書いてみたい

 いつからか、小説や詩、脚本、そういうものを書くのは、書けるのは、書いてもいいのは、一部の人だけなのだと思うようになった。知識がある人、人の心を動かす才能がある人、おもしろいことを言える人、美的センスのある人、大人、人とは違う感性をもってる人、影響力のある人、「私にはないものを持ってる人達」…そんな人達だけのもの、そう思うようになっていた。 

 子供の頃は自由だった。好きに文章を書いた。しっちゃかめっちゃかな小説をかいた。全部途中までしかかけなくて、未完成の小説がノートにどんどん増えていった。それでも私は「大きくなったら小説家になる」なんていって祖母に原稿用紙やボールペンを買ってもらったりした。結局それらは夏休みの宿題で使ってしまったのだけれど。

  大人になるとどんどん自分に自信がなくなる。好きなものを好きなようにできなくなる。それはしょうがない事で、自分の「好き」は忘れなければと思った。隠さなければと思った。

 そんな時、ある脚本家に出会いました。

彼は自分の作品のことを「好きだ」と言っていました。子供のように大切にしていました。こんな思いで書いたのだと楽しそうに話していました。 辛そうに話すこともありました。それでもやっぱり幸せそうでした。  とてもかっこよかった。自信満々ではないけれど自信を持っていました。好きなことを胸をはってやっていました。そしてその作品も素敵でした。本当に素敵でした。

わたしも彼のようになりたい。

彼のように好きなものを大事にしたい。

彼のようにこの感情を言葉にしたい。

そう思いました。

わたしもまた書いてみようと思いました。

好きなように、好きなことを、自由に。

書いてみたら何か変わるかもしれない。変わらないかもしれない。書けないかもしれない。それでも もう「好き」を隠したくないから。



 

 

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