手術部位感染

本日あったこと&考えたこと。

朝からDr.から電話が入ってきて、「手術用のセファゾリンが処方できない、どういうことや」と。今年から復帰した先生なので、事情は知らなかもしれないですが、昨年の供給不足から処方不可にしておりました。

そのトラブルで500㎎製剤から1g製剤に切り替えを行ったのですが説明すると、「1回1gやったら保険とおらんだろ」と激怒。

確かに、添付文書には特別理由のない限り1gを1日2回に分けて静脈注射or筋肉注射となっています。例外で重症例や効果不十分なら1日3~5gまでいけます。

そもそも、抗菌薬には手術部位感染予防の適応はありません。すなわち日本全国で手術に使用している抗菌薬は正確には適応外使用なわけです。エビデンスが構築されガイドラインが発出されて、それに準じて使用しているわけです。

また、日本化学療法学会/日本外科感染症学会が出した「術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン」によると皮膚常在菌の感染予防はセファゾリンは1回1g(80㎏以上は2g!)を手術中3-4時間おきに投与です。めちゃめちゃ添付文書との乖離があります。

ややこしいDr.なので言いませんしたが、100%保険が切られる確証はないですが、そもそも予防は保険適応外ですよ、と伝えたいです。

ガイドラインを100%鵜呑みにするのは危険ですが、切開部に十分な薬物が行き渡らず、術後髄膜炎や敗血症になるほうがよっぽど危険です。

それ以前に日本の抗菌薬の添付文書を実臨床レベルまで改定されたら良いなと思います。以前よりは改善したけどまだまだ投与量、投与間隔、適応が不十分です。

保険診療を逸脱すると日本の医療は成り立ちませんが、その縛りで生じうる患者への不利益はなるべく減ってほしいです。

以上です。

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