こぼれるよ日々(1)

今月ささやかにメンバーシップ日記をはじめたのですが、そこで取り上げなかった日々の断片を「なぞる」で公開しちゃおうのコーナーです。よかったらメンバーシップへの登録もご検討くださるとうれしいです。


2024年1月2日 存在しない料理をあずかる

 連れあいの実家とわたしの都内に住む親戚宅へ、新年の挨拶にでかけた。

 人に会う用にひかえめにお化粧をほどこしたわたしの顔をみて、連れあいはにこにこしながら「よしよし」と言った。彼はたいていのことを言葉にはしないがほめているのがわかってうれしく、こういう瞬間をぜったいに記憶はこぼしてしまうから、わたしが代わりにメモる。

 夜、料理上手のおばが作った中華料理がめちゃめちゃおいしい。餅米を鶏肉に巻いて揚げたもので、玄米鶏(ゲンマイキー)という名がついているらしい。感動のあまり作りかたを訊ねるとレシピが紙で取り出され、プリンターで複製してくれた。その紙には「1965.5.22」と書いてあった。このうますぎる料理がもう60年前には世にあり、しかもこれはおば本人の書いたものではなく誰かから引き継いだものだという。人から人へものごとが伝導されゆくいきさつ、突然にそこに加わることとなった。

 あとから「ゲンマイキー」で検索したところ、なんと一件もヒットしない! 無限より広いインターネット世界に存在しない料理をあずかってしまった。いまやインターネットにないのは現実にないことと変わらない。これはたいへんなことになったぞ……。

2024年1月3日 生きることは命に悪い

 去年の12月初旬のわたしは「新年からちゃきちゃき動こう」と決意していたらしく、新年初の開店時間ぴったりに近所のヘッドスパを予約してあった。ヘッドスパをしてくださる方の、きもち新たな初仕事をいただいてしまう無料のぜいたくである。

 今日は張ってるこってるとかじゃなく、たぶんお酒か寝不足で浮腫んでたみたいですね、とズバリ言われた。そうです! 仕事をすればガチガチになり、息抜きで飲酒すればぱんぱんに浮腫むのだから生きることは命に悪い。

2024年1月4日 与えにたいする思いが弱く

 乳がん検診、一緒に受ける? と義母から連絡が来た。やさしい人だ。連絡のついでに、おととい旅行土産でもらったので「クーベルおいしかったです」と伝えると、クーベルってなに? と返ってきて笑う。おとといのことなのに、あげた側がすっかり忘れてしまうこともあるものだ。誰かに与えることにたいする思いが弱くておどろく。それが与え慣れていることの左証におもわれ、そっと尊んだ。

 スマホのカバーを変えて手元の視界が新鮮になった。1,500円くらいの買い物でこんなにも気分が変わるのはかなりお得と言わざるをえない。たまにおなじ理由でくつしたをじぶんに買い与えることがあるけれども、スマホカバーはもっと毎日見るからいいよな。いまさらiPhone12 miniのケースを新調させてくれるのだから、Amazonには感謝をしなくてはならない。




文章を毎月0のつく日(10日、20日、30日)とその他の思い立った日に更新しています。よかったらお読みください!

はじめて自作の日記本『不在日記』を発売しました! ありがたいことに思ったより売れています! 詳細は以下にてご確認ください。

ご加入いただくと日記を全文読める&日記を送っていただいたら感想をお返しするメンバーシップをはじめてみました!

▼写真家の服部健太郎さんとやっている聞き書きプロジェクト

▼友人ふたりと読んだ本について書いている共同マガジン

ご無理はなさらず、しかしご支援はたいへん助かります!