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台にアニバーサリー (祝・二周年!毎週ショートショートnote)

蟹缶が家出した。理由はわからない。

とても珍しい、青くて四角い蟹缶だった。
だから大切に大切にしまい込んでいたのに。
パニックになった私は親友に電話をかけた。
彼は私をなだめ、話を整理し、やがてこう言った。
「きっと蟹缶の墓場へ向かったんだろう」
私は蟹缶を大事にするあまり、賞味期限を失念していたのだ。
「それは何処なんだ?」
「決まっている……蟹座だ」

私は発射場へ駆け込んだ。
蟹座行きロケットを目指す私を、係員が慌てて止めた。
「チケットは持っている!」
親友が手配してくれたチケットを見せると、
「お客様のロケットはそちらではございません」
自分の顔が蟹のように赤くなるのを感じた。
誘導されて一番端にある発射台へ向かった。
そこで見たのは二人乗りの、缶詰みたいなロケットだった。

本当に蟹座へ行けるのか?
首をひねりながら入ると、すでに小さな影が座っていた。
青くて四角い……家出した蟹缶だ!
手紙が添えられている。親友の文字だった。
『君と蟹缶が出会って今日で二周年らしいね。
カニだけに「二」周年にはこだわりたいと相談を受けた。
お節介な僕からのお祝いだ。短い旅だが楽しんでくれ。
期間は一週間、行き先は思いつきで決めたいそうだ』
私は慌てて賞味期限を確認する。日付はなく、ただ一言。
〈毎週違った味が楽しめます〉
見れば、蟹缶はニカニカと笑っていた。

蟹の向くまま気の向くまま、三年目のショートショートトリップへ。
ロケットは愉快な轟音をあげ、発射台から飛び立った。



【毎週ショートショートnote】二周年おめでとうございます!!
主催のたらはかにさんへの感謝ショートショートです。
(どのへんに謝意が…?という突っ込みはなしで!)
あと字数オーバーですが、お祝いということで筆が乗ってしまいました。
(いつもそうだよね…?という突っ込みもなしで!)

私はこの企画が始まってから少し経った頃(2022年4月)から参加したのですが、お蔭様で創作仲間と繋がることができ、本当に感謝している企画です。
気まぐれな五月雨投稿ですが、自分では毎ショメンバーのつもりでいますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。


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