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『度胸星 続編もどき』_第9話「坂井輪夫妻」


scene_M1と坂井輪夫妻との交信

ロシア連邦宇宙局の高官とNASDAの男性教官との電話会談の様子。

高官「・・・という事情なんです。ドクター坂井輪に相談したいというクルーの強い申し出を汲み取っていただきたい。」
「明後日、お二人をNASDAまでお連れできませんか?」

NASDA男性教官「承知しました。日本とロシアは宇宙開発事業の重要なパートナーです。」
「坂井輪博士は責任をもってお連れし、M1クルーと交信していただきましょう。」

【場面切り替え】
NASDAの勝浦宇宙通信所にて、M1探査船と交信する坂井輪夫妻。

光子「一昨日その話を聞いてから、私たちの胸は高鳴りっぱなしよ。」

利宏「ああ、でもまさか火星で超ひも理論が予知する高次元への糸口が発見されるとは・・・」
「夢には思い描いていたが、まさか本当に・・・」

度胸「とにかくわからないことだらけです。」
「なぜ高次元の物体が火星に出現できるんですか?」

利宏「カルツァ=クライン理論によると、高次元は非常に小さなスケールに巻き上げられているかもしれないんだ。」
*巻き上げられた余剰次元の図挿入。

武田「さっぱり意味がわからねぇ・・・」

利宏「これは失礼。こんな例え話がある。綱の上を曲芸師とてんとう虫が渡っている。」
「曲芸師は綱の上を前後にしか、つまり一次元にしか動けないが、てんとう虫は綱を横にも斜めにも下にも移動できる。あたかも二次元であるようにね。」
「ようするに、小さなものほど高い次元を認識しやすいってことなんだよ。」

得心した様子の武田ら三人。

利宏「四次元以上の空間は目に見えない極小サイズに存在するけど、火星ではなんらかの要因で時空間の破れが生じたために、高次元空間が三次元空間の表面にデコードされている。」
「・・・そう解釈することはできる。」

光子「3Dのコンピュータ・グラフィックスをイメージしてごらんなさい。あれは二次元のスクリーン上で三次元を表現する技術でしょ。」

度胸「筑前は『テセラックは重力に関心がある』って言ってます。「『重力装置を裏返した』とも。」
「これはどういうことでしょうか?」

利宏「とても興味深いね・・・。実は、重力は別の次元へ漏れているって説があるんだ。」
「『階層性問題』といって、重力は自然界の4つの力の中でもけた違いに弱い。」
「重力は次元を超えて作用しているから、三次元空間では見かけ上、非常に弱くなってしまうと考えられているんだよ。」
*階層性問題の図、大統一理論or超大統一理論の図挿入。
*重力子の閉じたひもがバルク(高次元空間)を行き来している図挿入。

光子「仮にテセラックが高次元の存在で、なんらかの知覚を持っているとするなら、重力に興味を持っても不思議じゃないわ。」
「それはテセラックの本来の次元と共通する力だからよ。」

利宏「もしそうだとすれば、三河君たちは重力には気をつけなくてはならないよ。」
「テセラックを刺激するから、重力を発生させる装置は火星では使わないほうがいい。」

茶々「テセラックとは意思疎通が・・・、コミュニケーションができるんでしょうか?」
「火星からの報告では意識や感情の可能性も指摘されています。」

光子「ロンドン大学の天文学者バーナード・カー教授は、“意識とつながった非物質的な次元”が存在すると主張しているわ。」
「超常現象はこうした非物質的な次元の出来事だと考えてるのよ。」

利宏「正直言ってこの主張に賛同する科学者はほぼいない・・・」
「でも三次元で説明できないことが高次元で説明できるのなら、市原君、君のテレパシー能力もその可能性がある。」
「テセラックに君の意思を伝えることができるかもしれないよ。」

決意を胸に秘めた茶々のアップ。

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