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【詩】揺れ、(る)

あなたの迷彩色のジーンズに
  指が触れ わたしの
    つい この間切ったショートヘアをぐしゃぐしゃに 
      愛おしく掻き上げる手が
    わたしの小枝柄のワンピースの 裾を
  たぐりあげる 仕草に
    もれる あえぐような吐息が もれてもれていき
      二人してソファに 倒れて
        真っ白いフェイクレザーの上に
          肢のゆびがふたつ 絡まってゆき
            けいれんする 震えて
 
居酒屋の旨だれのついたキャベツをマヨネーズをたっぷりつけて半分こして二人で勉強中の本を開きながら発達障害の特性についてああでもないこうでもないと議論して一人分の煙草の灰が銀色の皿にどんどん溜まって行ってファジーネーブルと紅茶のサワーが喉をうるおしてビールを飲み過ぎないように注意していた男が夜半をふらつきながら歩く女を送り届け部屋のドアが閉まった途端に視線がきらりと牙をむき
 
プールの底にしゅわしゅわ泡ぐ炭酸の匂いを
   ふと懐かしく思い出しながら
      ふたりはベッドの底に潜水してゆく
         およぐおよぐおよぐ
            やさしい胸ははだけられて
               あられもなくはずかしいように
平泳ぐ
 
 スイートオレンジの香りがいんらんに空気清浄機から発光
する する するる
 
      あたたかく
          まどろ、む始発で帰ろうとするあなたを
             引き、とめる
         わたしのじゅっ、と跳ねるベーコン





                詩集「スパイラル」
                 モノクローム・プロジェクト刊
                    2017/4/10 初出 
                    2024/04/13 改稿

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