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蒼色の月 #79 「弁護士探し②」

平日の夜、私は長男の高校のサッカー部の保護者会に来ていた。
会が終わり、学校の駐車場に向かって一人歩いていると、後ろから声をかけられた。市議会議員の事務所で会ったママ友だった。

「ねえ、大丈夫?大変だったね!あれから事情は議員から聞いたよ」

「そう…ひどいもんでしょ」

「うん。ひどすぎる。あの大人しそうで真面目そうだった旦那さんが、なんか別人の話みたいだね。正直私も驚いた。私にできることがあればなんだけど」

「一つ聞いていい?いい弁護士ってどうやって探すのかな。私、早急に見つけないといけないんだ」

彼女はしばらく考え込んでいた。

「私もよくわかんないけど、うちでお願いしてる司法書士さんに内緒で聞いてみようか?私結構仲良しなんだ。もちろん浅見さんの名前は出さないから安心して」

「ほんとに?ありがとう。助かる。法律家とか、私そういう知り合い誰もいないもんだから」

「わかった!まかせといて」

孤独な私には、どんな助けも有り難い。

そして、そのママ友から電話が来たのはそれから2日後のことだった。

「浅見さん、勝手に悪かったんだけどうちの議員に話してみたの。麗子さんに弁護士の探し方聞かれたって。そしたら麗子さんの役に立つならって議員が司法書士に話通してくれて」

有難い。

「麗子さん、私、司法書士に聞いたこと言うからね。いい?まずは司法書士会の会長さんにアポを取って会いに行って。弁護士会だといろんな利害関係があって、純粋にいい弁護士を紹介してもらえない可能性があるから。弁護士会と司法書士会は、繋がりがあるから司法書士会の会長さんならたいていの弁護士のことをよく知ってるって。そして事情を説明して、この案件を得意とする弁護士を推薦してもらうのよ。それが一番確実な方法だって。司法書士会の会長さんはいい人だから、きっと力になってくれるって。
だけど、一つお願いなんだけど、この方法うちの司法書士から聞いたって言わないでって。こういう業界事情は、話しちゃいけないことになってるからってうちの司法書士が言ってた」

「わかった。ありがとう。やってみる。本当にありがとう。それから、このことはもちろん誰にも言わないから。先生にも司法書士さんにも、私がお礼を言っていたって伝えてね。それから、私がこんな相談したって事・・・」

私が言いかけると。

「わかってる!悠真君達の耳に入ったりしたら大変だもんね。私誰にも言わないから、息子にももちろんね。そんなこと心配しないで!」

もし、義父が話合いの場をあの議員事務所にしていなければ。
もし、このママ友とあの事務所でばったり会っていなければ。

これからの結果は生れない。

この司法書士の助言が、後の私の人生を大きく変えることになるとは、私はこのときはまだ知らない。

私は人によって傷つけられ。
人によって救われる。




mikotoです。つたない記事を読んでいただきありがとうございます。これからも一生懸命書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします!