保育士一斉退所が頻発している原因について考えてみた
この記事を書いているのは2024年4月ですが、直前に大阪府堺市の認定こども園で園長のパワハラに耐えかねて保育士が一斉退職したというニュースが話題になっていました。その後も全国各地で同じような事象が起こっていると、NHKでも報道されていました。
この問題の背景にあるのは、昔から存在する社会福祉法人のトップが何十年も不勉強な状態で保育施設の運営を続けることができていることにあるのではないかと見ています。さらにその原因を考えると、現在保育施設を運営している社会福祉法人のトップの人たちの多くは創設者ではなく、創設者の子にあたる世代の人が多いということもあるのではないかと見ています。
今週(4月15日~19日)、そのとある法人のトップと応諾義務をめぐってバトルになり、応諾義務についてお話をさせていただきました。立場上あまり詳細に書くことは控えますが、実際に体験したことを通じて、保育所で頻発している一斉退所の真の原因は、創設者が表舞台を去ったことにあるのではないかと気づきました。
「応諾義務」とは
応諾義務とは、保育施設等の利用の申込みがあったときは「正当な理由」がある場合を除き拒んではならないとしているもので、認可保育所や認定こども園に適用されます。
この「正当な理由」が問題になるのですが、国等が示している基準としては次のとおりです。
定員に空きがない場合
定員を上回る利用の申し込みがあった場合
その他特別な事情がある場合
1も2も同じようなことを言っており、「空きがなかったら仕方ないよね」ということで御理解はいただけると思いますが、問題は3の「特別な事情」です。これについては例えば受け入れに当たっては医療行為が必要で、看護師を確保しないといけないが看護師がいない場合なんかは事情ありとして認められるでしょうが、現場で抱えている課題はいわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる児童の受入れについてです。
いわゆるグレーゾーンの問題
「グレーゾーン」のここでの定義としては、発達に何らかの配慮が必要なのは明らかだが、加配が必要と判断する根拠がない児童のこと。こういった児童の受入れについて、発達を支援する意味でも保育施設での受入れが必要だが、保育所からすると人手がかかるものの補助金が上乗せされないという問題がつきまといます。
このたび私がバトルになったのはまさにこういったケースです。保育所も人手不足で大変なのは分かります。が、それなら最初に見学に来られた時に正直に話せばいいと思います。「仮に空きがあったとしても人員上の配慮をするだけの余裕がないので受入れはできない」と言えばいいのではないでしょうか。
それなのにそういったことを言わず通り一遍の説明だけして帰ってもらい、後日希望施設として挙がってきたときには受入れを拒否する。これはあまりに不誠実なのではないかと思ったので、ズバリ言わせてもらいました。保護者の前ではいい顔をしておきながら、いざ受入れをするかどうかという判断においては受入れを拒否するというのが許せず、応諾義務についてお伝えをさせていただきました。
こういった人手のかかる児童について、「なんとかうちで受け入れよう」という福祉の心を持った施設もあれば、「何とか断ろう」という施設もあり、ここの違いはトップの姿勢がよく表れていると感じます。
創設者は志が高かったのに、、、
地域で長く社会福祉法人を運営している団体の場合、現在は創設者の子が後を継いで運営しているケースが多くなってきています。創設者は高い志をもって社会福祉法人を運営し、地域からの信頼を得てきたところも多いように思われますが、その下の世代にそういった理念が引き継がれていないときに問題が起こりやすいように感じています。
特定の団体を攻撃するようなことはしたくありませんが、創設者は人格者で本当に思いやりあふれる方であっても、その下の世代がそういった思いを引き継いでいるという保証はありません。そういった思いを引き継いでいる方にも実際にお会いしてきましたが、そうでない場合はなかなか酷い事態になります。
経済と道徳の両立は難しい
かつて二宮尊徳が言ったとされる言葉で有名な言葉があります。
「経済なき道徳は戯言であり、道徳なき経済は犯罪である」
経済を道徳を両立させることは本当に難しいことなのだと思います。創設者のように特段の思いもなく、漫然と社会福祉法人を受け継ぎ、児童の発達等について不勉強なままの経営が長年続けられると、「道徳なき経済」が進められてしまい、冒頭のような事態に発展してしまうのかもしれません。
保育士が足りないという話をよく聞きます。そうであれば保育士の方も自身が働いている保育施設のトップがどんな人物であるかを見極め、問題があればさっさと転職したほうがいいと思います。次の職場はすぐに見つけられるので。
「問題のある組織からはさっさと離れる」
ジブン株式会社の信頼に傷をつけないためにも、これからの時代は上記のような行動が求められるのかもしれません。
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