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ラグビー 独立系レフリーのお仕事

8/30(金)、高田馬場の「No Side Club」で開催された「ノーサイドライブvol.68」。ゲストは、今回のワールドカップのアシスタントレフリーに選出された久保修平さんです。

日本で唯一の独立系プロレフリー

日本では、トップリーグチームに所属する社会人レフリーはいますが、フルタイムでチームから独立したプロレフリーをしているのは久保さん一人です。
もともと選手だった久保さんがレフリーの道に進むきっかけは大学生時代。所属するラグビー部のレフリー役を任されたときに、「自分でもよくルールがわかっていなかったことに気が付いた」ことがレフリーに興味を持ったきっかけ。大学卒業後は教育施設への勤務や教員を経て、2014年にプロレフリーに転向されました。日本で初の特定のチームに所属しない独立したレフリーとしてキャリアパスのない道を進むのは、きっとご苦労も多かったはず。ですが、それを乗り越え2016年からは世界最高峰・最大のラグビーのリーグ戦であるスーパーラグビーでレフリーを務めています。

プロレフリーの生活

国内大会やスーパーラグビーなど、ラグビーワールドカップでもなければ、基本的には試合が休日なので、平日は休み。
平日は家族で過ごす時間であるとともに、準備をする時間。自分が直前に笛を吹いた試合を見直すのはもちろん、トップリーグ開催期間であれば、トップリーグの全試合をチェック。また、トレーニングを欠かしません。プロレフリーとしてトレーニングコーチをつけてしっかりトレーニング。試合中は1試合で7-8kmは走る、かつ足の速いトライゲッターよりも先回りをしてゴールラインにつくことを求められるため、走力・持久力はほぼ選手並み。
次の試合が決まると両チームの練習に行き、どういう戦術でプレーがしたいのか、レフリーに求めることをヒアリング。両チームがベストなプレーができるように試合での立ち位置などを調整します。「両チームの良さを引き出す」というラグビーのレフリーの役割が果たされています。
また、8月末は日本代表の網走合宿に参加し、直前にルール改定があったスクラム練習の中心に審判役を担当。日本代表のレベルアップにも貢献しています。

RWCアシスタントレフリー選出の経緯

世界トップレベルのRWCレフリー団(Team21)はレフリー(主審)12人、アシスタントレフリー(副審)7人が選出されています。
世界中のレフリーの中から選ばれていくのですが、それは「選出」というよりも「ふるいにかける」進め方です。年に2回世界中のトップレベルのレフリーが集まる合宿が行われますが、選出外となったレフリーがどんどん減っていく。久保さんは最終的にはアシスタントレフリーに選出されましたが、レフリーになれなかったのは、スーパーラグビーでのたった1回の判断の違いだとフィードバックを受けたそうです。危険なプレーとしてレッドカードを出すところで、悩んでイエローカードを出した。久保さん自身も「レッドを出さないといけなかったと思います」と振り返っていました。たった1回かもしれませんが、その判断、迷いまでもワールドカップという大舞台で選手が活躍するための大切な1回。選手の選出並みの厳しさです。

お話を聞いて

普段話を聞くような機会がないレフリー、しかも日本で唯一の独立系プロレフリーの話は、関心と感心の連続でした。
「ラグビーのレフリーは審判ではなくファシリテータである」という話を聞いたことがあります。起きたことを適切に瞬時に判断することはもちろんなのですが、両チームの良さを引き出し、試合を円滑に進めるために、前もって準備し工夫することが印象的でした。ラグビーワールドカップではレフリーにも注目してみようと思いました。

久保さん、ありがとうございました。

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