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デザイン顧問という事業を作って試行錯誤したこと

2021年9月にデザイン顧問を事業にすると決めて動き出しました

起きてスグ投稿したツイート。起きるの遅くない…?

これまで「事業を作る」ということにピンと来ていなかったのですが、ここから始めた顧問業は拙いながら価値を感じてくださるお客様も見えてきてちょっとずつブラッシュアップさせています。

本稿では、「デザイナーとして事業を作ることにピンときていなかった私のような人」たちの糧にしてもらい、主な施策や気付きを公開することで「事業に資するデザイン」というものがさらに増えていったらいいなと思い書くものです。

なぜ顧問をやろうとしたのか

Why : 一人で仕事する前提で、制作する以外の可能性が欲しかった

儲かりそうとかラクそうとかカッコ良いとかアホっぽいまとめ
後にめちゃくそ反省する

背景1 - 育児との両立のため稼動条件がより厳しくなった

  • 子どもが小さいので御迎えに支障ができそうな距離遠出ができない。

  • 17時には強制的に仕事が終了する

  • そもそも家から出たくない

会社に来てくれたり、長い時間働いてくれるデザイナーの方が良いのは当たり前です。どうやって生存するかなぁ。

背景2 - 稼動時間 = 収入 という式では収入が下がってしまう

  • 8時間、手を動かした方が収入が大きくなる

  • 5時間しか、手を動かせないと収入が減る

これも問題です。家族に向き合う時間と仕事時間が取り合いになってしまうと家族と仲良くしたいのに、収入のために仲が悪くなるというバグが生じます。

How - 制作しないで価値を提供することを探す

当時、N予備校にてグラフィックデザインコースのカリキュラムや教材の作成をしていた事がきっかけに「トレーニングをtoCではなくtoBで行うのは良いのではないか」という考えに至ります。

しかし、その時はまだ行動に移さず。どういう事をするのかイメージできず「自分にはまだ無理かな」と保留にしていました。

オファーをいただき顧問開始

あるとき嬉しいことに「デザイン顧問をお願いできないか」とオファーをいただき、自分なりに顧問業にチャレンジしてみます。

顧客組織内のデザインチームと定期的に対話機会を作りOJT用のトレーニングシナリオづくりやデザインレビュー、輪読会を行ったりしました。ここでチャレンジさせてもらった1年をもとに本格的に事業化を進めていきます。

1万円なら気軽に決済してくれるでしょ! 半年後にはプチプラ顧問の顧客がゼロに

当初は10万円で提供しようと考えていた顧問業ですが、ヒヨって1万円から初めることにします。

「実験だし、1万円、初月無料、カード決済ならニーズあるでしょ!」
「1万円だと…Slackで質問に答えるくらいならできるかな〜」

と自分が欲しいサービスとして概要を設定し、Twitterでこの実験的な施策にご興味ある方を募って事業体や個人含めて3件ほど運用させてもらいました。結果は半年くらいですべて解約という残念な結果。

原因1 - 何を質問していいか分からない

デザインに関する質問というのは、日々デザインに向き合っていると発生するものです。しかし、経営者は常にデザインを意識している訳ではありません。顧客から質問をいただくのを待つだけでは、質問は発生しなかったのです。

「Slackで質問に答えてもらえる」ことに価値を感じてもらうには、まず質問が発生する状況が頻繁に起きなければならず、ミキ社がその状況を作るためには顧客と定期的に対話するなど「デザインに触れる機会」を増やす必要がありました。しかし、1万円という価格設定だと、すぐに赤字になってしまうのです。

という訳で最初の半年くらいはこんな事例ばかりでした。

  • 何か聞いてくださいね〜 → 無風 → 解約

  • 何か聞いてくださいね〜 → 回答 → 価値を感じる → 聞きたいことがなくなったし忙しいから解約

  • 何か聞いてくださいね〜 → 回答 → ちょっと意味が分からなかった → 価値を感じられなかった → 解約

原因2 - デザインがリスクになる状況は見えづらい

「何を価値として感じて貰うか」の設計を「デザインに関する質問に答えてもらえる」だけとすると原因1のようにうまくいきません。ですのでさらに付加価値を見つける必要があります。

既存の顧問業はどのように普及したのでしょうか。わたしも活用している士業の顧問は「転ばぬ先の杖」として活用されています。知らないことがリスクや金銭、信用のペナルティに直結しやすいからでしょう。また自分で学ぶと大変ですので専門家に聞いて、必要であればスポットで手続を依頼できるのも価値です。

デザイン顧問の場合は金銭や信用ペナルティの損失を感じにくく、「何がリスクでデザインによってそれが回避できたのか。」という視点では回答が難しい事があります。転ばぬ先の杖としての価値を発揮するのであればもっとデザインを知らないことによる損失を認識、体験する必要があるのです。

いずれにせよ、デザインに関する価値や損失を知ってもらうためには積極的にコチラからアクションしていく必要があるように思えてきます。そこで、よりオフェンシブに立ち回ることで、「作用点をミキ社側で持ちたい」と価格を上げ提供サービスを増やすことにします。

価格を上げて、定期的な対話機会を作ることで継続率アップ

3万円,6万円,10万円の価格でそれぞれ展開を試みます。結果として3万円のプランは消えました。

わたしはおせっかいなので、困っている人を見かけるとついアレもコレもと手伝いたくなるのです。やっているうちに3,6万円の区別をつけづらくなってしまったので3万円プランをやめました。

将来的には値段による差を考えるのをやめたいのでどちらかの価格に寄せられたらなと頑張り中です。

価値創出1 - 顧問定例会によって組織内デザイナーさんに価値を感じてもらえた

定期的に話すことでデザイナーさんの悩みや新たな発見、有益な記事を共有する機会を創出することで価値を感じてもらえ半年以上の契約継続に繋りました。

価値創出2 - デザインプロジェクトの水先案内人として価値を感じてもらえた

デザインを依頼したいが、価値を的確に計れずミスマッチや配置ミスで困っているケースの調整。もしくは社内での方針が決まらず専門家に主導権を委ねたいケースなどでも価値を感じてもらえています。

「とりあえずイシジマさんに聞けばいい。」とChatGPTのように扱ってもらっています。実際に手を動かしたり、必要なパートナーさんの紹介もできるのでもう少し便利。

わたしもどうしたら高度デザイン人材になれるか知りたい

改善点1 - 初月無料はやめました

当初は初月無料にしたら「とりあえず契約してみて微妙だったら解約すればいいだろう」と契約してくれる顧客を想定していましたがここを目当てにしている方はゼロ(?)でした。

正確には無料期間終了時点で解約する方は今のところゼロでして、契約する時点で価値を十分に理解されているケースが多いのが現状です。

そして、ここも人情設計(私のお気持ちを優先した設計)なのですが初月こそ価値を感じてもらいたいので多少サービス外のことや少し過剰なサポートもしちゃうんですよね…。なので頑張った初月こそしっかり報酬貰いたいなと思い初月無料はナシになりました。

改善点2 - カード決済やめました

私は自動で支払いできるのがサイコーにラクで好きなのでカード決済大好きです。本事業もそのように設計したのですが、あんまり良くないかもという点がいくつかありました。

  1. 少額決済の場合は手数料が痛い

  2. すでにミキ社内に請求書発行フローは出来上がっているので、カード決済じゃなくてもイシジマ作業はゼロだった

  3. 対話機会があった方が顧客が契約してくれる率が高い

ミキ社の事業の中では1万円というのは、少額に類する金額です。その中からさらに手数料を引かれるのは魅力的ではありませんでした。また、毎月請求書を発行するのが面倒だったのもカード決済採用の理由でしたが、弊社がご依頼している秘書会社さんによって、請求書の発行や付帯業務は代行できているのでこれも不要だった。

改善点3 - 対話機会は増やしました

現在のミキ社はわたしのネームバリューによってお仕事をいただいている状況なので、対話機会なしにとりあえず決済するというケースは少なく、まずはイシジマと話して顧客の求めているものをどう価値として提供するかの期待値調整をするポイントは維持していた方が契約継続に繋りやすいという気付きもありました。

クロージングについて

顧問業の締結フローはこんな感じです。

Step1 紹介 →  Step2 面談 → Step3 契約

Step1の紹介では、過去に仕事したエンジニアさんがが転職して〜だったり、ネットでイシジマの記事を読んでくださってTwitterでDMいただいたりなどです。またYOUTURSTやOffersなどのスカウト、カジュアル面談で顧問業について触れたりなどがあります。

Notionポートフォリオを読んでくれたらだいたい契約できる

面談時点で上記のNotionのポートフォリオを読んでくださっている方は価値を感じてくださっているようでして、非常に契約締結までが早いです。このNotionが一番コンバージョン高いまである。

今後は自社のバリューを高めていくのが課題

現在、ミキ社へのリーチフローは下記のようになっています。

何かで知る → Twitter → Notionポートフォリオ

わたしが興味惹かれてフォローした方が、Notionを見て顧問相談いただけたケースも多々あるので、Twitter or Notionポートフォリオへの着陸数を増やすのが目標っぽいですね。

しかし、検索クエリでは到底見つかりませんので、そこの調整と認知を獲得するためのメディア活動を増やそうかな…。

契約形態などについて

最後に契約関連。けっこう苦手だし難しいと思っていたんですが、お世話になっている財務顧問の先生が読み合わせしてくれたり添削してくれたりするので少し分かるようになってきました。

まず顧問事業で大切なのがどのような契約を行うかです。

顧問契約? 業務委託契約?

契約書のドラフト出しをなるべくミキ社側で行うのが大切だなと。

顧問契約というとスゴそうなポジションなので敬遠されがちです。先方から頂く契約書は業務委託契約書が多くなります。提供内容で「アドバイザリー業務」などと記載あれば契約書としては問題ありません。しかしミキ社として、可能ならば「稼動時間や納品物を対象とした業務遂行」を担保するのではなく「専門的知識を有した人に相談をする」ことを担保したいというのがあります。価値が何であるかをミキ社はもちろん顧客にも感じていただきたいというお気持ち設計。「顧問契約として、デザインの専門家に相談すること」を契約書として双方が合意することでより顧問としてサポートする方にも力が入ります。

てかそもそも契約書にそういった明示はなかったりする

これがスゴい罠なのですが、業務委託契約書も顧問契約書も明確に分ける線などはないっぽいのです。さらに一括請負形式も準委任契約も契約書に「記載があればそう」なだけで、それらの条項とかに共通点とかない。ちゃんと読んでないと「あれ? 面談ではそんなニュアンスじゃなかったよね…?」という事もあり得るので確認大事。

「顧問契約いただけた〜!これで数年間は細くとも関係構築していけるゾ〜」とほくほく顔で先方から提案された契約書見てみたらプロジェクト期間3ヶ月の一括請負形式になってることもよくあります。

顧問とコンサルティングと制作の違いって?

これらの違いがよく分からず事業をしていながら迷ってしまったことが多々あるので自分なりに区別をつけようと思います。

  • 顧問 - アドバイスのみ。手は出さない

  • コンサルティング - アドバイス、企画。手を出す

  • 制作 - 手を出す

ざっくり分けるとこんな感じ。弊社では顧問を基軸として手を動かす必要があれば業務委託契約を結びそこで企画や制作を行うようにしています。

顧客の教育を考えるのなら制作と名乗らない戦略も必要と気付いた

駆け出しデザイナーの頃「デザインの教育が顧客に必要」と覚えてから顧客の見通しの甘い発注にアドバイスをしたりしていましたが、自分が気持ち良くなるだけで顧客に対してなんのメリットもなかったのだなと今になって反省します。

顧客への教育やデザインの価値証明をしたいなら「制作」という名称を変え、「顧客にデザインについて視野を広げるために契約してもらう」ことも考えなければなりません。制作業務のオマケとして教育がついていても「現場のこと分かりもせんで説教くさいなこの人」みたいになるのがオチです。

わたしだってドラッグストアでセキナオールを買う場合、セキを治したいのであってセキ予防のための準備をしたい訳ではありませんからね。風邪を引かない予防、健康増進をしたいのならドラッグストアで手にとるのはセキナオールではなく別の商品です。

どういう商品で「何を価値とするのか」によってパッケージを適切にする大切さをやっこさ覚えられました。

パートナー連携方法

契約書では必ず第三者委託において了承しておいてもらうようにしています。家族や自分が病気になったときに穴をあけないための工夫として私のようにぼっちで事業をしているものには必須でしょう。

わたしの場合、業務委託契約にて手を動かすことになったら絶対一人ではやらないようにしています。ツーマンセルで私とデザイナーさん2人で組み、設計について議論したり、体調不良で制作できない場合に変わってもらったりしています。

デザイナーを紹介する

最初は友人のデザイナーさんや信頼のおけるデザイナーさんを顧客に直接紹介していました。もし相性が良ければ正社員登用してもらえば双方ハッピーだし、私も嬉しい。

ただ指揮権が曖昧になるので、仕事を手放すためにやる施策と考えた方が良さそうです。

ミキ社の人として紹介する

外注パートナーそれぞれに契約書と請求手続を貰うのは地味に面倒なので、ミキ社で包括的に管理してもらいたいというニーズもあります。

昨今はミキ社として提供できる価値はわたしが実施するデザイン以外にもあると気付けたので、パートナーさんにミキ社の人として動いてもらう事が増えました。

さいごに:ミキ社でデザイナーとして、デザイン専門家として一緒に働いてくれる人を募集しています

ミキ社はぼっちでやっているので大きい会社ではありません。ありがたい事に事業はこのように洗練されていき安定してきたので、一人ではできない事を目指してみようと考えています。

制作に関わる領域を任せられる方にお渡しして、顧問業を洗練させることに集中したくなりました。

衣食住のために働くフェーズが終わってくると社会実装へ興味がうつっていきます。私は自分が新しい働き方をすることで社会に選択肢を増やしたいと考えています。もし、同じように考えている人がいたら一緒にやってみませんか? 社員でもいいし会社同士なら一般社団法人を作るのもの良いです。

興味があればお気軽にカジュアル面談してみましょう〜。

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