石原 三日月

物書き▶カモガワ奇想短編グランプリ大賞「窓の海」▶第1回「幻想と怪奇」SSコンテスト優…

石原 三日月

物書き▶カモガワ奇想短編グランプリ大賞「窓の海」▶第1回「幻想と怪奇」SSコンテスト優秀作(同誌「ショートショート・カーニヴァル」掲載▶坊っちゃん文学賞佳作(第17·18·19回)▶Gakken「3分間のまどろみ カプセルストーリー 青・緑」「夢三十夜」寄稿▶犬とふ菓子が好き

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    幻想とか奇想とか。だいたい2000字以下のお話。

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ベッドロス (ショートストーリー)

フラッシュフィクション専門の同人ペーパー 「CALL Magazine」 に寄稿した「ベッドロス」を公開いたします。(配信期間中にネットプリントで印刷購入して下った皆さま、本当にありがとうございました!) 「眠り」をテーマにした夢見心地の1000字奇想掌編。お楽しみいただければ幸いです。(末尾に通常の横書きも掲載しています) ベッドロス   ここのところ毎朝ベッドで目覚めると、なぜか道路の中央分離帯だったり、新興住宅地の小さな公園だったり、県境を流れる川の河原だったり、と

    • 【お知らせ】 寄稿しました CALL Magazine vol.48

      紅坂紫さんが運営されているフラッシュフィクション専門ペーパー 「CALL Magazine」 に「ベッドロス」という奇想掌編を寄稿しました。 「CALL Magazine」はコンビニエンスストアのネットワークプリントサービスとインスタグラムを通して、毎週1,000字のフラッシュフィクションを配信しているウェブジンです。 ネットプリントを利用して配信する同人誌は、ちょっと珍しいのではないかなと思います。 2月のゲストエディター・鯨井久志氏(カモガワ編集室)にご指名いただきました

      • 鳩の図書館(ショートストーリー)

        昨年の「文学フリマ東京37」にて頒布された『鳩のおとむらい 鳩ほがらかアンソロジー』(発行:鳥の神話) 収録の「鳩の図書館」というショートストーリーを公開いたします。 本の話ということもあり、紙書籍で読んでいる雰囲気を味わっていただきたく、文庫ページメーカーを使用しました。(末尾に通常の横書きも掲載しております) 約2000字の作品ですので、気軽にお楽しみいただければ幸いです🕊 鳩の図書館  ああ、その伝え話ですか。よくご存知ですね。そうです、その町には私の曽祖母も暮ら

        • アメリカ製保健室(毎週ショートショートnote)

          「食欲ないから保健室行ってくる」  昼休みにそう言うと、隣の前田は眉をひそめた。  今年導入されたアメリカ製保健室――「同調圧力に疲れた日本の高校生を自由と多様性の精神で癒す」というものだが、馴染めない生徒も少なくない。僕はあまり抵抗ないのだけど。 「おお!いらっしゃい!」  ウェンディ先生が明るく迎えてくれた。白衣に包まれたアメリカンサイズの体は椅子からこぼれ落ちそうだ。室内にはいい匂いが漂っている。 「気分が塞いでしまって」 「心当たりは?」  机の上にピザやフライドチキ

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        ベッドロス (ショートストーリー)

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          嬉しいお知らせ。 「怪談箪笥」にスキしてくださった皆さま、ありがとうございました。

          嬉しいお知らせ。 「怪談箪笥」にスキしてくださった皆さま、ありがとうございました。

          舞塔会の月(ショートストーリー)

           舞塔会の月  その鉄塔は丘の中腹に立っていて、家から伸びた坂道の途中、こんもりした樹々の上から顔を覗かせていた。ありふれた銀色の送電鉄塔で、左右に両手を広げたような姿をしていた。  ある日の夕方、学校帰りの私は坂道を上がっている途中で話しかけられた。 「つかぬことをお訊きしますが、今宵はお暇でしょうか」 「はい?」  まわりを見回したが、誰もいない。 「こっちです、こっち」  声のする方を見ても、そこには樹々から顔を覗かせた鉄塔しかない。しかし、 「ああ、良かった、気づ

          舞塔会の月(ショートストーリー)

          怪談箪笥 (ショートストーリー)

          昨年、Gakkenより刊行された短編アンソロジー『3分間のまどろみ カプセルストーリー 青』収録の「怪談箪笥」を公開いたします。 作者としては縦書きで読んでほしいお話なので、文庫ページメーカーを使用しました。(末尾に通常の横書きも掲載しています) 名前もつけなかったこの家具商人のことを私は気に入っていまして、また違うお話も書きたいなと思っています。 それでは、お楽しみいただけましたら幸いです……  怪談箪笥    男がうちにやって来たのは、ひどい雷雨の午後だった。  荷車に

          怪談箪笥 (ショートストーリー)

          台にアニバーサリー (祝・二周年!毎週ショートショートnote)

          蟹缶が家出した。理由はわからない。 とても珍しい、青くて四角い蟹缶だった。 だから大切に大切にしまい込んでいたのに。 パニックになった私は親友に電話をかけた。 彼は私をなだめ、話を整理し、やがてこう言った。 「きっと蟹缶の墓場へ向かったんだろう」 私は蟹缶を大事にするあまり、賞味期限を失念していたのだ。 「それは何処なんだ?」 「決まっている……蟹座だ」 私は発射場へ駆け込んだ。 蟹座行きロケットを目指す私を、係員が慌てて止めた。 「チケットは持っている!」 親友が手配し

          台にアニバーサリー (祝・二周年!毎週ショートショートnote)

          【お知らせ】小説すばる12月号にエッセイ寄稿

          本日発売の「小説すばる12月号」にエッセイを寄稿しております。 「のりがたり」という乗り物に関するコラム欄です。 昔、母と乗った観覧車の話を書きました。(あ、ちなみに母は健在ですよ笑) 800字と短いので、息抜きにでもご一読いただければ幸いです。 お声が掛かった時にはびっくりしましたが、編集の方が「幻想と怪奇」に掲載された「せせらぎの顔」を読んで下さったとのこと。とても丁寧な感想も添えられていて嬉しかったです。 書き上げた作品たちが私の手を離れてからも、どこかで誰かに届き、

          【お知らせ】小説すばる12月号にエッセイ寄稿

          文学フリマ東京37 私の新作短編が収録されているのは、以下の2冊です。 出店ブースは別々です。よろしくお願いします🌛 『カモガワGブックスVol.4 特集ː世界文学/奇想短編』 【し-57】カモガワ編集室 『鳩のおとむらい 鳩ほがらかアンソロジー』 【え-64】造鳩會

          文学フリマ東京37 私の新作短編が収録されているのは、以下の2冊です。 出店ブースは別々です。よろしくお願いします🌛 『カモガワGブックスVol.4 特集ː世界文学/奇想短編』 【し-57】カモガワ編集室 『鳩のおとむらい 鳩ほがらかアンソロジー』 【え-64】造鳩會

          【お知らせ】文学フリマ東京37 参加情報

          11月11日に開催される文学フリマ東京37に新作短編2本で参加します。 双方ともアンソロジーへの寄稿です。 1本はカモガワ奇想短編グランプリ大賞受賞作『窓の海』(約8000字)。 はじめての大賞受賞作です。推敲に苦しんだ分、自分でも好きな作品になったので、ぜひともお読みいただければ幸いです。水平線まで窓が敷き詰められた海原をお楽しみください。 もう1本は『鳩の図書館』(約2000字)という書き下ろしです。 こちらは「鳩」と「本」をモチーフにした、ほんわか切ないファンタジー

          【お知らせ】文学フリマ東京37 参加情報

          【創作メモ-1】 ショートショートとショートストーリー

          自分の備忘録として、X(旧twitter)に投稿したものをこちらにも残しておくことにします。 ショートショートは回帰するイメージで、円や螺旋を一度(一周)だけ描くもの。 ショートストーリーや短編小説は一方向に進む直線的なもの、または螺旋を複数回(二周以上)描くもの。 …という漠然とした感覚で書き分けていたので、田丸さんの「アイデアの数が1か否か」(意訳)というお話は「なるほど」と思いました。 また、霜月透子さんからのコメントも「そうそう!」と思いました。 面白い作品っ

          【創作メモ-1】 ショートショートとショートストーリー

          カモガワ奇想短編グランプリ大賞

          この度、カモガワGブックス編集室による「カモガワ奇想短編グランプリ」において、自作『窓の海』が大賞を受賞いたしました。 多くの方からお祝いのお言葉をいただき、ありがとうございました。 佳作や入選の経験はありましたが、はじめて一等賞をいただき、喜びとともにホッとしているというか、肩の力が少し抜けたような気分でいます。 受賞作品の概要や選評について、主催の鯨井編集長が丁寧に書いて下さいましたので、ご一読いただければと思います。 このグランプリの募集記事を目にした時、私はちょう

          カモガワ奇想短編グランプリ大賞

          サイコの鶏唐 (毎週ショートショートnote)

          大きなミスをして叱られ、私の足取りは重かった。月のない夜だった。 ふと気づくと、目の前に小さな無人販売店があった。ガラス扉には店名と「揚げたて鶏唐」――私の大好物だ。気持ちが少し明るくなる。 扉に手を伸ばし、ギョッとして自分の右手の甲を見つめた。いつのまにか黒い文字が書かれている。 食うな 当然、自分で書いた覚えはない。 薄気味悪さを感じながらも、香ばしい匂いに抗えず、私は店に入った。 商品棚には容器に詰められた唐揚げが並んでいた。どれも輝くような狐色だ。

          サイコの鶏唐 (毎週ショートショートnote)

          MUSEUM (掌編)

          そのお忘れものでしたら、どうぞこちらへ。 ええ、そのまま置いてございます。 きっと取りにいらっしゃるだろうと思いましたので、 お忘れになったその場所、その時のままにしてあります。 いえいえ、時間はお気になさらずに。 この美術館ではよくあることでございます。 ああ、暗いのでお足元に気をつけて。 そうですか、不意に思い出されたのですね。 ええ、皆さまそう仰います。 なにかを忘れたのではなくて、自分が忘れものなのだと気づいた、と。 さぁ、こちらです。 お客さまがお忘れになった、忘

          ほしししのほし (短編童話)

          森でみんなと遊ぶのがつまらなかったので、ルルはひとりでずんずん歩いていました。 みんなは森でかくれんぼだとか、秘密基地づくりをしたがるけれど、ルルはもっと違うことがしたかったからです。 草の葉の先がそよ風に揺れるところだとか、空の雲が伸びて千切れて変形合体していくところだとか、そういうのをぼんやり眺めていたかったのです。 ルルは草をかきわけながら、ずんずん歩いていきます。 午後の森の中は明るくて、ひとりでも怖くありません。ずんずん歩いていきます。 森の木々は反対に、

          ほしししのほし (短編童話)