の扮装は若見えするといっても、変身ヒーローを演じるには充分高齢の部類に入る。

もっとも、近年は高齢のヒーローなんて珍しくもなんともない。2023年現在放送されている作品だけを見ても、『仮面ライダーギーツ』では数えきれないほどの“おっさんライダー”が登場するし、『王様戦隊キングオージャー』でカグラギ・ディボウスキ/ハチオージャーを演じる佳久創さんは32歳。『ウルトラマンブレーザー』でヒルマゲントを演じる蕨野友也さんは35歳。

2005年に当時33歳の細川茂樹さんが『仮面ライダー響鬼』で主人公を演じることが発表されたときはずいぶん話題になったものだが、もう30歳すぎて変身ヒーローとか(笑)と言われる時代ではなくなった。大人のヒーローは今や完全に市民権を得ている。

それにしても、である。

ちなみに『参上! 天空剣士』と同年に放送された主な特撮作品は『地球戦隊ファイブマン』、『特警ウインスペクター』など。どちらもメインの登場人物を演じる俳優たちは当時10~20代の若者だ。

変身する主人公、30分という放送枠、勧善懲悪の物語……おそらくはメインターゲットを子どもに想定して制作されたであろう『参上! 天空剣士』。このコンセプトなら、当然主人公も20代の俳優が選ばれると思うのは私だけだろうか。まして、30代のヒーローがほぼ存在しなかった1990年に。私が当時の目黒祐樹さんの芸能界でのポジションに詳しくないので予想外だと思っているだけだろうか。

ただ内容は、華麗で豪快な殺陣と、時代劇慣れした人だからできる余裕ある芝居でさすが目黒祐樹さん! と言いたくなる。

 だが、実年齢42歳が演じる34歳時代劇ヒーローに求められるものって、もっと別のところにあるのではないだろうか。変身しているのか着替えているのかギリギリわからないコスチュームがそれを一番物語っている。子供向けヒーロー番組の主人公は、どこかぶっ飛んだ虚構性がほしいものだ。

 この作品以来、ほとんど制作されていない時代劇ヒーローもの。そろそろ復活してほしい。

目黒祐樹さんのキャスティングについて、どなたかご存じでしたらぜひ教えてください。


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