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大人の英語学習法 9

9  外向き志向で留学に挑戦を!

 政府は日本の大学等に外国人留学生を受入れる「留学生三十万人計画」を二〇〇八年に発表しました。二〇一三年五月一日現在、日本で学ぶ外国人留学生は計画の半分弱の十三万五五一九人です。山形県内の大学や高等専門学校などで学ぶ留学生は十四年十月一日現在で二百三十七人(内女子一一八人)です。出身国別では中国、マレーシア、インドネシア、韓国などアジア各国からが多く、大学別では山形大学が約八十五%を占めています。
 現在同大農学部で「日本語補講講座」の非常勤講師を務め、留学生が英語を公用語とする国(ガイアナ、ウガンダ、ルワンダなど)やインドネシア、ドイツなどから来ていることから、英語による翻訳法で日本語(日常会話表現)を教えています。日本の文化的知識も注入し、山形の特産物や日本文化の発信と異文化交流を楽しんでいます。
 留学生は日本文化に興味を持ち、日本語学習に熱心です。言語は文化の中から生まれたもので、生きた言語学習ではその背景になっている文化を知る必要があります。学習言語を話す人や文化に興味を持つ学習者は上達が早いです。
 海外から優秀な人材を受入れるだけでなく、国際社会で活躍できる優秀な日本人を育成する観点から、日本人の海外留学促進や大学等間交流の活性化も重要です。数度の海外語学研修経験から、海外留学の意義や利点を考えると、日本の若者に「外向き志向」で世界に目を向け、海外に挑戦して欲しいと思います。
 政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される二〇二〇年までに日本から海外の高等教育機関への留学生を現行の二倍の十二万人に増やす方針を掲げました。しかし、外国人留学生の受け入れ数より、日本人留学生の数が少ないことが問題です。経済協力開発機構(OECD)などの統計資料をもとにした文部科学省のまとめによると、11年における日本からの海外留学者数は、こちらも計画の約半分の五万七五〇一人です。海外留学者は二〇〇四年の八万二九四五人をピークに、七年連続で減少していることも問題です。マスコミでは日本の若者がリスクをさけ、海外に挑戦する意欲や度胸がなく「内向き」であることを指摘しています。
 海外への留学者減の原因は、高騰する学費など経済的問題や少子化もありますが、いくつかの留学情報提供機関の調査結果によると、家庭の経済状況、外国語能力、帰国後の就職問題もありました。企業もこれまで留学経験者を必ずしも優遇してきませんでした。
 最近、企業も海外留学経験者を積極的に採用しつつあり、二〇一六年四月入社の大学生から就職活動開始時期が三年生の三月(これまでは三年生の一二月)に繰下げられます。また、文部科学省は新興国への留学、ボランティア活動などを含めた留学も奨学金の対象としました。国際社会を生きる日本の若者を「内向き」と批判するだけでなく、海外留学を促進するため、国、地方自治体、実業界、教育界が一丸となり、長期・短期海外留学の多様なニーズに対応した奨学金等の経済支援、留学しやすい環境整備や就職支援といった「外向き」の施策を期待します。そして、語学力があり「外向き志向」の若者を育成したいと思います。(「外向き志向で挑戦を」(『山形新聞』提言記事掲載、二0一五年(平成二七)一月三十日)  

コロナ禍でここ数年留学や海外との交流がままならない状況があります。パンデミックが収束し、世界が狭くなっている中、語学力を高めるためにも外国留学と外国との文化交流が促進されることを願うばかりです。
                             
(つづく)

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