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山の家 滞在日記(4.27-4.29)

山の家は、姉が生まれた年に建てられた。父は若い頃から「いつか山に移住する」という夢があったらしい。結局は移住はしなかったけれど、セカンドハウスとして、今もそこにある。

幼い頃の週末は、家族みんなで山の家で過ごしていた。金曜の夜になると、飼っていた犬と一緒に車に乗り込み、山へ出発する。車で2.3時間。夜の高速を抜け、森を走り、夜中に山の家に着く。週末をのんびり山で過ごしたら、日曜の夜にまた森を走り、高速を抜け、家へ帰る。

父も母も、当時ふたりとも本当に激務で、平日はベビーシッターのお姉さんが私たち姉妹の面倒を見てくれていた。夜、ファストフードやデリバリーのピザさ食卓に並ぶこともしょっちゅうだった。平日はとことん仕事をして、週末は山へ行き家族の時間を過ごす。きっと両親なりのワークライフバランスの取り方だったんだろうなと思う。

私たち姉妹が大きくなるにつれ、家族みんなで山の家へ行く頻度は減っていった。娯楽もない、家族しかいない、そんな空間に閉塞感を抱いていた時期もあった。

でも20代後半から、突如「ああ山に行きたい」と思う瞬間が増えた。ようやく「何もない」贅沢さが分かる大人になったのかもしれないし、働きすぎてスローライフを欲するようになったのかもしれない。とはいえ今も、2日以上いると「退屈だな」と思うようになるのだけど。

そんな山での3日間の日記。


4月27日(土)

両親は昨日から山の家にいて、このGWを山で過ごすらしい。私は電車を乗り継ぎ、夕方に河口湖駅に到着。迎えに来てくれた両親の車に乗り、子どものときと同じように後部座席から窓の外をぼーっと眺め、山の家に到着。

山の家に来るのはいつぶりだっけ?と遡ったら、約2年ぶりだった。

散歩をして、母が揚げてくれたタラの芽の天ぷらを食べて、あっという間に外が真っ暗になる。することもないので本を読んだり日記を書いたりして、日付が変わる前に就寝。山の家にいると、どうしたって早寝早起きになる。


4月28日(日) 晴れ

目が覚めると7時。顔だけ洗って散歩へ行く。ここは別荘地なのだけど、GW前半だからだろうか、あまり人が来ていない様子。人の気配がない森の中をのんびり歩く。聞こえるのはウグイスがホーホケキョと鳴く声ばかり。いつもは大きなヘッドフォンをして過ごしているけど、ここでは必要ない。

好きな道
ヤマザクラ

家に戻ると、両親も起きて来ていた。コーヒーを淹れて、日記を書いて、また散歩をして、それでもまだ午前中。山にいると時間が本当にゆっくりと流れる。だから2日もいると「結構長くいたな」という気になるのかもしれない。

山の家は電波が悪い。でも少し歩いたところに電波が良い場所があるので、ネットが必要な作業をするときはそこへ行く。彼と電話で台湾旅行の作戦会議を立てる予定があったので、そこへパソコンを持って行った。ビデオ通話にして「山にいるよ」と背景を見せたり、鳥の鳴き声を聞いてもらったりする。彼は画面の向こうで、アイスコーヒーを淹れていた。先月京都へ行ったときは毎日ホットコーヒーを淹れてくれた。季節の変わり目だ。

ここが電波のいい場所
本を読んだりもする。

京都のnoteをようやく書き終えた。でもなんかしっくりこなくて、公開後も何度もリライトしている。恋人が出てくる日記は、書くのがむずかしい。30代になって、何でもかんでも書ける私ではなくなった。でも昔と変わらず、やっぱり忘れたくない瞬間は書き留めたいと思う。


4月29日(月) 曇り

朝7時に目が覚めて、また散歩。今日も時間がゆっくりと流れていく。昼過ぎに姉夫婦と姪っ子(生後6ヶ月)がやって来て、BBQをする。「山の家にこの子がいるなんて、不思議な感じだね」と姉が言う。山の家はついに3世代が過ごす場所になったのだなあ、と私もしみじみ。夕方、私だけ最寄駅まで送ってもらい、電車で東京へ帰った。


実は今回の山の家滞在は、リフレッシュ目的だけでなく「これからのことを考える」時間にしようとも思っていた。山にいる間、転職、独立、移住、色々な選択肢をぐるぐると考えていた。具体的な選択肢は出揃ってないけれど、考えた末にひとつだけ気付いたことがある。

それは、私はこの人生で何を成し遂げたいわけではなくて、新しいことを経験する過程の中で、私の心と身体は何を感じて、その経験を通して私はどう変化していくのかを記録していきたいということ。ただただ、そういうことにばかり興味がある。知らなかった感情、知らなかった考え、知らなかった五感の感覚を、書き留めたい。なるべく全部。そのためには、ここ数年私が逃げてきた「リスクをとって挑戦すること」に、ちゃんと向き合わないといけないのだろうな、と思う。一旦そこまでは山で考えた。

幸いまだ連休はたっぷりあるので、もう少し考えてみる。連休後半は逗子で過ごし、そのあとは台湾へ行く。私にとって飛行機の機内は、山の家と同じくらい考えごとが捗る場所なので、台湾から帰ってくる時にはきっと、思考の輪郭もはっきりしてくるはず。

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