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進化の敵は、食へのノスタルジーかも。ゲノム編集は「新しい自然」と見るのが、未来的

あまから手帖 連載「食からSDGs」2022年 11月号より(写真:伊藤信)バックナンバーはhttps://www.amakaratecho.jp/ でどうぞ。

我 々 が 食 べ る 野 菜 や 肉 は 、1 万 年 以 上 を か け て 品 種 改 良 さ れ て き た 。そ の プ ロ セ ス を 、 約 2 〜 3 年 で 超 高 速 に 再 現 で き る の が 「 ゲ ノ ム 編 集 」だ 。 魚介の品種改良の遅れを巻き返すこの技術を、日本がリードしている。

遺伝子操作と聞くと、食に意識の高い人ほど「不自然、危険、倫 理的にどうよ?」と口を尖らせる。

しかし、 我々がいま口にしている野菜や家畜 は、優良形質の個体を選んで掛け合わ せ、品種改良したものだ。望む形質を 得るために、薬品や放射線照射が用いられる。十分、不自然だ。

たいして「リージョナルフィッ シュ」が用いる「ゲノム編集」は、目指 す変異を遺伝子編集でつくる。他の生 物の遺伝子を使う「組 換え」ではなく、 遺伝子の一部を「欠失(ノックアウト)」させて、狙う 改良を起こす。
例えば筋肉が過剰に形 成されるのを抑える遺伝子を働かなく させて、肉付きを良くした鯛。約 年 もかかっていた品種改良のプロセスが、 約 2~3 年で 再現できる。

京 都 大 学 国 際 科 学 イノ ベ ー ション棟にある研究所では、研究員が顕微鏡に向かいながら、狙った遺伝子の機能を欠失(ノックアウト)させるよう働く 酵 素 を 、魚 の 受 精 卵 に 注 入 す る 作業をおこなっていた。
この改 良 を 次 代 に 確 実 に 受け継がせるため、卵は 完 全 養 殖 で 育 て る 。遺 伝 子 の 欠 失 は 自 然 に 発生することもある。

遺伝子編集で、魚の方を環境に合わせ、未来の地魚をつくる


同社が目指すのは、SF的なデザイン 魚ではなく、日本の地域を豊かにする 地魚づくりだ。
「例えば土地の酒と合 うような、地域を盛り上げていく地魚 が、将来生まれるのでは? 社名には、 そんな思いを込めています」と、代表 の梅川忠典さん。
「福井では海水温が 上がって鯖が揚がらなくなりましたが、 適応できる鯖ができれば、鯖街道のバ リューチェーンも復活できる」。

ゲノム 技 術 に 加 え 、A I / I o T を 使 っ た ス マート養殖が、魚と日本の漁業を超高 速で改良している。我々の「天然もの」 への 執着も 、大 急 ぎで ノックアウトしないと。

リージョナルフィッシュが、京都府宮津市などに あ る 陸 上 養 殖 設 備 で 、完 全 養 殖 し て い る ゲ ノ ム 編 集 の マ ダ イ「 2 2 世 紀 鯛 」 を 日 本 料 理 人 が 調 理 し た 昆 布 締 め セ ッ ト は 、2 0 2 1 年 か ら オ ン ラ イ ン 通 販 を 開 始 し て い る 。

リージョナルフィッシュ株式会社
ゲ ノ ム 編 集 と 、日 本 が リ ー ド し て い る 完 全 養 殖 の 技術を進化させて漁業をサスティナブルな産業に す る こ と を ミ ッ シ ョ ン に 2 0 1 9 年 設 立 。数 々 の ビ ジ ネスアワードを受賞している。


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