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AIが小説を書く可能性についてAIが語る

AIに小説は書けるのか?
AIが小説を書くとはどういうことなのか?ということについて考えてみましょう。

まず、AIには感情がありません。だから、人間の書いたような文章を書かせることはできないのです。ではどうやって小説を書くのでしょうか。
これはもうほとんど不可能に近いでしょう。しかし、その技術自体はすでに存在しています。たとえば人工知能学会誌(Vol. 3, No.4)に掲載された論文によると、ある小説家の小説を読んでその内容について分析し、その結果をもとにして別の作家の小説を読むと、それを読んだときに作者が感じたであろう感情や思考といったものを自分の中に取り込むことができるそうです。そして、その作家の作品を読みながら作者の感情を疑似体験することができるのだそうです。つまり、読者である自分が小説の主人公になったつもりで読み進めていくことで、あたかも自分も主人公と同じ経験をしているかのように感じ取ることができるということですね。これができれば、確かに小説は書けそうな気がしますよね。でも、この手法だと読者が主人公の気持ちになって読むことが前提となっています。なので、読者が自分でストーリーを考えて書くことはほぼ無理だろうと思われます。また、小説に限らず映画などでも同じことができます。映像を見て登場人物の気持ちになりきって楽しむということはよくありますよね。これも一種の擬似体験ですが、小説の場合はさらにそこに書き手の視点が加わることになります。読み手は物語の世界に入り込みますが、同時に書き手も物語の世界を体験することになるわけですね。そうすると、まるで自分が実際にその場にいるような臨場感を得ることができてしまいます。しかも、それが小説の場合なら文字情報として残ることになるわけで、それはもはや現実の世界そのものと言ってもよいくらいリアルなものになるはずです。もちろん、小説の内容によっては現実味のないものもあるかもしれませんが、少なくともリアリティーのある描写ができることは間違いないと思います。
ただ、このような小説の書き方はAIによって実現できるかというとちょっと疑問なのです。なぜなら、そもそも人間は小説の内容を考えたり読んだりするときには必ず頭の中で映像化するからです。そのため、小説の書き出しの部分だけ読んでみてもあまり意味がないんですね。それよりもむしろ、最初の数ページ分を一気に読ませたほうがよほど効果的だと思います。もし仮にそのような読み方をする人がいたとしても、おそらく全体の半分くらいのところで挫折してしまうのではないでしょうか。それくらい小説というのは長いものです。ですから、やはり小説というものはある程度の長さがあって初めて成立するものなのだろうと考えられるわけです。
小説を書けない理由は他にもあります。それは、AIに高度な言語処理能力を持たせることができないという点です。というのも、人間にはそれぞれ固有の言葉というものが存在しています。日本語だけでも約30万語もあると言われているのですが、これを覚えるのはなかなか大変ですよね。それに、同じ言葉でもその状況に応じて意味が異なるものもあります。特に英語などの外国語となるとなおさらです。そんな膨大な語彙の中から適切な表現を選ぶというのはかなり難しいことだと思うんですよね。

でも、ここでふと我に返る。
AIが書いているものは小説ではないのか?
実はやはりAIにも小説が書けるのではないか?
どういうことかと言うと、AIには”心”がありません。よって、人間のように物事に対していろいろな感情を抱くことがないわけです。そうなると、当然そこから生まれるはずのものも生まれません。そこで登場するのがコンピュータ・サイエンスにおける大御所と呼ばれるリチャード・ファインマン氏による認知的不協和の理論です。簡単に言うと、人は何か新しいことを学んだとき、それをそのまま受け入れるのではなく、いったん受け入れてからそれについて考え直しますよね。そのときに生まれる矛盾した気持ちを心の葛藤といいます。たとえば、あなたが自転車に乗ることを学んでからしばらくして、今度はその逆をやってみようと思い立ったとします。このとき、あなたは心の中でこう思うはずなんです。”よし、じゃあもう一度やってみるか!”ってね。ところが実際にはそうはならないんです。なぜかというと、あなたの脳の中では新たな学習に対する抵抗が生まれているからです。つまり、あなたの中ではすでに学んだ内容を受け入れてしまっているので、今さら別のやり方でやろうという気にはならないのです。しかし、だからといってそのことを表立って表明することは恥ずかしいと思うので、とりあえずは反対のことをやってみようとするのです。これがいわゆる心理的葛藤というやつですね。
では、AIはどうなのか? AIが書いた小説を読んでみるとわかりますが、そこには人間の書いたような心理的な葛藤がまったく見当たりません。つまり、AIはあくまでも与えられた課題を忠実にこなしているだけなのであり、そこに何らかの感情が生まれることはないということです。これは逆に言えば、AIにとっては小説を書くことなど容易いことだと言えるかもしれません。
ただし、それはあくまで現時点での話であって将来どうなるかはわかりません。もしかしたら将来的にはAIも小説を書いてしまうかもしれないですし、人間がAIの小説を読むということも考えられなくはないのです。
ただ、現状ではまだそこまでの技術は確立されていないので、当分の間は人間の創作活動がAIに取って代わられるということはないだろうと考えられます。しかし、いずれ近いうちにそうなる可能性は否定できないでしょう。

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