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蒼色の月 #70 「弁護士へ①」

美加の名字がわかったものの、その先一人でどうしていいのかわからなかった。誰かの知恵が欲しい。法的知識が欲しい。
私は、弁護士に相談することに決めた。
今までそうしなかったのは、それをすると一気に夫と私の離婚が現実化し加速が付きそうで怖かったからだ。

ここまでされて、夫を許すのかと言われれば到底そうとは言えないが、かといって具体的に離婚にすすむこともまた怖く、腰がひけ弁護士への相談は一日延ばしにしていた。
どうしようもなくヘタレな私だ。

しかしもう、そんなとこは言っていられない。

もちろん今までの人生で、弁護士の力を借りたことは一度もない。
先日の市の無料相談以外では、弁護士に会ったことすらない。

弁護士ってどうやって探すんだろう。
まずはそこからだ。
地元の電話帳を見る。
弁護士の欄には、たくさんの弁護士事務所の名前が並ぶ。
なんの情報も持たない私には、その中から一つを選び出すことはできない。
ネットで調べてみると、どの弁護士事務所でも一時間いくらという単発の相談にのってくれるということを知った。

まずはそれに行ってみよう。

私は当てずっぽうで、市内の一軒の弁護士事務所を選んだ。
電話をしてみると、簡単な受付だけで日時を指定され、何も持たずに当日事務所に来てもらえばいいからと言われた。
料金は一時間5千円。
翌日の予約だった。
夫の不倫がわかって以来、不倫のことは義父母と女のことを調べてくれた佐伯先輩に相談しただけだ。

今度の弁護士はどんな弁護士だろう。
うまく話せるだろうか。
うまく言いたいことが伝わればいいんだけど。
怖い先生だったらどうしよう。

翌日予約時間のちょっと前、私はその弁護士事務所の前にいた。
その弁護士事務所は、自宅兼法律事務所になっていて普通の一軒家だった。

「ここか」

一人看板を見上げた私は緊張した。
大きく一つ息をつくと、私はその事務所へと重い一歩を踏み入れた。
この一歩が私の戦いへの一歩となったのだ。

mikotoです。つたない記事を読んでいただきありがとうございます。これからも一生懸命書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!