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話をきいて

新居に越して1年と少し経った。
畑に囲まれたのどかなアパートから
国道に程近い一軒家へ。
建て売りで完成前に購入を決めた。
立地が引っ掛かったが国道から三軒も離れているし、やんちゃな兄弟を抱え一刻も早く壁の薄いアパートから出たかったこともあり、もたげた不安に目をつぶって決めてしまった。

するとさもありなん、引っ越してすぐ車の風を切るビュービュー音やトラックの過ぎる重低音が気になって半ばノイローゼのようになってしまった。ところが夫と長男は「全然気にならない」という。次男は私が「うるさくない?」と聞くと「うるさいよ」と答えるけれど、本当にそう思っているのか、親の気持ちを知らず知らずのうちに汲み取っているのかわからない。

終の棲家として購入した家。
ずっとこんなうるさいところに住まないといけないなんて。絶望して目の前が真っ暗になる。

でもここがしぶといところというか、なんとか不快から逃れたい一心で毎日ネットで騒音対策についてちまちまと調べ、二重窓の業者のホームページに行き当たった。

早速連絡をしてみると、現地調査に来るという(有料)。藁をもすがる思いで依頼した。

その業者の人は、騒音測定器を持ってくるというのでなるべく車通りの多い昼前の時間を指定して1階2階とそれぞれ窓の側で測定してもらったところ、

「えーと、結果からいうとそんなにうるさくないです」

人が不快になるレベルの騒音とは言えない程度の数値だという。

「ええ、そうなんですか…でも体に響くというか…夫は気にならないって言うんですけれど」

確かに嫌な音が響いているのに理解してもらえなかった…私のわがままなのか。これは解決してもらえないんだ、という思いでいっぱいになりふたたび絶望しそうになった。

業者の人に席を勧めたところ「私はいろんなパターンを見てきたのですが」と前置きをして彼は話し始めた。

音に対する感じ方は個人差が非常に大きい。ものすごい轟音が鳴っていても寝られる人もいれば、この程度でという微かな音に耐えられない人もいます。

現にこの家で感じるよりさらに小さな音に奥さんがどうしても耐えられず、1年と待たず引っ越してしまった例もある。だから奥さん(私)がこの音を不快に思っているのも、旦那さんがピンと来ないのも私には理解できますよ。

でも傾向として、
○引っ越して1ヶ月くらいでは新しい環境に慣れていない人が多く色々なことが気になる
○冬(2月だった)は夏より空気が乾いて音が響いてうるさく感じる
○騒音には男性より女性の方が弱い(ホルモンの関係らしい)
ので、夏になるまで待ってみませんか。
二重窓工事は1日でできますが安い買い物ではないし、お金をかけないでできる騒音対策をいくつかして様子を見ませんか?

業者の人はそういって家具やカーテンの配置や素材についてああした方がよい、こうした方が効果的、とこまかくアドバイスをして帰っていった。

この家より静かでも堪えられない人もいるんだ。だから私が間違っているわけではないんだよね…。

やることができた私はそのアドバイスに従いカーペットを敷いてみたり、寝るときの頭の位置を変えてみたり工夫を凝らした。でも結局夏より前に違う業者に二重窓の工事をしてもらってもうすぐ1年になる。ちなみに違う業者を選んだのは、同じものを使っていてもっと安くて近い業者さんが見つかったためでそれ以外の意味はない。

二重窓について私の使用感を述べると高音を遮ることに優れてはいるが低音(振動による)にはあまり効果がない。

相変わらずドゥーーーンという低音が響くときもあるが、1年経ったいまなんと何かに集中していたりまたは反対にボーッとしていると気づかないこともあるくらいだ。

新居に友達(女性)が来ると「うるさくない?」と聞いてみるが遠慮なのか「え?全然気にならない」「私は許容範囲」という人ばかり。母も私がうるさいばかりいうので来てみたが「この家うるさいの?」と逆に聞いてきた。

だんだん自分の感覚に自信がなくなってきた。私と一緒に「うるさい」と言っていた次男も何も言わなくなった。それならもういいのかな…という気になってくる。

慣れも大きかったと思う。
でも、そこに至るまでに最初の業者の彼が科学的根拠(測定器)とともにやって来て、懇切丁寧に話を聞き、寄り添い、提案をしてくれたことが大きい。おかげで「慣れ」に至るまで冷静に過ごせた。そうでなければ大袈裟に聞こえるかもしれないが、なんとか引っ越そうと画策していただろう。

人は話をちゃんと聞いてもらえる、とわかれば自然と心が落ち着く。これは騒音対策だけの話ではない。

行きつけのお医者さんは目を見て話を聞いてくれる人を選んでいる。カルテだけ見てる人やコミュニケーションの取れない医者は腕が良くてもいやだ。

子供が学校生活や習い事に疲れて「家族会議を開いてほしい」と言ったときはただひたすら話を聞いた。子供は泣いたが次の日はすっきりしていたし、気持ちの整理をしやすいことがわかったからなのか「今日も家族会議やりたい」としばらく続いた。

職場の上司との面談では、伝えたいことが伝わらず逆に相手の愚痴を聞く羽目になった。上司もストレスが溜まって「大変なんだなー」とは思うけれどこちらは消化不良に陥る。これは聞いてもらえなかったからだ。

なんだってそうだ。
とにかく話を聞くこと。
あなたを理解する気持ちがある、という姿勢を見せること。
それがすべてに繋がっていると思う。仕事も家庭もそこが土台になっているのだ。

#仕事の心がけ

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