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パンダの足あと~その1の2:Gちくミニツアー(@奈良・囲炉裏ハウスなら座/2011.11.19)

■のんびりこだまから、驚愕の京都駅

手術は成功し、術後経過も良好。
怖ろしい勢いで快復し、退院から2週間後には下北水中ライブのために1時間並べるほどにまでなっていた。
そんなこんなで、迎えた2011年11月19日。

朝9時ごろに東京駅を出るこだまに乗るために、5時より前に起きて支度をした。そんなに早くなくてもいいのに。案の定、かなり早く到着して、時間を持て余すし。ワクワクを隠せていない。
すでに奈良市内のことは調べていた。どこの店で何を食べようか、どこを観光しようか等。
“ぼっち”だからこそ出来ることもあるはずだ。

東京駅。ぷらっとこだまの特典である飲み物を引き換えて、定刻に乗車した。
私は非喫煙者だが、喫煙車。ぷらっとこだまの土日祝は、禁煙席が早々に売り切れる。幸い隣も禁煙席を取れなかった非喫煙者だったらしい。隣の女性が煙草を取り出すことはなかった。
こだまは小田原、新富士、静岡、掛川……とのんびり運行。
この日は曇天模様。途中どこかの駅では、雨粒が窓を叩いていた。
途中の豊橋から、青い軍団……中日ドラゴンズファンの一団が乗ってきた。行き先はおそらく福岡。この年の日本シリーズは中日VSソフトバンクで、この日は福岡での試合だった。名古屋で乗り換えたから、のぞみに乗り換えたのだろう。

三河安城、名古屋…とこだまは進み、12時半ごろに京都駅到着。
京都で降りるのは、中学の修学旅行以来だった。懐かしさは皆無だが。

ホームを降りると、すぐ横のホームにのぞみが停まっていた。私の乗ってきたこだまの、少し後に到着したらしい。
さて近鉄に乗り換えせねばと、ホームから改札階に降りた。

そこで私は立ちすくんだ。

京都駅は、厳戒態勢だった。
駅構内、警察官の数が尋常ではなく、空気もピンと張りつめている。
そこから改札方面を見やると、ひどい熱気を感じた。

「は……?」

中央口改札の向こう側には、人、人、人。
人の海が待ち構えていた。

他の出入り口を探そうと思うも、近鉄にはその中央改札口からが一番近かった。挙動不審になった私に、警察官が注目(気のせい)。見ると他の客も戸惑いながら、それでもその改札から足早に出て行く。
私も行くしかない。

他の客が出た改札から、私も後に続くようにして出た。
すると、道ができていた。
どうやらそれを通らないと、近鉄には行けない。奈良行きの急行の発車時刻まで、実はそんなに時間が無かった。ええいままよと、人垣の間を抜けることにした。

人垣は、皆一様にニコニコしていた。そして旗を振っている人もチラホラ。
日の丸。日の丸。日の丸。

何が起こっているのかサッパリわからなかったが、私は一気に駆け抜けた。
ただその人垣からは、「おまえじゃない」的な視線を浴びたような気もした。

近鉄の改札に入った。人垣は、近鉄のホーム内には及んでいなかった。
ただかなり賑やかになっていた。
「誰か有名人でも入洛しているんだろうか」と、さすがに私でもわかった。行き先までは被らないだろう……と思っていたが、なにやら黒っぽい一団が、近鉄の改札に入ってきた。
そしてその御姿を見つけ、この大騒ぎに納得した。
当時はまだ皇太子殿下……現在の天皇陛下だった。

初めて生で見たなーなどと思っていたら、近くにいた外国人観光客御一行からも「Japanese Prince!」とはしゃいだ声が上がっていた。
どうやら先ほど停まっていたのぞみで、入洛されたらしい。
そしてその後近鉄の改札から入ってきたということは……。

同じ特急だった。

もちろん同じ車輌ではなかった。
ただ私の席のあった車輌は、ガラガラだった。さらに他の車輌への移動はご遠慮くださいとか何とか、アナウンスがあった。
もしかしたら私の近鉄の切符を買うのが遅ければ、この時間のは取れなかったかもしれない。ただし真相は不明。

京都を13時ごろに出て、車中は特に問題もなく、13時半には近鉄奈良駅に到着した。
ところがここで足止めを喰らった。
電車から降りたものの、今度は改札階に上がらせてくれない。
駅員たちが、謝罪しながら私たち乗客の動きを阻止している。
そして改札階の方からは、大量の旗を振る音。
「ああ、御一行様が今、改札を通っているのね……」
これはもう仕方がない。

この時はブータン国王が来日されており、その公務のために皇太子御一行は奈良を訪れていたらしい。こんなことになるとは思ってもいなかった。

■It rains cats & dogs.

駅から出ると、奈良は雨だった。

16時の開場までは、まだ少し時間がある。
まずそばにあったバスの案内所に行って、一日フリー乗車券を購入した。その後市内循環バスに乗って、まずは北京終町(きたきょうばてちょう)へ。この日の会場の確認。

14時25分ごろ到着。
バス停のすぐ側に、この日の会場である「町屋ゲストハウスならまち」があった。
だがその時点で、雨足がとんでもないことになっていた。英語で言うところの、「It rains cats & dogs」。つまりはどしゃぶり。
会場を確認して、すぐにバス停へ戻った。この市内循環バス、10分おきに来るため非常に便利。とはいえ、どしゃぶりの中を屋根の無い場所で待つのは、厳しいものがあった。傘はあれど、靴はふつうのスニーカー。すぐにびしょ濡れになった。
季節は11月半ば。とはいえ、寒かったという記憶がないので、それは幸いだった。

まもなくバスは、JR奈良駅へ。今度は帰りのバス乗車場所の確認。
ここで家族へのお土産を買い、靴下を履き替え、大きな荷物をコインロッカーに入れた。

靴下を履き替えたって言っても、また濡れたスニーカーに足をつっこむわけで、結局同じコトであると気付いた時には、遅かったのだった。


(その1の3につづく)

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