牛の目に入ってみたら、そこは宇宙だった。

 <「ポトフも独身だったのか。」の続きです。>

 山もなく谷もない、とても淡々とした人生を送ったポトフ。彼の魂はアコさんの誘導に従い、私がヒプノセラピーを受けたときにイメージした1番最初のシーンへと帰って行った。小麦畑だ。傍らには優しい目をした黒い牛もいる。まだ催眠は続いている。

 アコさんが「ポトフは、自身の人生を振り返って、どうだったかしら?」と聞いた。

「淡々とした、大きな事件もなく終わった人生だった。何かを成すことはできなかったけど、それで良かったと思っている。」

「ポトフから現代の桜さんへ、何かメッセージはありますか?」

「…特にはない。」

「桜さんの人生の意味を教えていただけますか?どうして日本人の女性として生まれたのかしら?」

「何かをしないといけないようだが、「何か」についてはポトフにもわからない。」

そこまで話をしたとき、牛が私の方をじっと見ていることに気がついた。1回目のセッションでも私のそばにいた黒い牛。毛並みがとても美しくて、とても優しい目が印象的で。

あれ?目が普通の目じゃない?目の中に何かある・・・宇宙?惑星が見える?

「桜さんはどうしたいのかしら?」
「目の中に入ってみたいと思います。」
「わかりました。あなたの意識はとても自由なので、その牛の目の中に入っていきましょう。」

 (牛の目の中に入るとかちょっとSFだけど、催眠中だからなのか、その時はすんなり理解できて、本当にすーっと入った感じがあった。)

 牛の目の中に入ると、そこは宇宙だった。子どもの惑星の本とかにでてくる絵と同じ。遠くに惑星がいくつか見えている。私はそこにぷかぷか浮いている。ふわふわとして、とても気持ちがいい。

 周りを見回して見てみると、さきほど惑星だと思っていたのは、ガチャガチャのカプセルに入った胎児だと感じた。みんな、ほんわか光っていて、私と同じように、ふわふわと浮いている。

 前方に強い光が見えた。3人の人がその光の中にいる。3人とも白いローブを着ている。真ん中にはおじいさん、左側に銀色な輝く人、右側に金色に輝く人だ。おじいさんは、髪が長くひげを蓄えている。神様というよりは、仙人といったイメージが近いと思う。ひげはもちろん、まつげも真っ白で、笑顔が絶えない。一方両脇を固める、金色の人(とりあえず金さんと呼ぶ。)と銀色の人(こちらは銀さんで)は、顔がのっぺらぼうで表情はわからない。なんというか、昔のCMに出ていたペプシマンがイメージに近いんだけど。あとはスパイダーマンの全身金色と、全身銀色といったらわかるだろうか。顔はのっぺらぼうなんで表情は全くわからない。
っていうか、これは水戸黄門様!?真ん中の仙人が水戸の御老公で、両脇を固める金さんと銀さんが、格さんと助さん!?

 3人は、孫悟空が乗っているような金斗雲に一緒に乗って、私達の方に近づいてくる。

 最接近したとき、御老公が何かを言った…。「がんばれ。」「がんばってみなさい。」と言っているように感じる。周りにいたほんわか光る胎児全員に言っているのか、私だけに言っているのかはよくわからない。

 突然、金さんが私の頭のてっぺんにボールのようなものを投げた。ゴン!「痛い!」

 自分の頭にぶつけられた物は金色の重たいボールだった。それは、とてもとても重たくて私の頭の上にのっかっている。

 アコさんに、そのボールが何んなのか感じるように促されて…それはカメラだと思った。

 次に、銀さんが私にビームを放った。そのビームは私の胸に光の帯となって入り込む。ビームが入ったと同時に胸が熱くなる。それは「折れない心」「負けない心」というビームだと感じた。

 御老公と金さん、そして銀さんの3人は「入ったな」「入ったね」「入ったじゃろ。」と口々に言って、笑って3人でその場から去ってしまった。

 そして私は催眠から帰ってきたのだ。ゆっくりと目を開けると、アコさんが「お帰り」といって笑った。

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