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「認知科学」、マジカルナンバーの話と諸効果 (6)

6 マジックナンバー「3」の話
 
 「3」はマジックナンバーと呼ばれます。「三種の神器」「朝起きは三文の徳」「三人寄れば文殊の知恵」など、「3」という数字を使った言葉は山ほどあります。「上中下」「松竹梅」「金銀銅」など、ランク付けも3つに分けるものが多いですね。
 色の三原色:赤、青、黄、物質の三態:固体、液体、気体、三次元:たて、よこ、高さ、地球は太陽系第3惑星、3種の神器、三法分立、行政、世界三大テノール、3匹の子豚、三途の川、石の上にも三年、三国志、カップラーメンは3分、ウルトラマンも3分、サッカーのハットトリック、三味線、徳川御三家:尾張、水戸、紀州、など数多くあります。
 企業名にも「3」は多く見られます。「NEC」「ANA」「IBM」などアルファベット3文字の企業名も多いですし、「トヨタ」「ホンダ」「ドコモ」など3文字の企業名もたくさんあります。
 三語のメッセージには、人々に強く訴えるものがあります。オバマ大統領の“Yes, we can.”というキャッチコピーや、ビートルズの“Letit be”など枚挙に暇がありません。覚えやすいですし、語感がいいから多くの人が口にしたくなるために、言葉が伝播(でんぱ)しやすいのでしょう。このように、古今東西を問わず、「3」という数字には、人間に訴えかける不思議な力があります。
 自社商品の特徴を列記するスライドですが、5つ列記したスライドと、3つ列挙したスライドのどちらのほうが、頭にスッと入ってくるでしょうか? 明らかに、3つのほうだと思います。さらに、5つを列記したスライドのあと、5つのテーマについてそれぞれ説明がされるはずですが、それを想像しただけでも、ちょっと面倒臭く感じないでしょうか? その内容を覚えるのも手間に感じるはずです。
 この「マジックナンバー3」は、プレゼンでも有効です。なぜなら、伝える内容を3つにしたほうが、わかりやすいし、記憶にも残りやすいからです。人間は、与えられたテーマが3つを超えると、とたんに理解のスピードと正確性が落ちることが科学的にも実証されているのです。実際、私がこれまで見てきた優れたプレゼンのほぼすべてが「マジックナンバー3」を意識したものになっていました。プレゼンではついつい「少しでも多くの情報を伝えたい」と思ってしまいがちですが、その結果、内容が記憶に残らないのでは意味がありません。逆に、「1つ」か「2つ」だとシンプルではありますが、今度は物足りなく感じられてしまいます。だから、伝えるべき内容はできるだけ「3つ」にするようにしてください(もちろん、無理をする必要はありません。伝えるべき内容が2つしかないときに、もうひとつを捏造するのは、もちろんNGです)。...
 ティーブ・ジョブズ氏がプレゼンテーションを行うときは、必ず3つの要点でまとめていたらしい。iPad発表のとき、iPhone発表のとき、常に3つの何かをテーマにしていました。
それは「Rule of three」という、3の法則に従っていたとのこと。
 さらにあの有名なスタンフォード大学でのスピーチ、冒頭のセリフがこちら。
   Today I want to tell you three stories from my life. That’s it. No big deal. Just three stories.(本日は自分の人生から、3つの話をさせてください。たいしたことではない。たった3つです。)と述べた上で「点と点をつなげる」「愛と敗北」「死について」を語りました。 3つという構成の良さ、彼はそれを徹底していました。説得力が凄まじいですね。
 3つで物事をまとめる。上手なプレゼン、上手な話者はこのスキルを使いこなしています。「ポイントは3つに絞る」事で、相手にも伝わりやすくなり、記憶にも残りやすくなるんです。       (つづく)

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