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「ジェンダー・クィア」日本語版翻訳出版に向けて

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「ジェンダー・クィア」日本語版翻訳出版に向けて、作品や著者、関連情報をお届けします。
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記事一覧

「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (09)好きな下着を選びたい

性別二元論を前提に設計されている社会の中で、そもそも多様な人を二つのジェンダーに割り振るのは無理があるのでは?という捉え方・認識を強く持つノンバイナリージェンダーの人にとって、身につける衣服にまつわる価値観に対する葛藤や受け入れ難さが描かれているページを紹介します。

「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (08)クラウドファンディングの期間あと1カ月 発起人よりお願い/言葉を奪われないために

『ジェンダー・クィア』日本語版出版に向けたクラウドファンディングの期間も残すところあと1カ月になりました。これまでにご支援いただいた方々、関心をお寄せいただいた方々に深く感謝いたします。また、拙著『ジェンダー目線の広告観察』の刊行と、クラウドファンディングの時期が重なったこともあり、読者の方がクラウドファンディングを支援してくださったことも大変嬉しく思っています。 私にとって、クラウドファンディングの発起人になることは初めての経験であり、キャンペーンを展開する中で『ジェンダ

「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (07)ファッションの探求

マイア・コベイブさんは、成長の過程で髪型や服装、下着、アクセサリーなど女性的なものとして設定されているものを身につけることや、「女性らしく」装う、身だしなみを整えることについて距離を置いてきました。ボーイッシュとみなされるような簡素な服装を選ぶことが多い中で、「ジェンダー・クィアとしての自分らしいファッション」を追求していきます。

「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (06) 自分のヴァギナに向き合う

マイア・コベイブさんは、女性の身体を持って生まれ育ち、現在はノンバイナリー・ジェンダーとしての自認を持ち、生活をするに至っています。 『ジェンダー・クィア』の中でも、特に強い印象を残すのは、20代に入ってパップテスト(子宮頸がん細胞診)のために婦人科受診をして、ヴァギナを持つ身体であることを思い知らされて打ちひしがれる経験を描いたところです。 今年公開された映画「バービー」の終盤で、人間の世界で生きることを決断したバービーが婦人科を受診する場面が描かれていますが、身体的女性で

「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (05) 生理のある身体であること

作者のマイア・コベイブさんは、現在ノンバイナリーを自認し、現在は乳房切除術(いわゆる「胸オペ」)を経ていることを自身のインスタグラムで公表しています。女性の身体で生まれて、成長する過程、思春期で二次性徴を経る中で、生理を大変辛いものと感じてきたことが描かれています。「生理にまつわる悪夢」の内容は、重苦しく、読んでいてなかなかに辛いものがあります。
どのようなジェンダーの人であれ、二次性徴を経て変化する身体と折り合いをつけて生きるのことには困難や戸惑いが伴うものです。「自分にと

「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (04)マイア・コベイブさんからの挨拶 

クラウドファンディングのプロジェクトに対して、マイア・コベイブさんからの応援のメッセージが届きました! 「ジェンダー・クィア」を日本の読者の方に届けられることにワクワクしています、日本はたくさんの漫画作品、才能のある漫画家、長期にわたって連載されて愛読されている作品がありますね。すでにたくさんの漫画がある国で、私の作品を刊行することに関心を持ってくださって、とても光栄に思っています。 「ジェンダー・クィア」は回顧録で、2歳から28歳までの私の人生の物語で、ジェンダー、セクシ

「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (03) アメリカで展開される「禁書運動」

『ジェンダー・クィア』は、アメリカで2019年に刊行されて以降、クィアとしての生き方や経験を描いた優れた著作として数々の賞を受賞し、スペイン語、ポーランド語、チェコ語、フランス語に翻訳されて世界中で読者を獲得しています。しかしその一方で、アメリカ国内で一部の保守層が人種差別、セクシュアリティ、ジェンダーアイデンティティに関連する書籍を「challenged books(問題視された図書)」として公立学校や図書館からの撤去を求める「禁書運動」を展開したために、いくつかの州の図書

「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (01)

2023年7月25日から10月23日まで、グラフィックノベル『Gender Queer: A Memoir』(2019)の日本語版出版に向けたクラウドファンディングを実施します。クラウドファンディングの発起人として、この本を出版する意義や著者について、作品としての魅力について紹介していきます。 クラウドファンディングの詳細や、著者マイア・コベイブについてはクラウドファンディングのページをご覧ください。 私がこの本の存在を知ったのは、2021年1月のこと。外国のコミックを紹

「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (02)マイア・コベイブさんってどんな人?

著者のマイア・コベイブ(Maia Kobabe, b.1989)さんは漫画家、作家として活動し、『ジェンダー・クィア』は、初の長編作品です。 ノンバイナリー・ジェンダーでアセクシャル(無性愛)を自認し、Preferred Gender Pronoun(希望する代名詞)としてジェンダーニュートラルな代名詞である e/em/eirを用いています。本作品では、マイアさんが自分自身の「性」のあり方に向き合い、ノンバイナリー(男女二元論に当てはまらないジェンダーのあり方)という性自認を