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ビジネスとして役立つ教養としての動画 / 読書メモ

今回紹介する本は動画を作る人だけでなく、動画に触れるすべての人にとってためになる良書だと思いました。

それが「ビジネスとして役立つ教養としての動画」ですね。

この本は映画の歴史など動画や映像に関するすごく知的な情報が入っていることに加え、最近のショート動画などの流行も歴史を踏まえて教えてくれるんですね。

なので単に動画をアップするだけの人でもこの情報を知っておくだけで専門家だなと言われるような深い内容になっています。

さあ、ということで早速個人的に気になった箇所をメモしていきましょう。

ちなみに筆者は動画の知識が少しあるので、すでに知ってる内容はメモしてません!

読書メモ

・メッセージ性を高めるには「ワンフレーズ」の決め言葉が大切

→ 心に残るワンフレーズ、例えば「七人の侍」のラストで「本当に勝ったのは農民たちかもしれない」という志村喬さんのセリフは一言で物語を全部説明してしまいました。
個人的にはゴジラ-1.0の「俺の戦争はまだ終わってない」なども好きですね。

・CMやコピーライティングでもワンフレーズ

→ 結果にコミット、あなたとコンビニ、などワンフレーズでコンセプトを表現できるものは切れ味がある

・ルールを利用する高度な技術

→ 木下恵介監督の「陸軍」は戦争下なのに母親の悲しさを表現してる。
これが検閲をすり抜けて公開されたのは表現としてすごい。

ちなみに原恵一さんも木下監督を尊敬してるとどこかで言ってた。

・ネットとシチュエーションショット

→ 場所や時間などの状況を伝えるシチュエーションショットをシーンの始めに入れることがよくあるが、現代のYouTubeではダイジェストを冒頭に入れてシチュエーションショットの代わりにしている

・緊張と弛緩

→ 笑いでも言われる緊張と緩和、人は心のギャップが大きいほど次の言葉を心で受け入れられやすい。

「みんなが自分を見てくるから悪いことしたかなと思ってたら(緊張)ズボンのチャックが空いてたんだよね(緩和)」

・オマージュの意図を考えてみる

→ 物語のターニングポイントを強調させたいという意図があり、そこに別の監督のうまく行ってる手法をオマージュしてメッセージを強調したりする。

・スタニスラフスキー・システム

→ 簡単にいえば自分の周りに演出にふさわしい状況を作ることでTikTokなどでは視聴者を巻き込んだ演技ができるのではないかという説。
 このシステムを発展させたのがメソッド演技法。
 メソッド演技法はスピルバーグなどファンタジーの監督が指導する一方で、役にのまれすぎて自殺する人などもいるよね。

・「スジ、ヌケ、動作」

→ 日本の映画の父と言われる牧野省三監督が大切にしたのがこの3つ。
ストーリー、映像の抜け感、そして画面内の動作が揃った時に良い映像になる。

・切り替えるタイミング

→ 小津安二郎は1秒(24コマ)の切り替えを前の役者が18コマ、次に喋る役者に6コマで切り替えている。少し溜めてから切り替えている。
つまり切り替えのタイミングにも意味を持たせている。

・長回しをするのであれば画面内の情報量を増やす

→ 溝口健二は長回しをすることでリアルタイムの追求を行なっていた。
現代でいえばライブ配信が近いが、その場合は画面内の構図や配置によっても臨場感が変わってくる。

・「ないからできない」ではなく「どうやってできるか」

→ 木下監督はカラーフィルムが入ってきた際に明るい昼間、遮るものがない浅間山のふもと、色を使ったストリッパーの女性などの表現を考えた。
さらに失敗した時を考えて白黒版も同時に撮っていた。
この時代からの作るための試行錯誤には脱帽。

・お決まりのパターンはどこから見てもわかるテレビの特性

→ 「水戸黄門」などおよその流れが同じなのは、テレビを途中から見ても話の大筋がわかるようにするため。
おそらくサザエさんから現在のテレビ番組もこれは意識されているだろうし、ランキング系もテロップの出し方など工夫されてるのだろう。

・ヒット映画に必要なのは「不良性感性」

→ 東映の元社長の岡田茂の言葉で、ヒットする映画は一般には受け入れられず心で抑制しているようなエッセンスを盛り込むことが重要だという。
確かに「鬼滅の刃」も子供向けにしてはグロいし、「東リベ」も闇社会を描いてるし、「ビートルズ」がヒットした時も大人は苦言を呈していた。

・動画の制作方法とYouTubeの似ているところ

→ 黒澤明と勝新太郎の世紀の大喧嘩を代表するように、制作スタイルとして黒澤明のように監督の世界観を実現するためにチームで動くスタイルと、勝新太郎のように1から全て自分のオリジナリティを反映させるワンオペスタイルと重なるところがある。

・シチュエーションショットをいかにうまく伝えられるかが腕の見せどころ

→ 落語の世界でも昔の言い方がわからない時は本題の前の枕でそのことをわかりやすく説明する。
映像も本題の前にシチュエーションを説明したり興味を引くことが重要だが、それが長すぎてもくどいし短すぎてもわかりづらいのでダメである。
バラエティではアバンを入れたりする。

・台本や構成表は使い所を知る

→ 台本は”台”詞の”本”というように、役者や人物の表現を書いた本であるため事前に人物の動きが決まっている。
一方で構成表は映像が構成される時系列などの流れなどを書いたものなので、人物がどういう動きをするか分からないドキュメンタリーなどで使う。

・考えてから撮る癖をつける

→ 小津安二郎の「絵画が動くものが映画」という言葉通り、絵画のように撮る前に構図や動きなどを考えて撮るように心がける。
毎回、しっかりと考えることで次回に生かされ成長する。

・1930年から60年代の映画は表現がシンプルでわかりやすい

→ 映像を勉強する際には現在のようにCGや凝ったカメラワークがあるものよりも昔の映画の方が普遍的でシンプルな表現がわかりやすく設計されている。

・フレームサイズは心理的な距離と関係する

→ 人間にはパーソナルスペースや縄張り意識がある。
そのためズームで寄っている映像というのは距離が近いため、本能的にその映像のインパクトが増すことになる。

・ファイル管理は素材、データ、完成動画で分ける

後から見た時にわかりやすくファイルは整理しておくと良い。

・YouTubeはコンテンツ置き場か広報か使い分けをはっきりしよう

→ 単にアップするだけではなく何を目的に使うのかをはっきりした方が良い。
コンテンツ自体を見せたいのであればどういった人に届くかを統計などを参考に考える必要があるし、広報として使うのであれば動画の再生数よりも商品の良さが特定の人に伝わるように作ることが大切である。

・19歳以下の観客を夢中にさせる

→ 東映の岡田茂の「大当たりする映画を作るためには19歳以下の観客が映画館にわぁっと押しかけるような映画を作らなくてはいけない」の通り、SNSもティーンを中心に広がっている傾向がある。
それには「不良性感性」で特定の人の心を掴んで「善良性感性」で一般の人に広げていく流れ。

・リアルな場所で使われる映像

→ ネット以外にもショームービーやイベントで使われる「アタックムービー」や表彰の時に使われる「アワードムービー」など映像にはリアルなイベントで使われるものも存在する。

・日本人はテレビはタダという感覚。

→ サブスクが普及したことでNHKのような請求ではなく勝手に引き落とされてタダの感覚に近くなっている。
特にPrime Videoは会員の特典として無料という感覚だ。

・頼むときは丸投げしない

→ 映像の使用目的や予算など細かいことをしっかりディレクションして頼まないとお互いに不満が生まれる。
依頼するということは上司的な感じでやるのではなく、一緒に良いものを作るチームという意識を持つことが大切。

岡田茂「シャシン(映画)を当てるためには、つくる者と売る者で一体でなきゃダメだということですよ」
 → これゴジラ-1.0は作り手も見る方もゴジラを応援する意識があった気がした。


所感

この本の中には映像の技術や機材から編集アプリなどの内容まで記載されていましたが、特に心に残った部分のみメモに残してます。
なのでシャッタースピードとか既に映像をやっていると知っている内容は端折ってますので、映像を始めたばかりの人は知っておくと勉強になることが多いです。

そういえば私がスターバックスでアルバイトをした際に、研修動画でCEOのハワードシュルツが動画で色々とカメラに向かって話す動画を見たことがあったが、ハワードシュルツはすでに動画の力を知っていたのだろう。
スタバ信者という言葉があるように動画で自分の役割を把握してもらうことで悪い言い方をすれば洗脳のような感じになっているのかもしれない。

今後もこれらのツールは有効だと思いますので一読の価値ありですね。
ちなみに筆者はKindle Unlimitedで99円で読んだので探してみてください。


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