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新城大地郎展 書画が再びひとつになる

京都新聞 2023年 2月18日掲載

「それは文字なのか、美術なのか」。

新城大地郎の作品の上で墨が跳ねたりうねったり、感情のままにシャウトするように動いているのを見て、かつて書が芸術か否かと論争されたことを考えた。書は、絵画と並んで「書画」と扱われていたが、明治時代に絵画より下位に位置づけられた。現在公開中の京都国立近代美術館コレクション展には、前衛書が特集されている。抽象絵画からも学んだ大胆な筆致には、書と画を隔てたものへ挑んだ、書家たちの気迫が伺える。

沖縄出身の新城は、小さな頃から書に親しんだ、いわば「筆ネイティブ」だが、1992年生まれのデジタルネイティブ世代でもある。筆で文字を書くことと絵を描くことは、等しく非日常だ。前時代の書家たちの葛藤を背負わない新城の筆は、身体感覚をよび起こすツールとして、のびのびと紙の上に踊っている。自作の墨には薄いものもあれば、雲母が輝く濃厚なものもある。発表のあり方も型にはまらない。ファッションブランドや商業空間にも作品を提供し、今回の京都での展覧会も、雰囲気の異なる3か所で展開している。

hakuでの展示



会場の一つ、東福寺塔頭の光明院では、素早い筆で走り書きした達磨の絵を展示。重森三玲が手がけた庭のリズミカルな立石と、あたかもセッションを演じているような光景が現れた。「禅僧の祖父に影響を受けた」というプロフィールから、「無碍」という言葉も浮かぶ。

(2023年 2月26日まで、光明院=東福寺 要拝観料。ほか2か所で19日まで展示)

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